今回は、循環器専門医でなくとも知っておくべきAF診療のポイントを、UpToDateやガイドライン等からまとめました。
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--- markmap: maxWidth: 350 initialExpandLevel: 2 spacingHorizontal: 80 --- # 心房細動 (Afib) ## 1. 診断・初期評価 ### 診断基準 (心電図) - **絶対性不整脈**
RR間隔が完全に不規則 - **P波の消失**
f波 (fibrillatory wave) に置換 ### 必須検査項目 - **経胸壁心エコー** - 左房径拡大の確認 - 弁膜症の有無
(抗凝固薬選択に必須) - 左房内血栓 - **血液検査** - 甲状腺機能 (TSH)
(亢進症の除外) - 電解質・腎機能 ## 2. 脳梗塞予防 (抗凝固) ### リスク評価 - **CHADS2スコア** - **CHA2DS2-VASc** ### 薬剤選択 - **DOAC (第一選択)** - 非弁膜症性で推奨 - 食事制限なし - **ワルファリン** - 機械弁・弁膜症性で必須 - 納豆禁止・INR測定必須 ## 3. 治療 (レート/リズム) ### レートコントロール - **目的**: 症状改善・心不全予防 - **薬剤**: β遮断薬、Ca拮抗薬、ジギタリス - **目標**: 安静時 < 110bpm ### リズムコントロール - **目的**: 洞調律の維持 - **カテーテルアブレーション** - 第一選択 (薬物より有効) - 早期介入で予後改善 - **抗不整脈薬** (I群/III群) ## 4. 生活習慣 (Upstream) ### 危険因子管理 - 高血圧、肥満、SAS、飲酒
分類:「いつから?」と「弁膜症か?」を確認
AFを見つけた時、「発症時期・持続期間」と「基礎疾患(特に弁膜症)」を確認します。
(1)持続時間による分類
治療方針(特に洞調律に戻すべきか)を決定するために重要です。
1. 発作性 AF 7日以内に自然停止、または介入により停止するもの(多くは48時間以内)。
2. 持続性 AF : 7日を超えて持続するもの。
3. 長期持続性 AF: 1年以上持続しているが、リズムコントロール(洞調律復帰)を考慮するもの。
4. 永続性 AF: 洞調律への復帰を断念し、AFのまま管理する方針としたもの。
(2)弁膜症性か、非弁膜症性か
抗凝固薬の選択において決定的に重要です。「弁膜症性AF」の定義は以下の2つのみです。
1. 機械弁置換術後
2. 僧帽弁狭窄症(MS)
これらに該当する場合はワルファリン一択となり、DOACは禁忌です。逆に、これら以外(生体弁術後や僧帽弁閉鎖不全症など)は「非弁膜症性AF」としてDOACの使用が可能です。
症状:無症状こそ要注意
- 主な症状
- 動悸、息切れ、胸部不快感、易疲労感などが一般的
- しかし高齢者では非特異的な症状(なんとなく元気がない、食欲がない)であることも少なくありません。
- 無症候性AFの落とし穴
- AF患者の約4割は無症状(無症候性)と言われています。
- 重要なのは、「無症状でも脳梗塞のリスクは有症状の人と変わらない(あるいは気付くのが遅れる分、予後が悪い)」ということです。
- 症状がないからといって放置せず、脳梗塞のリスク評価(CHADS2スコアなど)を行うことが必須です。

救急外来で新規心房細動をみたらどう対応するか
ERや当直で、新規発症心房細動に遭遇した場合の対応フローです。
Step 1:
- 血行動態は安定しているか? まず「ショック状態(血圧低下、冷感、意識障害)」や「重篤な心不全・虚血」がないか確認します。
- 不安定な場合: 躊躇せず電気的除細動(カルディオバージョン)を行います。同期下で100J~200Jで通電します。
- 並行して病歴の把握や原因検索を行っていきます。
- 病歴:AF の症状の有無,持続期間,リスク因子
- 身体所見:心不全徴候,心雑音,甲状腺腫大,振戦
- 検査:TSH,K,Mg,心エコー
- 確認すべき疾患・要因:心房細動の原因や誘発因子として、以下の項目がないかを確認します。
- 心機能障害、肥大型心筋症、僧帽弁疾患、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、肥満症、睡眠時無呼吸症候群、アルコール多飲
Step 2:
- 安定していればレートコントロール 血行動態が安定していれば、慌てて洞調律に戻す必要はありません。心拍数を110回/分未満(安静時)を目標に下げます。
- 第一選択薬: β遮断薬(ビソプロロール、ランジオロール静注など)または非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(ベラパミル(ワソラン®)、ジルチアゼム)。
- 例:ワソラン®静注5mg 1A + 生理食塩液 18mL (計20mL)を、5分以上かけてゆっくり静注 そして、帰宅時にワソラン® 120 mg/日(1回40mgを3錠分3)を処方
- ランジオロール3Vを生理食塩水50mLに溶かす。1γで開始。
- なお、ベラパミル(ワソラン®)静注を要するほど緊急で徐拍化が必要なことはまれであり,行うとしても比較的速効性のあるベラパミル(ワソラン®)内服か,ランジオロール持続静注を選択したほうが安全だと思われます
- 注意点: 心機能が低下している(LVEF 40%以下)患者や心不全徴候がある患者には、Ca拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)は心抑制作用があるため避けます。その場合はβ遮断薬(少量から)やジギタリス(即効性はないが併用薬として)を選択します。
- 例:ビソプロロールは1.25~2.5mg/日程度から開始することが多いです(最大量は5mg/日)。ビソプロロールは経皮薬も存在するため(ビソノテープ),内服が困難な患者さんにも使用しやすいです
- 気管支喘息・COPDがある場合:
- β遮断薬は気管支を収縮させるリスクがあるため、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)が推奨されます。
- どうしてもβ遮断薬が必要な場合は、気管支への影響が少ない選択的β1遮断薬(ビソプロロールなど)を選びます

Step 3
発症48時間以内かどうかの確認
- 発症から48時間以上、または発症時期不明の場合
- 心房内に血栓ができている可能性があるため、原則としてERでの洞調律化(電気的・薬物的ともに)は行いません。
- まずはレートコントロールを行い、3週間以上の抗凝固療法を行ってから、または経食道心エコーで血栓がないことを確認してから除細動を行います。
- 発症から48時間以内であることが明らかな場合
- 血栓のリスクは低いため、早期の除細動を検討できますが、CHADS2スコアが高い場合などは慎重な判断が必要です。
Step 4:
- 帰宅とフォローアップ
- レートコントロールにより症状が落ち着けば、抗凝固療法(CHADS2スコア≧1点で推奨)を開始し、後日循環器内科外来での精査につなげます。
心房細動における抗凝固療法の選択
- 患者の背景因子を考慮して DOAC またはワルファリンを選択する.
- DOACはワルファリンに比較して出血リスクが少ないか,同等である.
- ただし,DOAC は妊娠中,授乳中,僧帽弁狭窄症・人工弁,高度腎機能障害・透析患者,抗リン脂質抗体症候群では使用しない.
- ワルファリンの場合,非弁膜症性心房細動ではPT-INR を 1.6〜2.6にコントロールする

各抗凝固薬の使用法と特徴

発作性心房細動であれば抗凝固療法は不要?洞調律に戻れば不要?
- 発作性心房細動であっても、また洞調律に戻ったとしても、抗凝固療法が不要とは言えません。
- 「発作性だから」「今は洞調律に戻ったから」大丈夫だと考えがちですが、これは間違いであり、非常に危険な誤解です
- 1. 洞調律に戻っても血栓はできる(心房スタニング)
- 心房細動が停止して洞調律に戻った直後、心電図上は正常に見えても、心房の筋肉は一時的に収縮力が低下した状態(気絶した状態)になります。これを心房スタニング(stunning)と呼びます。 この状態では心房内の血液がよどみやすく、洞調律に戻った後であっても血栓が形成されやすいことが知られています。そのため、「発作性心房細動でも抗凝固療法は必要」というのが結論です。
- 2. 抗凝固療法の適応は「発作の頻度」ではなく「脳梗塞のリスク」で決まる
- 抗凝固療法を行うかどうかは、心房細動が「持続性」or「発作性」ではなく、患者さんが持っている脳梗塞の危険因子(CHADS2スコアなど)によって決まります。
- CHADS2スコア(心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳梗塞の既往)が1点以上であれば、発作性かどうかにかかわらず、抗凝固療法(DOACやワルファリン)の導入が原則です。
- 発作性心房細動の患者さんであっても、これらのリスク因子を持っている場合、脳梗塞を起こす危険性は十分に高いため、抗凝固療法が必要です。
- 3. 発作性心房細動のリスクは決して低くない
- かつては発作性心房細動は持続性に比べてリスクが低いと考えられていたこともありましたが、現在では発作性であっても脳梗塞のリスクは無視できないとされています。
- ガイドラインでは、持続性・永続性心房細動がより高リスクである可能性は示唆されていますが、だからといって発作性心房細動が「治療不要」なほど低リスクであるとはされていません
参考文献
- 2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン
- UpToDate -Atrial fibrillation: Overview of management- (2026/01/29閲覧)
- 循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。上原拓樹 著
- ジェネラリストのための内科外来マニュアル 第3版 金城 光代(他編集)



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