- 糖尿病の診断は、血糖値およびHbA1cの値を測定し、「糖尿病型」の判定を経て確定診断を行う流れとなります。
- 1型であれ2型であれ基本的に診断基準は共通ですが、「劇症1型糖尿病」は別です。
- 劇症1型糖尿病は随時血糖値 ≥ 288 mg/dL かつ HbA1c < 8.7% という特殊な基準が設けられています。
- 劇症1型糖尿病の場合、発症があまりに急激(数日〜1週間程度)であるため、血糖値は著しく高いのに、HbA1cの上昇が追いつかず正常範囲内(あるいは軽度上昇のみ)ということが起こりえます。


1. 「糖尿病型」の判定基準
以下のいずれかの条件を満たす場合、「糖尿病型」と判定されます。
• 早朝空腹時血糖値: 126 mg/dL 以上
◦ 10時間〜14時間絶食した状態での血糖値です。
• 75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値: 200 mg/dL 以上
◦ ブドウ糖液を飲んでから2時間後の血糖値です。
• 随時血糖値: 200 mg/dL 以上
◦ 食事と採血時間の関係を問わない血糖値です。
• HbA1c(NGSP): 6.5% 以上
◦ 過去1〜2ヶ月の平均的な血糖状態を反映する指標です。
2. 「糖尿病」の確定診断
「糖尿病型」=「糖尿病の診断」ではありません。以下の流れで診断が確定します。
A. 初回検査だけで診断できるケース
• 血糖値(空腹時、75gOGTT、随時のいずれか)と HbA1c が同時に「糖尿病型」の基準を満たしている場合、即座に「糖尿病」と診断されます。
• 血糖値が「糖尿病型」であり、かつ糖尿病の典型的な症状(口渇、多飲、多尿、体重減少など)がある、または糖尿病網膜症が認められる場合も、1回で診断可能です。
B. 再検査が必要なケース
• 初回検査で「血糖値のみ」または「HbA1cのみ」が糖尿病型だった場合は、別の日に行う再検査で確認します。
◦ 再検査の結果、血糖値が糖尿病型であれば診断が確定します。
◦ 初回が血糖値のみ高く、再検査でHbA1cのみ高い(血糖値は正常域)場合は、糖尿病の疑いとして経過観察(3〜6ヶ月以内の再検査)となります。
3. 注意点
• HbA1cだけでは診断不可: HbA1cが6.5%以上であっても、血糖値による確認(同日または別の日)がなければ「糖尿病」とは診断できません。
4.Q&A(私が研修医のときに疑問に思ったことです)
Q1. 健診でHbA1cが6.5%以上でした。再検査なしで「糖尿病」と確定診断して良いですか?
A. いいえ、HbA1c単独では確定診断できません。血糖値の確認が必要です。
• 解説: HbA1cが6.5%以上であっても、それだけで直ちに「糖尿病」と診断することはできません。 確定診断には、「血糖値(空腹時、随時、75gOGTTのいずれか)」と「HbA1c」の両方が糖尿病型の基準を満たしていることを確認する必要があります。 もし初回の検査で「HbA1cのみ」が基準を超えていた場合は、別の日にもう一度検査を行い、再度HbA1cまたは血糖値が基準を超えていることが確認されて初めて診断が確定します。 ただし、初回検査で「HbA1c≧6.5%」かつ「血糖値も糖尿病型」であれば、1回の採血で診断可能です。
Q2. 1回の採血だけで、即日に糖尿病と診断できるのはどのようなケースですか?
A. 「血糖値とHbA1cが両方とも糖尿病型」の場合、または「血糖値が糖尿病型で、かつ典型的症状や網膜症がある」場合です。
• 解説: 以下のいずれかのパターンであれば、初回検査のみで診断可能です。
1. 血糖値(空腹時≧126mg/dL、随時≧200mg/dL、75gOGTT 2時間値≧200mg/dLのいずれか)と、HbA1c(≧6.5%)が同時に確認された場合。
2. 血糖値が糖尿病型であり、かつ糖尿病の典型的な症状(口渇、多飲、多尿、体重減少など)が存在する場合。
3. 血糖値が糖尿病型であり、かつ確実な糖尿病網膜症が認められる場合。
Q3. 血糖値は高い(糖尿病型)ですが、HbA1cは6.5%未満で正常範囲内でした。どう解釈すれば良いですか?
A. 「糖尿病の疑い」として再検査が必要です。また、急激な発症やHbA1cが低く出る病態も考慮してください。
• 解説: 血糖値のみが糖尿病型でHbA1cが基準値未満の場合、診断は「糖尿病の疑い」となり、原則として別の日(1ヶ月以内)に再検査を行います。 この乖離が見られる場合、以下の可能性を考慮します。
◦ 劇症1型糖尿病などの急激な発症: 血糖上昇にHbA1cの上昇が追いついていない可能性があります。
◦ HbA1cが偽低値を示す病態: 溶血性貧血、肝硬変、透析患者、鉄欠乏性貧血の回復期など、赤血球寿命が短縮する病態では、血糖が高くてもHbA1cが低く出ることがあります。この場合、グリコアルブミン(GA)などを参考にします。
Q4. 「随時血糖値」で診断する場合、「食後」であればどんなタイミングでも良いですか?
A. はい、食事からの時間は問いませんが、診断基準は「200mg/dL以上」です。
• 解説: 「随時血糖値」とは、食事と採血時間との関係を問わずに測定した血糖値を指します。 一般的な健診の「食後血糖」とは異なり、診断基準として用いる場合は200mg/dL以上であることが条件です。 たとえ食後1時間のピーク時であっても、200mg/dL以上あれば「糖尿病型」と判定されますが、逆に「随時血糖値が200mg/dL未満」だからといって糖尿病を否定することはできません(正常型〜境界型の可能性があります)。
Q5. 空腹時血糖は正常(110mg/dL未満)ですが、HbA1cが6.0〜6.4%と少し高めです。経過観察で良いでしょうか?
A. 可能な限り「75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)」を行って、食後高血糖(隠れ糖尿病)がないか確認すべきです。
• 解説: HbA1cが5.6〜5.9%の場合は肥満や家族歴などのリスクを勘案してOGTTを検討しますが、HbA1cが6.0〜6.4%の場合は「糖尿病の疑い」が否定できないため、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の実施が強く推奨されます。 空腹時血糖が正常でも、OGTTを行うと食後2時間値が200mg/dLを超えており、実は糖尿病であったというケース(食後高血糖型)を見逃さないために重要です.
参考文献
- ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブックVer.6



コメント