救急外来で高カリウム血症に遭遇した場合、致死的な不整脈や心停止を防ぐために、時間軸を意識した迅速かつ組織的な対応が必要です。
初期評価から治療介入、モニタリングまでの具体的なアクションプランを、4つに整理して提示します。

アクションプラン1:初期評価と準備
治療と並行して、原因検索と緊急度の判定を行います。
• 基本チェック: バイタルサイン、心電図(テント状T波、P波消失、QRS幅延長など)、代謝性アシドーシスの有無、腎機能障害の有無(急性か慢性か)を確認します。BRASH症候群では、心電図上、典型的な高カリウム血症の所見(特にテント状T波など)を伴わず、単に「房室伝導障害(AVブロック)」や「接合部調律」などの徐脈所見のみが目立つことが一般的です。
• 偽性高K血症の除外: 溶血などによる検査エラーの可能性を常に念頭に置きます。
• 内服薬の確認: 高K血症を引き起こす薬剤(ACE阻害薬、ARB、MRA、NSAIDs、βブロッカー、ST合剤など)の内服有無を確認し、これらを中止します。

アクションプラン2:心保護
目標:致死性不整脈の回避
K値を下げる効果はありませんが、心筋の興奮を抑制し、最も緊急性の高い処置です。
• 薬剤: グルコン酸カルシウム(カルチコール® 8.5%)
• 投与法:
◦ 一般的には10mL(1A)を2〜5分かけて静注しますが、これでは不十分なケースが多いとされています。
◦ 十分な心臓保護効果を得るため、20〜35mL(2〜3A)を10分程度かけて点滴静注する「単回大量投与」が推奨されることがあります。
• 注意点:
◦ 効果は30〜60分程度で消失するため、その間にK値を下げる治療(アクションプラン3以降)を急ぐ必要があります。
◦ ジギタリス内服中の患者では禁忌となるため注意が必要です。
アクションプラン3:カリウムを細胞内へ押し込む
目標:血中Kの一時的な低下
Kを体外に出すわけではありませんが、細胞内に移動させることで血清K値を下げます。以下の2つを併用することが推奨されます。
• GI療法(Glucose-Insulin療法)
◦ 方法: 50%ブドウ糖液50mL + 速効型インスリン(ヒューマリン®R)5単位を5分かけて静注。
◦その後、低血糖予防のために10%ブドウ糖液を持続点滴(50mL/時)、。
• β刺激薬の吸入
◦ 方法: サルブタモール(ベネトリン®)10mg(2mL)を適宜生理食塩水で希釈して吸入
◦ ポイント: GI療法と併用することで、K値低下効果の増強と低血糖リスクの減少が期待できます。
アクションプラン4:カリウムを体外へ排出する
目標:Kの絶対量の減少
細胞内シフトは一時的な措置であるため、最終的には体外へ排泄する必要があります。
• カリウム吸着薬(陽イオン交換樹脂)
◦ ERでは即効性が求められるため、ジルコニウムシクロケイ酸Na(ロケルマ®)が有用です。服用後1時間でK値が低下し始め、GI療法との併用が推奨されています(ENERGIZE試験)。
◦ 用量: ロケルマ® 10g内服
◦ 注意点: 従来のポリスチレンスルホン酸Ca/Na(カリメート®、ケイキサレート®)は便秘や腸管壊死のリスクがあり、作用発現も遅いため急性期には使いにくい側面があります。特に腸閉塞の既往がある患者では、腸管内で膨張するパチロマー(ビルタサ®)等は避け、ロケルマ®を選択する等の配慮が必要です。
• 血液透析
◦ 上記の治療に抵抗性の場合や、無尿の透析患者、高度な腎不全がある場合は、早期に腎臓内科医へコンサルトし、緊急透析を考慮します。
• 利尿薬
◦ ループ利尿薬(フロセミド)は急性期の効果は限定的です。溢水(体液過剰)がある場合のみ考慮します。輸液が必要な場合は、高Cl性代謝性アシドーシスによるK上昇を防ぐため、生食ではなくリンゲル液の使用が望ましいとされています
カリウム値や血糖値の再評価タイミング

高カリウム血症の治療における再評価のタイミングは、「治療効果判定」「リバウンド(再上昇)」、そして「合併症(低血糖)」の3点を捉えるために設定されています。
測定タイミングは以下の通りです。
✅️ K : 1時間, 2時間, 4~6時間後に測定
✅️ 血糖値 : 30分, 1時間, 1.5時間, 2時間, 3時間, 4時間, 5時間, 6時間後に測定
詳細は以下に記載しました。
1. 血清カリウム値の測定タイミング
治療開始から1時間、2時間、4〜6時間の時点での測定が推奨されます。
• 1〜2時間後(効果判定):
◦ 目的: 細胞内シフト療法(GI療法やβ刺激薬吸入)の効果が最大になるのが約30〜60分後であるため、K値が目標(例:2時間以内に6.0 mEq/L未満)まで下がっているかを確認します。
◦ アクション: 下がりきっていない場合は、追加の治療や透析への移行を検討します。
• 4〜6時間後(リバウンドの確認):
◦ 目的: GI療法やβ刺激薬の効果は一時的であり、効果が切れる4〜6時間後に細胞内から細胞外へカリウムが戻り、再度K値が上昇する「リバウンド現象」が起こるためです。
◦ アクション: リバウンドを防ぐために、即効性のあるカリウム吸着薬(ロケルマ®など)を早期に併用しておくことが推奨されています。
2. 血糖値の測定タイミング
GI療法を行った場合は、低血糖のモニタリングが必須です。インスリンの作用(4〜6時間)はブドウ糖の作用(約1時間)よりも長く続くため、遅発性の低血糖に注意が必要です。
• 推奨スケジュール:
◦ 最初の2時間: 30分ごと(30分、1時間、1.5時間、2時間)
◦ その後: 1時間ごとに、治療開始から6時間後まで測定。
• 注意点: 腎不全患者ではインスリンの代謝が遅延し、効果が遷延しやすいため、より厳重な管理が必要です。
参考文献
- UpToDate – Causes and evaluation of hyperkalemia in adults(2026/02/02閲覧)
- https://www.lokelma.jp/ (2026/02/02閲覧)
- HOKUTO 「【高K血症】カリウム吸着薬の”上手”な使い方」


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