胃食道逆流症(GERD)

内科

GERDの分類

GERDは、食道粘膜傷害(びらん・潰瘍)の有無によって大きく2つに分類されます。

分類にはロサンゼルス分類が用いられます

https://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-kameda-190621.pdf より引用

逆流性食道炎(びらん性GERD)

内視鏡的に食道粘膜傷害(びらん)を認めるもの。

    ◦ 軽症: Grade A, B

    ◦ 重症: Grade C, D

    ◦ Grade N, M: 正常(N)または色調変化のみ(M: Minimal change)。日本ではGrade Mを認める「改訂LA分類」が広く使われていますが、臨床的にはNERDとして扱われることが多いです。

非びらん性胃食道逆流症(NERD)

逆流症状(胸やけ等)はあるが、内視鏡で明らかな粘膜傷害を認めないもの。

GERD患者の約50〜70%を占めます

病態: 酸の逆流が原因の「狭義のNERD」、酸への知覚過敏がある「逆流過敏性食道」、逆流とは無関係な「機能性胸やけ」などが含まれます。

症状

症状は「定型的症状(食道に関係する症状)」と「非定型的症状(食道外症状)」に分けられます。

定型的症状: 胸やけ(胸骨後部の焼けるような感覚)、呑酸。

非定型的症状・食道外症状:

    ◦ 非心臓性胸痛(狭心症に似た胸痛)

    ◦ 慢性咳嗽、気管支喘息

    ◦ 咽喉頭症状(喉の違和感、声枯れ、咽喉頭炎)

    ◦ 睡眠障害

    ◦ 歯の酸蝕症

GERDとの鑑別疾患

胸やけや呑酸などの症状がある場合、以下の疾患との鑑別が必要です。

逆流性食道炎との鑑別:

    ◦ 感染性食道炎(カンジダ、サイトメガロウイルス等)、薬剤性食道炎、放射線食道炎、食道癌、皮膚疾患(天疱瘡など)に伴う食道病変、クローン病など

NERDとの鑑別:

    ◦ 好酸球性食道炎: アレルギー素因を持つ若年男性に多い。

    ◦ 食道運動異常症: アカラシアなど。

    ◦ 機能性胸やけ: 酸逆流や食道運動異常と関連のない胸やけ症状。

    ◦ 狭心症: 非心臓性胸痛との鑑別が重要です。

治療法

治療の目的は、症状の消失、食道粘膜の治癒、合併症の予防です。

生活・食事指導: 肥満の解消、禁煙、睡眠時の頭側挙上(上半身を高くする)、左側臥位での就寝、遅い夕食の回避(就寝3時間前は食べない)などが有効です。

薬物療法

    ◦ 酸分泌抑制薬: PPI(プロトンポンプ阻害薬)またはP-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー/ボノプラザン(タケキャブ®)が第一選択薬です。

    ◦ 補助的治療薬: アルギン酸塩、消化管運動機能改善薬(モサプリド、アコチアミド)、漢方薬(六君子湯)などが併用されることがあります。

外科的治療: 薬物療法抵抗性、長期の維持療法を要する場合、食道裂孔ヘルニアを伴う場合などは、腹腔鏡下噴門形成術などが検討されます。

PPIやボノプラザンの投与量

主な薬剤の一般的な投与量は以下の通りです。

逆流性食道炎の初期治療

通常8週間まで(ボノプラザンは4週間〜)投与します。

ボノプラザン(タケキャブ): 20mg 1日1回

ラベプラゾール(パリエット): 10mg 1日1回

ランソプラゾール(タケプロン): 30mg 1日1回

エソメプラゾール(ネキシウム): 20mg 1日1回

■ 逆流性食道炎の維持療法

再発予防のために投与します。

ボノプラザン: 10mg 1日1回

ラベプラゾール: 10mg 1日1回

ランソプラゾール: 15mg 1日1回

エソメプラゾール: 10mg〜20mg 1日1回

非びらん性胃食道逆流症(NERD)の治療

通常4週間投与します。一部のPPIは用量が逆流性食道炎の半量となります。

ラベプラゾール: 10mg 1日1回

ランソプラゾール: 15mg 1日1回

エソメプラゾール: 10mg 1日1回

ボノプラザン: NERDに対する初期治療としての保険適用記載は資料中にありませんが、治療抵抗性の場合の選択肢として20mgの使用が言及されています。

治療抵抗性(効果不十分)の場合の対応例

ラベプラゾール: 10mg 1日2回(計20mg)または 20mg 1日2回(計40mg、重度の場合)への増量・分割投与。

ボノプラザン: PPIからの切り替えとして 20mg 1日1回

PPIの使い分けとボノプラザンの立ち位置

PPIボノプラザン(P-CAB) は、重症度や治療段階に応じて推奨度が異なります。

■ ボノプラザン(P-CAB)の立ち位置

ボノプラザンは従来のPPIよりも「早く」「強力な」酸分泌抑制効果を持ちます。

重症逆流性食道炎(Grade C/D): 初期治療において、PPIよりも高い治癒率が期待できるため、ボノプラザン(20mg/日 4週間)が提案されます(推奨度2/弱)。維持療法においても再発率の低さからボノプラザン(10mg/日)が提案されます。

軽症逆流性食道炎(Grade A/B): 初期治療ではPPIと同等に推奨されます。維持療法としてはPPIが推奨(強)され、P-CABは提案(弱)にとどまります(長期安全性のデータ蓄積の差などによる)。

PPI抵抗性: PPIで効果不十分な場合の切り替え先として推奨されます。

NERD: 保険適用上の制限やエビデンスの不足から、初期治療の第一選択としては記載されていませんが、PPI抵抗性の場合の選択肢となりえます。

■ PPIの使い分け

日本で使用可能なPPI(オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾール)の常用量での治療成績に大きな差はないとされています。

ラベプラゾール(パリエット): 国内で唯一、効果不十分な場合に「倍量・分割投与(1日2回)」が保険適用で認められています。

維持療法: 軽症例では、症状がある時だけ服用する「オンデマンド療法」も選択肢となります(PPIが推奨されます)。

軽症のGERDにはPPI?またはP-CAB?

  • 「胃食道逆流症(GERD)診療の進歩日 消誌 2023;120:134―144」よりまとめました。

「どちらを使うべきかについてのコンセンサスはまだ得られていない」というのが現状ですが、「初期治療ではどちらも選択肢になり得るが、維持療法(長期管理)やNERDではPPIが優先される傾向にある」といえるようです。

具体的な判断基準は以下の通りです。

軽症逆流性食道炎(Grade A/B)の「初期治療」

PPIとP-CABのどちらを選択するかメリット・デメリットで判断します。

現状の評価: 軽症例に対してPPIを用いるかP-CABを用いるかについて、専門家の間でも一定の見解は得られていないようです。

P-CABを選ぶ理由: 従来のPPIよりも酸分泌抑制力が強く、効果の個人差が少ないため、P-CABで治療を開始することは間違いではありません。より確実で早い効果を期待する場合に選択されます。

PPIを選ぶ理由: 治療の基本方針である「酸分泌抑制は必要最小限の用量・用法を心がけるべき」という点を重視する場合、軽症例の多くはPPIで十分にコントロール可能であるため、PPIが選択されます。

軽症逆流性食道炎(Grade A/B)の「維持療法」

治療後に症状が落ち着いた後の再発予防(長期管理)においては、PPIが推奨される傾向にあります。

安全性の観点:

    ◦ PPI: 長期使用に関するデータが豊富にあり、リスクとベネフィットを勘案してもベネフィットが明らかに大きいとされ、適応症例には躊躇なく長期維持療法を行うべきとされています。

    ◦ P-CAB: 短期投与の安全性は高いものの、長期投与に関する安全性についてはまだ不明な点があり(腸内細菌叢への影響など)、今後も注意が必要とされています。

治療戦略: 症状コントロールが良好であれば、PPIを含めた最低用量の酸分泌抑制薬への移行を考慮すべきとされています。

NERD(非びらん性胃食道逆流症)の場合

NERDに対しては、PPIが第一選択となります。

推奨と保険適用: NERDの初期治療としては、生活習慣の改善とともにPPIが推奨されています。資料の時点では、NERDに対してP-CAB(ボノプラザン)の保険適用はありません

参考文献

  • 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021(改訂第3版)
  • 今日の臨床サポート胃食道逆流症(非びらん性胃食道逆流症、逆流性食道炎) 症状、診断・治療方針まで(2026年1月23日閲覧)
  • 「胃食道逆流症(GERD)診療の進歩」日消誌 2023;120:134―144

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