ポイント
- 頸静脈怒張を観察することで、右心不全、右心への還流障害をきたす疾患を想起することができる
- 外頸静脈をみることで、瞬時にemergencyな病態の把握が可能となることがある
- 臥位で外頸静脈が確認できなければ、hypovolemicな状態を疑う
- 外頸静脈の呼吸性変動がなく怒張している場合、心タンポナーデなどの中心静脈圧(CVP)の著名な上昇を疑う
- 右内頸静脈をみることで、CVPの正確な評価が可能
外頸静脈・内頸静脈の解剖


頸静脈は体表からどのようにみえるか
- 外頸静脈は体表から直視することができます
- 一方、右の内頸静脈は胸鎖乳突筋の裏側に位置するため、胸鎖乳突筋の動きをみて評価する必要があります。
- そのため、評価にはある程度の時間がかかります。
- 内頸静脈の拍動は二峰性です

内頸静脈のみかた
ペンライトを使用するとみやすくなる
- 上述のように、右内頸静脈の上には胸鎖乳突筋が位置するため直接みることはできません
- ペンライトを使用すると、評価しやすくなります
- 右内頸静脈に対して接線方向から光を当てることで,皮膚の微動が見やすくなります
- 患者さんの右乳頭近辺から頸部を見上げる(アッパーカット技法)ことで,より皮膚の微動が見やすくなります.

右内頸静脈からどのようにCVPを評価するか
- 内頸静脈の拍動の最高点の高さを測定することで,中心静脈圧(≒右房圧)を推定することができる
- 右房の中心から胸骨角までは体位に関係なく常に約5cmである
- したがって、測定した高さに5cmを加えたものが中心静脈圧の測定値となる
- つまり、胸骨角から10cmの高さまで頸静脈拍動を認めるということは,中心静脈圧は約15cmH2Oと推定できます
- ちなみに、中心静脈圧の基準値は5〜10cmH2Oです

内頸静脈と頸動脈のちがい
- 内頸静脈は頸動脈とは異なり、二峰性を呈します
- また触診はできません。呼吸や体位によっても変化します

まとめ:頚静脈・内頚静脈どちらも長所短所がある
- 外頸静脈は直視しやすいので、瞬時にemergencyな病態の把握が可能です
- 右内頸静脈をみることで,刻一刻と変化する体液量を、ベッドサイドで1日に何度も評価することが可能です

参考文献
以下の文献を参考にさせていただき、まとめました。
- レジデントノート 2016年5月号 Vol.18 No.3 身体診察ってこういうことだったのか! ~教科書だけではわからない「手あて」の医療がみえてくる! 平島 修 (編集)
- 診察ができる vol.1 身体診察(第1版)
- レジデントノート Vol.22 No.16
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