- 結論から言うと、眼瞼結膜は「重症貧血(Hb < 5 g/dL)の確定診断」には有用ですが、「貧血のスクリーニング(除外)」には不向きと言えます。
- Hb が低くなるほど身体所見の感度は高く,特異度は低くなるはずですが、下の表ではその傾向明らかではないです。この表は別々の研究のデータを統合したメタ解析のためではありますが、身体所見だけでは Hbの正確な推測が困難なことを示しています。

眼瞼結膜が明らかに蒼白であれば、Hb 5g/dLを切るような重篤な貧血がある確率は極めて高い
- 表の一番下(Hb < 5 g/dL)をご覧ください。眼瞼結膜の陽性尤度比(LR+)は 8.4 となっており、これは同条件の手掌(7.7)や爪床(7.9)を上回り、この表の中で最も高い数値です。
- 眼瞼結膜が明らかに蒼白であれば、Hb 5g/dLを切るような重篤な貧血がある確率は極めて高いと言えます。
- 緊急輸血が必要なレベルを見逃さないための「特異的なサイン」として非常に優秀です。
- 一方で、Hb < 11 g/dL(軽度)や Hb < 8 g/dL(中等度)の項目を見ると、眼瞼結膜の感度は44%〜71%にとどまっています。
- 眼瞼結膜の蒼白がないからといって、「貧血はない」と言い切ることはできません。
- 特に Hb < 11 g/dL の軽度貧血では感度が44%しかなく、半分以上の症例を見逃すことになります。「スクリーニング」としての性能は低いです。
「貧血を除外したい」なら手掌の方がマシ
- Hb < 8 g/dL の行を比較すると、眼瞼結膜の感度71%に対し、手掌は感度81% です。陰性尤度比(LR-)も手掌の方が低い(0.3 vs 0.4)です。
- 貧血が無いこと」を確認したい(除外したい)のであれば、眼瞼結膜を見るよりも、手掌(の手相のシワ以外の部分)が赤々としているかを確認する方が、統計学的には理にかなっています。
注意が必要なケース:徐々に進行する貧血
- 鉄欠乏やビタミンB12欠乏などによって貧血がゆっくり進行する場合、体が低酸素状態に順応(代償)してしまうことがあります。この場合、Hbが非常に低くなる(very low)まで蒼白などの徴候が現れないことがあるため、見た目だけで判断するのは危険です。
- また貧血がなくても、末梢血管が収縮している(寒い、緊張しているなど)だけで蒼白に見えることがあります。
眼瞼結膜をみるコツ

- 比較して見る: 下まぶたをめくった際、「前縁(手前側)」の赤みが、「後縁(奥側・結膜円蓋部)」に比べて強くない場合に蒼白と判断します。
- なぜ奥を見るのか: 結膜の奥側(後縁)はHbの値に左右されにくい性質があるため、そこを基準にすることで、手前側の色の薄さをより客観的に評価できるからです。
まとめ
眼瞼結膜は「重症貧血(Hb < 5 g/dL)の確定診断」には有用ですが、「貧血のスクリーニング(除外)」には不向きと言えます。
しかし、軽度の貧血では見た目に出ないことも多いため、「眼瞼結膜蒼白がないから貧血はない」と考えるのは禁物です。
参考文献
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス 第2版
- 身体診察 免許皆伝一目的別フィジカルの取り方伝授します第1版



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