肺梗塞は肺炎と誤診しやすい

呼吸器

ポイント

  • 肺梗塞は急性肺血栓塞栓症の約10~15%に合併します。
  • 組織壊死を反映して胸膜性胸痛,血痰、発熱などの症状を呈します。
  • 肺梗塞の陰影を肺炎と捉えてしまいがちです。特に高齢者の場合、誤嚥性肺炎と誤診されることがあるため、胸部CTでの評価が重要です。
  • 治療は、肺塞栓そのものに対する抗凝固療法や血栓溶解療法が基本となり、梗塞が認められる場合には合併症管理(例えば出血管理や二次感染の予防)も重要となります。

肺梗塞はなぜ生じるか

  • 肺動脈の閉塞があっても気管支動脈からの灌流により組織壊死は免れます。
  • しかし気管支動脈レベル以下での肺動脈の閉塞は肺梗塞に至るとされています。

症状

  • 組織壊死を反映して胸膜性胸痛,血痰、発熱などの症状を呈します。
  • 塞栓が胸膜神経を刺激するので激しい疼痛を伴います。
  • 肺梗塞(肺塞栓)の呼吸困難の発症様式は秒~分単位の超急性なものもありますが、時間~日単位のそうでないものも約3割に認めます。診断は造影CTや肺血流シンチグラフィで行います。

画像所見

  • 浸潤影
    • 胸部単純X線写真上は境界不鮮明な浸潤影として認識されることが多く、肺炎と誤診される原因となります。
    • Airbronchogram は認めにくいと言われています。
  • Hampton’s hump
    • 肋骨横隔膜角に生じる肺門を凸とした楔型陰影です。
    • 肺梗塞は末梢になると気管支動脈からの血液供給が微々たるものになるため、末梢を底辺とした楔状浸潤影(Hampton’s hump)がみられます。
  • Feeding vessel sign
    • くさび形の陰影の頂点部に拡張した血管を呈する像です。
  • Central lucencies
    • 陰影の中に丸い低吸収域のことで、肺梗塞の可能性を上げる所見とされています。
    • Central lucenciesは縦隔条件にするとみやすくなります。

まとめ

  • 発熱や胸痛など、肺炎でも生じうる症状を呈します。
  • 画像所見も肺炎像と似て、浸潤影を呈することがあります。
  • 肺梗塞を疑うポイントは深部静脈血栓症(DVT)を疑う患者背景や身体所見です。肺梗塞の塞栓の原因としてDVTが多いため、その原因となるような悪性腫瘍や長時間の安静がないかを問診します。
  • また片側性の下腿浮腫などの身体所見も重要です。

参考文献

以下の文献を参考にさせていただき、まとめました。

  • Is It Possible to Recognize Pulmonary Infarction on Multisection CT Images? Marie-Pierre Revel, Rached Triki, Gilles Chatellier, Sophie Couchon, Nathalie Haddad, Anne Hernigou, Claire Danel, and Guy FrijaRadiology 2007 244:3, 875-882
  • 臨床推論の落とし穴 ミミッカーを探せ! 長野広之 著 / 志水太郎 監修
  • Harrison’s Principles of Internal Medicine, 19th Edition 福井 次矢 黒川 清 (日本語版監修)
  • カラー図解 人体の正常構造と機能 坂井 建雄 (編集), 河原 克雅 (編集)
  • https://radiopaedia.org/articles/pulmonary-infarction-1?lang=us

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