CRP陰性の発熱

内科

発熱しているのにCRPが上がっていないケース、臨床現場ではちょくちょく出くわしませんか。「おや?」と思う瞬間ですが、以下の6つの病態に当てはめて整理すると、診断の推論がぐっとスムーズになります。

日々の診療で役立つ視点として、ぜひ参考にしてみてください。

そもそもCRPはなぜ上昇するか

CRPの上昇機序を理解すると今後の内容が理解しやすくなります。

  • 1.炎症の引き金(刺激の発生) 細菌などの病原微生物の侵入や、組織の損傷などが発生します。
  • 2. 免疫細胞の活性化とサイトカインの放出 原因となる微生物や組織の損傷に反応して、単球やマクロファージといった免疫細胞が活性化します。活性化したこれらの細胞は、TNF-αやIL-1βなどの「炎症性サイトカイン」を産生・放出します。
  • 3. IL-6の産生 放出されたTNF-αやIL-1βなどのサイトカインが肝臓のクッパー細胞などに作用し、IL-6の産生を誘導します。このIL-6が、CRP産生を促す最も主要な誘導因子として働きます。
  • 4. 肝細胞におけるCRPの合成と分泌 IL-6(およびIL-1βやTNF-αなど)の刺激を受けた肝細胞が、CRPを合成し、血液中に分泌します。

このように、感染や組織損傷という刺激から始まり、免疫細胞の活性化とサイトカインのリレー(特にIL-6を介したシグナル伝達)を経て、最終的に肝臓でCRPが作られることで、血中のCRP値が上昇します

CRP陰性の発熱を呈する疾患

  • 6つの病態を考えます。
    • ① 炎症の超急性期
    • ② 炎症が脳に限局しているとき
    • ③ 肝硬変
    • ④ CRPを介さない経路で炎症が生じるとき
    • ⑤ 炎症を介さない発熱
    • ⑥ CRPを抑制する薬剤を使用している
発熱の機序機序の理由・特徴想起すべき疾患・病態
① 炎症の超急性期CRP上昇には炎症開始からタイムラグ(約6〜8時間で上昇開始、48〜72時間でピーク)があるため初期は上昇しない発症早期(24時間以内など)の各種細菌感染症結核(3日以上経過しても上昇しないことがある)
② 炎症が脳に限局しているとき頭痛などを伴う場合でも脳や髄膜に炎症がとどまっているとCRPが上昇しづらいウイルス性髄膜炎リステリア髄膜炎結核性髄膜炎
③ 肝硬変CRPの産生臓器である肝臓の機能が著しく低下しているため炎症があっても産生されない肝硬変
④ CRPを介さない経路で炎症が生じるとき炎症はあるがCRP産生経路(IL-6など)が抑制されたり別の免疫応答が主体となるため【自己免疫疾患】
SLEIgG4関連疾患 
【ウイルス感染症】
パルボウイルス感染症、腎症性出血熱(HFRS)など 
【リンパ節感染】
猫ひっかき病 
【腫瘍】
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫など 
【特定の薬剤熱】
薬剤性無菌性髄膜炎
⑤ 炎症を介さない発熱炎症性サイトカインを介さず体温調節中枢の異常(発熱)や環境・放熱障害(高体温)によるため【内分泌・代謝疾患】
副腎不全(アジソン病)甲状腺クリーゼ
【中枢神経疾患】
脳出血脳外傷脳腫瘍など 
【精神・心理的要因】
心因性発熱 
【環境・物理的要因】
熱中症 
【発汗障害・異常産熱】
無汗症(Fabry病、Sjögren症候群など)、悪性高熱症神経悪性症候群
⑥ CRPを抑制する薬剤薬剤がCRP産生経路を遮断したり炎症反応全体を抑制するため。【原因となる主な薬剤】 
IL-6受容体阻害薬(トシリズマブなど) 
特定の脂質異常症治療薬(スタチン、ベムペド酸、エゼチミブ、オメガ3脂肪酸など) 
・高用量のステロイドNSAIDs

① 炎症の超急性期

  • CRP産生のタイムラグ(Window Period)
    • CRPは、細菌などの外因性刺激や組織損傷などの内因性刺激により、マクロファージなどが炎症性サイトカイン(特にIL-6など)を放出し、それが肝細胞に作用することで合成されます。
    • しかし、この合成プロセスには時間がかかり、炎症刺激の開始から血中濃度が上昇し始めるまでに約4〜8時間かかります。さらに、ピークに達するまでには48時間から72時間を要します。このため、発熱などの臨床症状が極めて重篤であっても、発症直後の超急性期においてはCRPが産生されきっておらず、低値や陰性を示すことがあります。
    • よって発熱から1日(24時間)以内の経過であれば、CRPが正常範囲内(陰性)であっても「炎症がない」「細菌感染ではない」と否定することは全くできません。この段階では、検査のタイミングが早すぎることがCRP上昇を認めない最も一般的な原因です。したがって、菌血症などの重篤な感染症を見逃さないために、CRPの値にかかわらず血液培養の採取を行うことが必須とされます。また、このような超急性期においては、数時間後にCRPを再検査することや、単位時間あたりの上昇率である「CRP速度(CRPv)」の算出が推奨されています。
  • 3日ルール」
    • 発熱の開始から3日(72時間)以上が経過してもCRPが陰性のままであれば、肝臓がCRPを合成・放出するのに十分な時間が経っているため、典型的な細菌感染症である可能性は極めて低いと考えられます。
    • この場合は、ウイルス感染、自己免疫疾患、内分泌異常、心因性発熱などを疑う必要があります。
  • 重要な例外疾患(結核)
    • 上記の「3日ルール」の例外として、結核(特に結核性髄膜炎など)は、細菌感染症でありながら発熱から3日以上経過してもCRPが顕著に上昇しないことがしばしばあります。
    • 超急性期を過ぎてもCRPが上がらない場合でも、結核が潜んでいる可能性については慎重に考慮する必要があります。

② 炎症が脳に限局しているとき

  • 繰り返しますがCRPは主に肝臓で産生される全身性の炎症マーカーです。しかし、脳や髄膜といった局所に炎症がとどまっている場合、炎症性サイトカインなどの刺激が肝臓に十分に伝わらず、強い発熱や頭痛、悪心といった症状が伴っていても、CRPが上昇しづらい傾向があります。そのため、「発熱+頭痛+CRP陰性」という組み合わせを見た場合は、脳や髄膜に限局した炎症を強く疑う必要があります。

■想起すべき代表的な疾患・病態

  • ウイルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎):
    • 発熱、頭痛、悪心などを呈しながらも意識が清明であり、かつCRPが陰性である場合、細菌性よりもウイルス性髄膜炎が強く示唆されます。例えば、症状が4日間持続していてもCRPが陰性のまま(一般的な細菌感染症の「3日ルール」に合致しない)であるケースが多く報告されています。
  • 以下は各髄膜炎(細菌性髄膜炎、結核性髄膜炎(粟粒性・非粟粒性)、ウイルス性)、おけるCRP値を計測した論文です。
    • CRPの中央値はウイルス性髄膜炎が1.0 mg/dLと最も低く、一般的な細菌性髄膜炎が26.0 mg/dLと最も高い値を示しました
de et al. Arch Dis Child. 1984 PMCID: PMC1628936 より引用
  • 一部の細菌性髄膜炎(結核性・リステリア):
    • 典型的な細菌性髄膜炎ではCRPが上昇することが多いですが、結核性髄膜炎(上記Figure1)やリステリア髄膜炎では、細菌感染であるにもかかわらずCRPが低値で推移することが多いため、CRPが低いからといって細菌性髄膜炎を完全に除外することはできません。
      • 以下の論文は、成人のリステリア髄膜炎が他の細菌性髄膜炎と比較して免疫抑制療法を受けている患者に特異的に多く発症し、CRPや白血球数などの炎症マーカーが有意に低値を示すことを明らかにした後ろ向き臨床研究です(Neuroendocrinol Lett 2019; 40(2):79–84)。
Neuroendocrinol Lett 2019; 40(2):79–84より引用
  • 薬剤性無菌性髄膜炎: NSAIDsやβ-ラクタム系抗生物質などの副作用によって生じる薬剤性の髄膜炎でも、非常に高い発熱や項部硬直を呈する一方で、CRPは極めて低値(正常範囲)にとどまることが特徴的です。

③ 肝硬変

  • 肝機能の低下による合成障害
    • 肝硬変の患者では、肝臓の組織が線維化し、タンパク質を合成するための肝細胞の機能が著しく低下しています。
    • そのため、体内で重篤な細菌感染症などが発生して強い炎症が起きても、産生工場である肝臓が機能不全に陥っているため、サイトカインの刺激に応答してCRPを作り出すことができません。
  • サイトカイン(IL-6)との乖離
    • 実際の臨床データにおいて、敗血症によるショック状態に陥った肝硬変患者は、肝硬変を持たない敗血症患者と比較して、血中のIL-6濃度がむしろ高くなることが報告されています(Serum Cytokine Levels in Human Septic ShockPinsky, Michael R. et al.CHEST, Volume 103, Issue 2, 565 – 575)。
    • つまり、体内には「CRPを作れ」という強力な炎症シグナル(IL-6など)が大量に出ているにもかかわらず、肝臓がそれに応答できないためにCRP値が上がらないという、病態と検査値の大きな乖離が生じています。
    • 臨床上の重要な注意点 したがって、肝硬変の患者において「高熱があるがCRPが低い」という検査結果を見た場合、「細菌感染症ではない」「重症ではない」と判断するのは危険です。肝機能の低下そのものがCRPの上昇をマスクしてしまうため、CRPに頼ることなく、重篤な感染症や多臓器不全の合併を慎重に疑って診療にあたる必要があります。

④ CRPを介さない経路で炎症が生じるとき

■通常、CRPはIL-6などの炎症性サイトカインの刺激を受けて肝臓で作られますが、このIL-6による古典的なシグナル伝達が抑制されたり、全く別の免疫応答や組織反応が主体となる場合、強い発熱や炎症が存在してもCRPが上昇しない(あるいは低値にとどまる)現象が生じます。代表的な疾患とメカニズムは以下の通りです。

  • 自己免疫疾患
    • 自己免疫疾患の中には、IL-6を介した古典的な急性炎症とは異なるメカニズムで病態が進行するため、CRPが上昇しないものがあります。
    • 全身性エリテマトーデス(SLE)
      • SLE患者の体内では過剰なIFN-αとIL-6が協調し、細胞表面にある「IL-6受容体(CD126)」を根元から切り落とす(シェディング)現象を誘発します。
      • 血中に放出された可溶性IL-6受容体(sIL-6R)は、IL-6と結合してバッファーとして働き、IL-6を中和してしまいます。その結果、疾患が活発化しても肝臓での効率的なCRP産生が抑制されます。
    • IgG4関連疾患(IgG4-RD)
      • IL-6などの急激なサイトカイン放出を伴う古典的な炎症経路ではなく、特異なT細胞(CD4+やCD8+)やIgG4陽性形質細胞の緩徐な組織浸潤と「線維化」という別の免疫応答が主体となる疾患です。
      • 病態には大きく分けて涙腺・唾液腺腫脹などを呈する「増殖性タイプ」と、後腹膜線維症などを呈する「線維性タイプ」がありますが、どちらのタイプであってもCRP産生経路が主役ではないため、全身に病変が広がっていてもCRPは低値(多くの場合は1.0 mg/dL未満)にとどまります(※例外として活動性の大動脈炎を合併したケースでのみCRPが上昇することがあります)。
  • ウイルス感染症(インターフェロンによる直接抑制)
    • ウイルス感染症の多くは、40℃を超えるような高熱が出てもCRPの顕著な上昇を伴いません。
    • ウイルスが侵入すると、宿主の免疫系はIFN-αを大量に産生します。このIFN-αには、IL-6が肝細胞にCRPを作るよう促すシグナル(遺伝子転写)を直接的に抑制する強い作用があります
    • 代表的疾患: ウイルス性髄膜炎、パルボウイルス感染症、腎症性出血熱(HFRS)など
  • リンパ節感染
    • リンパ節感染: 猫ひっかき病のような限局的なリンパ節感染でも、全身的なCRP上昇を伴わないことがしばしばあります。
  • 腫瘍熱
    • 血液腫瘍(腫瘍熱): 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AILT)などでは、全身のリンパ節腫脹や発熱を伴いながらもCRPが上昇しない症例が報告されています。
  • 特定の薬剤熱
    • 薬剤によって引き起こされる発熱(薬剤熱)のうち、特定のタイプではCRPが上昇しません。
    • 薬剤性無菌性髄膜炎: β-ラクタム系抗生物質や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などによる副作用で生じる薬剤性無菌性髄膜炎では、非常に高い発熱や項部硬直を呈するにもかかわらず、CRPは低値にとどまるのが特徴です。

⑤ 炎症を介さない発熱

これらの病態は、細菌感染などに伴うIL-6の放出という経路を介さずに体温が上昇するため、重篤な状態であってもCRPが陰性または低値にとどまるのが特徴です。

  • 内分泌・代謝疾患
    • 特定のホルモン欠乏や過剰による代謝異常が、体温調節の不全や過剰な熱産生を引き起こします。
    • 副腎不全(アジソン病)・副腎クリーゼ
      • コルチゾールなどの副腎皮質ホルモンが枯渇することで生じます。
      • 発熱、低血圧、悪心・嘔吐などを呈し、敗血症などの重症感染症に臨床像が酷似します。この際の発熱の主因は、主に脱水に伴う体温調節機能の不全であると考えられています。
    • 甲状腺クリーゼ
      • 甲状腺ホルモンの過剰分泌により、全身の高代謝状態が引き起こされ、産熱が異常に亢進します。
  • 中枢神経疾患
    • 脳出血、脳外傷、脳腫瘍など、脳に対する直接的なダメージによって引き起こされる発熱です。
    • 脳の視床下部や脳幹には「体温調節中枢」が存在します。これらの部位が物理的な損傷(出血や腫瘍による圧迫など)を受けると、体温のセットポイントが直接的に狂ってしまい、異常な発熱(中枢性発熱)を引き起こします。
    • 発症早期(入院48時間以内など)から激しい体温の変動を来しますが、免疫細胞からのサイトカインを介した反応ではないため、CRPやプロカルシトニンは低値のままです。また、解熱剤や抗菌薬への反応性が乏しく、物理的な冷却による管理が必要となります。
  • 精神・心理的要因
    • 心因性発熱(機能性発熱)
      • 精神的・社会的なストレスや負担が引き金となり、脳の視床下部(視索前野や背内側核など)が刺激を受けることで生じます。このストレス刺激が交感神経系を活性化させ、褐色脂肪組織での熱産生増加や皮膚血管の収縮(放熱の抑制)を引き起こし、体温のセットポイントを上昇させます。
      • 若年者に多く、39〜41℃の高熱が出る場合もあれば、微熱が長期にわたって続く場合もあります。
      • 感染や前炎症性サイトカインによる機序を全く介していないため、CRPや赤沈(ESR)といった炎症指標は一貫して陰性(測定感度未満)となります。また、一般的な解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンやNSAIDsなど)はプロスタグランジンを抑える薬ですが、心因性発熱はこの経路を使っていないため効果がありません。
  • 環境・物理的要因
    • 熱中症
      • 高温環境への曝露(古典的熱中症)や、激しい筋肉の運動による過剰な産熱(労作性熱中症)という物理的要因によって、体温が40℃を超えるような超高熱(高体温)を呈します。
      • 初期段階ではサイトカイン誘導性の発熱ではないため、意識障害を伴うほどの重症であってもCRPは陰性または極めて低値(2.0 mg/L前後など)にとどまります。ただし、重症化して腸管バリアが破綻するとプロカルシトニンが急上昇したり、横紋筋融解症などの組織破壊(無菌性炎症)が起きることで、時間の経過とともにCRPが遅れて微増することがあります。
  • 発汗障害・異常産熱
    • 体内に熱がこもる(放熱できない)、あるいは筋肉などが異常な熱を作り出すことによる「高体温」です。
    • 無汗症(Fabry病、Sjögren症候群など)
      • 機序と特徴: 先天的な代謝異常(Fabry病など)や自己免疫疾患(Sjögren症候群など)、あるいは薬剤の副作用などにより、汗腺の機能が低下または消失する病態です。
      • ヒトは発汗による気化熱で体温を下げるため、汗がかけないと体内に熱がこもり、環境温度が高い時や運動時に容易に高体温を来します。
      • 放熱障害による物理的な体温上昇であるため、CRPは上昇しません。
    • 悪性高熱症、神経悪性症候群
      • 機序と特徴: 悪性高熱症は全身麻酔薬などをきっかけに、神経悪性症候群は抗精神病薬などをきっかけに発症します。いずれも骨格筋の異常で激しい収縮が起きたり、脳内のドパミン系の異常が生じたりすることで、筋肉による凄まじい熱産生が起こります。
      • これらも感染や免疫反応による発熱ではないため、発症初期の段階ではCRPは陰性を示します

⑥ CRPを抑制する薬剤

以下の薬剤(特にIL-6阻害薬や高用量のステロイド)を服用している患者では、「CRPが低いからといって、重篤な感染症や炎症がないとは限らない」という点に極めて強い注意が必要です。CRPの上昇がマスクされてしまうため、発熱、全身倦怠感、血圧の低下など、他の微細なサインを見逃さないようにすることが感染症の発見において重要となります。

  • IL-6阻害薬(トシリズマブ、サリルマブなど) これが最も直接的かつ強力にCRPの上昇を妨げる薬剤です。CRPは、主に炎症性サイトカインであるIL-6の刺激を受けることで肝臓において合成されます。そのため、関節リウマチなどの治療に用いられるIL-6受容体阻害薬(トシリズマブなど)を使用していると、CRPの産生シグナルそのものが遮断されます。 その結果、患者が重篤な細菌感染症などを起こして強い炎症状態にあっても、CRPは上昇せず、完全に正常値に抑え込まれてしまうことがよくあります。
  • 炎免疫抑制薬や抗炎症薬
    • サイトカインの産生や炎症反応全体を抑制することにより、間接的にCRPや赤沈(ESR)といった急性期反応物質の上昇を抑えたり、低下させたりする薬剤もあります。
    • 高用量の糖質コルチコイド(ステロイド薬)
    • 高用量のサリチル酸系製剤
    • NSAIDs
    • スタチン

スタチンはなぜCRPを抑制する?

私自身、脂質異常症の治療薬がCRPを低下させる作用があることを知りませんでした。以下の論文をご紹介します。

Xie S, Galimberti F, Olmastroni E, Luscher TF, Carugo S, Catapano AL, Casula M; META-LIPID Group. Effect of lipid-lowering therapies on C-reactive protein levels: a comprehensive meta-analysis of randomized controlled trials. Cardiovasc Res. 2024 Mar 30;120(4):333-344. doi: 10.1093/cvr/cvae034. PMID: 38373008; PMCID: PMC10981526.

本論文の概要をまとめました。

Xie et al. Cardiovasc Res. 2024より引用
  • CRP低下の程度
    • プラセボを投与されたグループと比較して、スタチンはCRP濃度を絶対値で平均 -0.65 mg/L 低下させます(ベースライン値から約17.31%の減少に相当します)。
    • また、このCRP低下効果は、治療前のベースラインCRP値が高い(3 mg/L以上)患者群において、より強く現れることが分かっています。
  • コレステロール低下作用とは「独立」している
    • 非常に重要な点として、スタチンによるCRPの低下効果は、本来の薬効である「LDLコレステロールの低下幅」とは相関していません。
    • つまり、コレステロールが下がった結果として炎症が治まったのではなく、スタチン自体が独立した抗炎症効果を発揮していると考えられています。
  • スタチンがCRPを低下させるメカニズム
    • スタチンにはコレステロール低下以外の多面的作用があり、血管壁などに対して直接的な保護作用を持ちます。
    • 具体的には以下のようなメカニズムでCRPの産生を抑えることが示唆されています。
      • 単球における炎症性サイトカインの発現を減少させ、その結果としてCRP遺伝子の転写を抑制する。
      • 肝細胞において、IL-6によって誘導されるシグナル伝達(STAT3のリン酸化)を減弱させ、直接的にCRPの遺伝子発現を減少させる。
      • Rhoキナーゼ経路の阻害や、PPARαという受容体の直接的な活性化を通じて、コレステロール低下とは無関係にCRP遺伝子の発現を抑制する。

このように、スタチン製剤は単なる脂質低下薬としてだけでなく、炎症性サイトカインや肝臓でのCRP合成経路に直接介入することで、強力にCRPを低下させる作用を持っています。「炎症反応全体を抑える薬剤」の一つとしてスタチンが含まれるのは、このようなメカニズムが存在するためです。

参考文献

  • Xie S, Galimberti F, Olmastroni E, Luscher TF, Carugo S, Catapano AL, Casula M; META-LIPID Group. Effect of lipid-lowering therapies on C-reactive protein levels: a comprehensive meta-analysis of randomized controlled trials. Cardiovasc Res. 2024 Mar 30;120(4):333-344. doi: 10.1093/cvr/cvae034. PMID: 38373008; PMCID: PMC10981526.
  • de Beer FC, Kirsten GF, Gie RP, Beyers N, Strachan AF. Value of C reactive protein measurement in tuberculous, bacterial, and viral meningitis. Arch Dis Child. 1984 Jul;59(7):653-6. doi: 10.1136/adc.59.7.653. PMID: 6465935; PMCID: PMC1628936.
  • Paciorek M, Bienkowski C, Bednarska A, Kowalczyk M, Krogulec D, Makowiecki M, Bursa D, Pula J, Raczynska J, Porowski D, Skrzat-Klapaczynska A, Zielenkiewicz M, Radkowski M, Laskus T, Horban A. The clinical course and outcome of Listeria monocytogenes meningitis: A retrospective single center study. Neuro Endocrinol Lett. 2019 Oct;40(2):79-84. PMID: 31785214.
  • Pinsky MR, Vincent JL, Deviere J, Alegre M, Kahn RJ, Dupont E. Serum cytokine levels in human septic shock. Relation to multiple-system organ failure and mortality. Chest. 1993 Feb;103(2):565-75. doi: 10.1378/chest.103.2.565. PMID: 8432155.
  • Xie S, Galimberti F, Olmastroni E, Luscher TF, Carugo S, Catapano AL, Casula M; META-LIPID Group. Effect of lipid-lowering therapies on C-reactive protein levels: a comprehensive meta-analysis of randomized controlled trials. Cardiovasc Res. 2024 Mar 30;120(4):333-344. doi: 10.1093/cvr/cvae034. PMID: 38373008; PMCID: PMC10981526.
  • Acute phase reactants – UpToDate(2026/02/27閲覧)
  • 佐田 竜一「CRP 陰性なのに連日 39〜40℃の発熱,頭痛が 3 週間持続する 17 歳男性」medicina Vol.56 No.11 2019-10

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