無事合格

2025年12月14日に行われた第11回心電図検定1級に、無事合格することができました。
これまでに3級(成績優秀者)、2級とステップアップしてきましたが、これで一旦の区切りがついたと感じています。そこで今回は、私なりの勉強方法や学習を支えたツール、そして使用した参考書についてまとめました。
はじめに断っておきますが、私は決して天才肌ではありません。記憶力も自信がある方ではなく、むしろ「数週間で1級合格!」というような華々しい短期決戦型の勉強法は教えられません。
その代わり、コツコツと積み上げる「凡人のための戦略」として、どなたかの参考になれば幸いです。
1級合格までの勉強時間
9月ころから勉強を始めました。3級、2級のときもおおよそ試験本番から3ヶ月前くらいから勉強を開始してました。医師として常勤で働いているため、平日の勉強時間は確保できておおよそ「1日1時間」です。当直の日は全く勉強できないこともありましたし、休日は家族との時間を大切にしているため、多くても2時間程度でした。
限られた時間の中で勉強量を確保するために徹底したのが、隙間時間の活用です。 お風呂や休憩時間など、少しでも手が空けばスマホアプリ「みんなde心電図」を開き、ひたすら演習を繰り返しました。
これは本当に「神アプリ」と言って差し支えありません。
ただ、1級の試験内容と比較すると、アプリの問題難易度はやや易しめに設定されていると感じました。あくまで基礎固めとして活用するのが良いでしょう。
直前期は、自分の苦手分野を書き出し、YouTubeの「心電図マイスターチャンネル」を見たり、参考書で復習したりして知識の穴を埋めました。
合格の鍵は「Obsidian」
今回の合格の立役者は、なんといっても「Obsidian」です。私はこのツールを使って、自分専用の「心電図データベース」を構築しました。
具体的な方法はシンプルです。気になった心電図や間違えた問題をObsidianに貼り付け、自分なりのコメントや解説を追記していくだけです。
例えば、Obsidian内で「WPW症候群」と検索すると、過去に自分が貼り付けてきたWPW症候群の心電図がずらりと並びます。

こうして並列して眺めることで、頭の中で「この病気は、こういう心電図の形をとるバリエーションがあるのか」と、個別の症例が抽象化され、パターン認識ができるようになります。
また、心室期外収縮(VPC)などの起源を推定する必要がある心電図は、参考書を見ながら自分でObsidian上で体系的にノートを作成しました。各起源の典型的な波形を、参考書や解説動画、あるいはX(旧Twitter)などから収集して貼り付けていきました。

私は循環器内科医ではないため、専門的な用語や詳細な機序については「心電図.com」などのWebサイトや、GeminiのDeep research機能を使って調べ、知識を補完しました。
特にXには、非常にわかりやすい解説を投稿されている先生方が多くいらっしゃいます(お世話になった先生方のアカウントは下記にあります)。勉強になる解説画像を見つけたら、すぐに保存してObsidianに取り込む。これを繰り返すことで、散らばっていた知識がObsidianという一つの場所に集約されていきました。
Obsidianの導入方法や活用方法は以下の記事をご覧いただければ幸いです。
ちなみにAIは心電図読影にはあまり立たなかった
どうしてもわからない心電図については、GeminiやChatGPTなどに心電図画像を取り込み、解説を作らせることも試みましたが、現状では明らかに間違った所見を述べることが多く、実臨床や試験対策にはまだ時期尚早だと感じました(2025年12月時点)。用語の意味を調べるには便利なんですがね・・・・。
仲間をつくって勉強
デジタルツールだけでなく、アナログな環境作りも大切にしました。 同僚を巻き込み、ポモドーロ・テクニックを使って集中できるよう工夫したり、お互いに問題を出し合ったりしました。
また、実臨床の場も貴重な学習機会です。救急外来や病棟で「これは難しい」と感じる心電図があれば印刷して残してもらい、空いた時間に読影するトレーニングを行いました。どうしても分からない所見は、循環器内科の先生に質問に行きました。お忙しい中、丁寧に教えてくださった先生方には感謝しかありません。
そして、Xには心電図検定合格を目指す沢山の仲間がいます。Xを開けば、頑張っている仲間がたくさんいる・・・・・おおいに刺激を受けました。モチベーションアップにはやっぱり仲間です。
アウトプットを意識する
普段から小さい手帳を持ち歩き、「あの病気の心電図所見は何だったか……」と頭の中で思い浮かべ、それを手帳に書き出すというトレーニングもしました。

その他、実習で回ってきた医学生さんや看護師さんに心電図の読み方を教えることもありました(学生さんからしたら鬱陶しかったかもしれませんが、教えることは一番の学びになります)。
臨床を意識する
ここで意識していたのは、単なる「資格コレクター」にならないことです。「この心電図が来たら、自分だったらどう対応するか(経過観察か、緊急カテーテルか、ペースメーカーか)」を常に考えながら読みました。
試験対策としては、問題集を解く際に、あえて選択肢を隠して所見を挙げる練習もしました。
心臓を立体的にイメージする
心電図を読む上で最も重要なのは「この誘導は、心臓のどのあたりから見ているのか」という立体的なイメージを持つことです。 私は空間把握能力が高い方ではないため、「Sketchfab」というサイトにある「12 Lead ECG」という3Dモデルは非常に有用です。
- 参考サイト: 12 Lead ECG – Sketchfab
この3Dモデルをグリグリと動かしながら、電極と心臓の位置関係を脳に叩き込みました。
「言葉の定義」を疎かにしない
1級レベルになると、感覚的な読影だけでは太刀打ちできません。「左室高電位とは具体的に何mV以上か?」「巨大陰性T波の定義は?」「洞調律の厳密な定義は?」といった、言葉の定義・基準をしっかり覚えるように心がけました。定義を知らないと正解に辿り着けない問題もあるため、ここは避けて通れません。
私なりの読影ルーチン
そして、試験本番や臨床で迷わないために、自分の中での「読影ルール」を確立していました。電気生理学的なメカニズムに深入りしすぎると泥沼にはまるため、まずは「型」と「パターン」を覚えることに徹しました。
以下が私の読影ルーチンです。
【My心電図読影ルーチン】
- まず調律を確認する
- P→QRS→T の順に出ているか?
- P波とQRSは1対1で対応しているか?
- 次に心拍数を調べる
- QRS間隔から計算。60~100/分なら正常。
- P波の形を見る
- I・II誘導で陽性が正常。
- 幅3mm、高さ2.5mm未満ならOK。
- PQ間隔をチェックする
- 0.12~0.20秒が正常値。
- QRS群を確認する
- 幅2.5mm未満(0.10秒未満)なら正常。
- 異常Q波の有無を確認。
- ST-T変化も見る
- T波の向きと高さを確認。
- aVR以外の誘導での陰性T波は要注意。
- QT間隔を確認する
- QTcは0.35~0.44秒。
- 最後にU波を確認する
- T波のあとに小さく出現していないか。
常にこの順番で見ていくことで、見落としを防ぐように心がけました。
必須アイテム
試験に必須のアイテムとして「ディバイダー」があります。私はAmazonで購入しましたが、先端の噛み合わせが微妙だったため、ドライバーを使って自身で調整しました。道具のメンテナンスも重要です。

使用した参考書
以下の参考書を使用しました。3級、2級では「改訂3版 心電図検定公式問題集&ガイド 日本不整脈心電学会」と、「講義+試験対策模擬問題100問心電図マイスターを目指す基礎力grade up講座」を使用しました。
- 改訂3版 心電図検定公式問題集&ガイド 日本不整脈心電学会
- 心電図完全攻略マニュアル マイスターが教える1・2級合格への最強メソッド
- 心電図7日間最強ブースト マイスターと鍛える1・2級合格へのテーマ別集中対策
- 講義+試験対策模擬問題100問心電図マイスターを目指す基礎力grade up講座
- 心電図の読み方パーフェクトマニュアル
改訂3版 心電図検定公式問題集&ガイド

編集: 日本不整脈心電学会 心電図検定委員会 出版社: メディカ出版 定価: 3,300円(税込) 発行: 2022年4月
主催団体である「日本不整脈心電学会」が出している唯一の公式本です。 個人的には「傾向を知るために全員が買うべきだが、解説が不親切なのでこれだけで合格するのは難しい」というのが率直な感想です。
本書は3級〜1級までの問題がランダムに掲載されています。おおよそではありますが、今の自分が3級レベルなのか、2級レベルなのかを客観的に測る『ものさし』になります。
1級以上の高難易度問題も収録されており、公式見解としての「正解」がわかります。「微妙な判読で意見が割れそうな波形でも、『学会はこの波形をこう読ませたいんだな』という基準(落とし所)がつかめる」 という、試験対策特有のメリットがあります。
最大の欠点は「解説があっさりしすぎている」という点です。
- 「『〇〇所見があるため、答えはこれ』と書いてあるだけで、初心者が一番知りたい『なぜその所見と言えるのか』のプロセスが省かれていることが多い」
- 「診断名はわかるが、鑑別のポイントが詳しく書かれていないため、結局別の参考書で調べ直す必要がある」
といった欠点を感じました。
また、最近の実際の試験は、この公式問題集よりも難しくなっています。特に1級・マイスターを目指す場合、この本の問題が解けるだけでは不十分で、後に紹介する「完全攻略マニュアル(黄色本)」や「心電図7日間最強ブースト(緑本)」、「基礎力grade up」等でのプラスアルファが必須です。
🎯 おすすめの対象者
- 心電図検定受験者 全員です。酷評しましたが、レベルに関わらず、出題傾向を知るために必ず一度は通るべきです。
- ただし、「この本をメインの参考書にしようとしている人」にはおすすめしません。
心電図完全攻略マニュアル マイスターが教える1・2級合格への最強メソッド(通称:黄色本)

著者: 萬納寺 洋士、矢加部 大輔 出版社: 羊土社 定価: 4,840円(税込) 発行: 2024年10月頃
「マニュアル」の名通り、体系的に知識を網羅しています。
- 「パターン」と「理論」のバランスが良い
- ただ波形を暗記するだけでなく、「なぜその波形になるのか」が解説されているため、応用が利きます。特に1級で問われるような複雑な不整脈の判読に強くなれます。
- 模擬試験が2回分ついている
- 巻末に50問×2回分の模擬テストがあり、これだけで検定本番のシミュレーションができ、コスパが良いです。
- なお、検定直前に模擬テストをときましたが、それぞれ35/50問、34/50問という微妙な点数でした・・・
注意点としては
- 情報量が多い
- 「完全攻略」を目指しているため、ボリュームがあります。試験直前に「これ1冊でさらっと」済ませるタイプではなく、じっくり腰を据えて取り組む本です。
🎯 おすすめの対象者
- これから本格的に1級・2級の勉強を始める人(最初の1冊として最適)
- 「なんとなく読める」から「論理的に説明できる」レベルに引き上げたい人
心電図7日間最強ブースト マイスターと鍛える1・2級合格へのテーマ別集中対策(通称:緑本)

著者: 萬納寺 洋士、矢加部 大輔 出版社: 羊土社 定価: 4,620円(税込) 発行: 2025年8月
上記「完全攻略マニュアル(黄色本)」の姉妹本として、より実践に特化した問題集です。「7日間」というコンセプト通り、短期集中型です。なお「7日目」の応用問題を検定直前に解きましたが、30問中15問しか正解できませんでした・・・。
- 圧倒的な「演習量」
- 1日30問 × 7日間 = 合計210問という問題数が収録されており、「とにかくたくさんの波形を短期に見たい」というニーズに応えています。
- テーマ別で「弱点」を潰しやすい
- 日ごとにテーマが決まっているため、自分の苦手な分野だけを重点的に対策できます。特に「起源推定」の特訓ができるのが個人的によかったです。
- 解説が「実戦向き」
- くどい理論解説よりも、「この所見があるから、答えはこれ」という即断即決のプロセスを重視しており、試験でのスピードアップに役立ちます。
- 注意点
- 解説は「判読」特化:なぜこの波形になるのか」という深い理論解説は「完全攻略マニュアル」の方に譲っている部分があります。この「緑本」はあくまで「問題を解くアウトプット」用です。
🎯 おすすめの対象者
- 試験まで時間がない人(直前1ヶ月〜1週間の追い込み)
- 知識はあるが、本番形式の問題を解くと時間が足りなくなる人
- 特定の分野(特に不整脈の起源推定など)に苦手意識がある人
講義+試験対策模擬問題100問 心電図マイスターを目指す基礎力grade up講座

著者: 藤澤 友輝 出版社: メジカルビュー社 定価: 4,620円(税込) 発行: 2023年10月
「1級以上を目指すなら必須級」「最後の一押しに効く」といった印象です。一方で、「基礎力grade up」とありますが、完全な初心者向けではないです。ある程度の基礎知識がある状態で挑むべき一冊と感じました。
個人的に以下の点がよかったです。
- 教科書的な知識だけでなく「実際の波形をどう瞬時に判読するか」という実践テクニックにフォーカスしている点がよかったです。
- 軸偏位やブロック、変行伝導のメカニズムが、単なる暗記ではなく論理的に理解できるようになった(脚ブロックの電気の流れの覚え方が秀逸でした!)
- イラストや図解が多く、難しい概念もイメージしやすかった
- 試験本番で時間を稼ぐための判読手順が身についた
- 100問の模擬問題は、本番レベルかそれ以上の難易度があり、実力試しに最適で直前期の総仕上げに使えた
- 注意点
- ある程度の知識がある前提で書かれているため、初学者がいきなり手を出すと挫折するかもしれないです。
- “なぜそうなるのか”を1から10まで手取り足取り解説しているわけではないので、不明点は自分で調べる必要があります。そのため、3級・4級レベルの知識に不安がある場合は、別の入門書(黄色本など)を読んでからのほうがいいかもしれません。
🎯 おすすめの対象者
- 心電図検定1級合格、またはマイスターを目指している人
- 基礎知識はあるが、複雑な波形(広範囲梗塞の部位特定、変行伝導など)になると時間がかかってしまう人
- 「実力心電図」などの定番テキストを一通り終え、さらに演習量を増やしたい人
- 試験直前の1〜2ヶ月で、本番形式の問題演習と弱点補強を同時に行いたい人
心電図の読み方パーフェクトマニュアル

編集: 渡辺 重行、山口 巖 出版社: 羊土社 定価: 8,580円(税込) 発行: 2006年2月
困ったときの最終兵器臨床現場でも長く使える本格的な専門書です。載っていない波形はないんじゃないかと思います。
1級・マイスターで出題されるような『重箱の隅をつつく』知識も網羅されており、知識の抜け漏れを防げます。
単なる波形暗記ではなく、論理的に解説されており、応用力を養うのに最適です。検定が終わった後も、循環器病棟や救急外来での業務でずっと使え、値段は高いですが、一生モノの知識が得られるので投資対効果は高いと感じます。
- 注意点
- 最初から最後まで通読しようとすると挫折します。調べたい項目を拾い読みするのが正解です
- 文字が多く、専門用語が容赦なく出てくるので、心電図アレルギーの人が最初に買うと撃沈します。ある程度他の本で基礎を固めた後の「2冊目・3冊目」として購入するのが鉄則です。
🎯 おすすめの対象者
- 心電図検定1級・マイスターで「高得点」を狙う人
- 「なぜこの波形になるのか」をとことん突き詰めたい人(理屈で理解したい派)
- 手持ちの対策本や問題集の解説だけでは物足りなさを感じている人
- 将来的に循環器領域のプロフェッショナルとして働きたい人
第11回心電図検定1級 受験当日のメモ
最後に、受験当日の備忘録を残しておきます(こんな日記書いた覚えないですが、誤字脱字も多く興奮冷めやらぬうちに書いたのでしょうね・・)。時間はまったくなかったようで、トイレも混んでいたようです。
「トイレはまぁまぁ混んでた。試験時間たりなかったー。10分しか余らず。移動性ペースメーカー、カテコラミン感受性でた。心筋梗塞の閉塞部位の推定は一問くらいしかでなかった。右冠動脈のどこかとかはでなかった。プログラミングはでなかった。ペーシング不全はでた。CRTかどうかもでた。内臓逆位症でた。右京心なのかつけ間違えかもでた。心房頻拍、右室肥大の定義がむずかしい。時計も会場になかった。百均のやつ買ってきた。とりあえずお疲れ様。お酒飲もう」
まとめ
- 紙のノートももちろんおすすめですが、見返しやすさやデータ蓄積の面を考えるとObsidianはやはり有用だなと感じました。
- 心電図検定に限らず、Obsidianは医学知識を集約するのにもってこいのツールです。
- ありがとうObsidian
参考サイト
- https://sindenzu.com/
- https://sketchfab.com/3d-models/12-lead-ecg-beb79750243841b8be64e2f59b4f64d0
- 心電図マイスターチャンネル(Youtube)
Xでお世話になった方々
- 心電図くま | ECG KUMA様 https://x.com/ecgkuma?s=20
- KagawaECG 様 https://x.com/KagawaECG?s=20
- 心リハPTせこ 様 https://x.com/crptseko?s=20
- 心電図道場@ecgdoujou 様 https://x.com/ecgdoujou?s=20
- えかげますたぁ|Dr.ヒロ@ekagemaster 様 https://x.com/ekagemaster?s=20
などなど・・・。ありがとうございました。


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