咽頭痛

内科

「のどが痛い」と訴える患者へのアプローチ

  • 「のどが痛い」といっても、飲み込んだときに痛いのか?それとも関係なく痛いのか?によって鑑別が大きく変わります。
  • killer sore throatを想起させるような症状があるのか?咽頭痛以外にどのような症状があるのか?丁寧な問診・身体新設によってある程度疾患が絞られてきます。
  • 各疾患についてはまた別記事にしようと思います。

咽頭のみかた

咽頭の診察は、実は問診中の発声や様子の観察からすでに始まっています。

1. 口腔内を観察する前のチェック

  • 嚥下したときに痛いのか?それとも嚥下時ではない痛みか?
    • 嚥下時痛でない場合は以下の疾患を疑います。
      • 急性冠症候群(心筋梗塞・狭心症):胸部症状が乏しく、咽頭の症状(放散痛や顎・頸部の痛みなど)のみで受診するケースがあります。
      • 大動脈解離:突然の発症(sudden onset)とともに、咽頭痛として自覚されることがあります。
      • 菊池病:若年女性で頸部リンパ節の腫脹・圧痛を伴います。胸鎖乳突筋に隠れて腫脹自体は目立たないこともあります。
      • 亜急性甲状腺炎:先行する上気道感染の数週間後に発症することが多く、前頸部痛や甲状腺の腫大・硬結を伴います。痛みが喉、顎、耳などに広がるため咽頭痛として自覚されますが、嚥下時痛を伴わない咽頭痛を診た場合は、必ず甲状腺の圧痛の有無を確認する必要があります。
  • 声や嚥下の状態:咽頭痛がひどくて唾液が飲み込めずにティッシュなどで拭き取っていないか、こもった声や嗄声、stridorの有無に注意します。
  • 開口障害の確認:自分の指が縦に3本入る「3横指程度」の開口ができるか、を確認します。
  • シックコンタクトの聴取:周囲の流行や、場合によっては性行動についての聴取も行います(当然デリケートな内容なので慎重に聴取します)。

2. 診察の体位とコツ

  • 患者のやや側面に立ち、少し上方を向いてもらいます。
  • 舌圧子を使い、舌を下方によけて観察します。
  • 一般的には「あ~」と発声してもらいますが、呼気よりも深吸気(息を深く吸い込んでもらう)のほうが診やすく、舌圧子も不要なことが多い気がします(私見)。これは飛沫・感染予防の観点からも有用な方法です。

3. 咽頭における4つの観察ポイント

咽頭痛とはいえ、観察の際は、以下の4つの部位を見落としがないように評価します。

  • ① 口腔内の観察 口唇、歯列、歯肉、舌裏、口腔底などを観察します。有痛性や腫瘤の有無を確認するために、触診を行うことも有効です。
  • ② 咽頭後壁の観察 後壁の発赤や腫脹、後鼻漏(鼻水がのどに落ちていないか)を確認します。ウイルス性咽頭炎ではリンパ濾胞の腫脹を認めます。特にインフルエンザでは、境界がはっきりした鮮紅色の濾胞(イクラ様濾胞)がみられるのが特徴です。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t253/201512/544970.html より引用
  • ③ 扁桃の観察 扁桃の発赤、腫脹、白苔の有無を確認します。これらがあれば、溶連菌感染症、伝染性単核球症、アデノウイルス、HIV感染症などが鑑別に挙がります。
  • ④ 口蓋弓・軟口蓋の観察 扁桃周囲膿瘍の有無や、口蓋垂の形、左右への偏位がないかを確認します。軟口蓋の点状紅斑・出血斑は、溶連菌感染症に対して特異度が高い(95%)所見とされています。

咽頭痛の原因

  • 以下の表のように、咽頭痛をきたすような疾患は多岐にわたります。個人的にこの表は、「自分が想起した疾患以外に見落としている疾患はないか」をチェックするために使用しています。
  • 当然すべて暗記していません。
分類原因となる微生物・疾患・病態
ウイルスライノウイルス、コロナウイルス(SARS-CoV-2などの新型コロナウイルスを含む)、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス1型・2型、パラインフルエンザウイルス、エンテロウイルス、EBウイルス(伝染性単核球症)、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス
細菌A群溶連菌、C群・G群溶連菌、嫌気性菌(複数菌が関与)
フソバクテリウム属(Fusobacterium necrophorumなど)
淋菌
ジフテリア菌
Arcanobacterium haemolyticum
Yersinia pestis
Francisella tularensis
梅毒(Treponema pallidum)
Mycoplasma pneumoniae
クラミジア(Chlamydia psittaci、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia trachomatis)
その他【外的要因・アレルギー】
外傷、熱傷、異物、アナフィラキシー、喫煙などの外的刺激
【咽頭外の要因・全身性疾患など】
急性心筋梗塞(ACS)による放散痛、大動脈解離・胸部大動脈瘤、亜急性甲状腺炎、遷延性咳嗽による咽頭痛、鼻炎・後鼻漏、胃食道逆流症、咽喉頭異常感症(神経症)、成人Still病、特発性縦隔気腫、扁桃悪性リンパ腫、舌咽神経痛、茎状突起過長症(Eagle症候群)、石灰沈着性頸長筋炎
【その他感染症】
トキソプラズマ症

killer throat painを見逃さないための危険なサインは?

致死的な経過をたどりうる「killer sore throat(および深頸部感染症や上気道閉塞)」を見逃さないためのred flag signとして、以下の所見に注意する必要があります。

各疾患についてはまた別の記事にしようと思います。

【声や嚥下に関するサイン】

  • くぐもった声(hot potato voice)や、嗄声(声のかすれ)がみられる。
  • 嚥下時痛が強すぎてつばが飲み込めない、あるいは流涎(よだれが垂れる、またはティッシュで頻回に拭き取っている)がある。

【呼吸に関するサイン(上気道狭窄・閉塞の疑い)】

  • 呼吸困難(呼吸促迫や陥没呼吸など)がある。
  • stridor(吸気性喘鳴)が聴取される。
  • 呼吸を少しでも楽にするため、異常な体位をとっている(座って両手を大腿や膝に置き前傾する三脚位:tripod positionや、顎を突き出して匂いを嗅ぐようにするsniffing position)。

【局所の炎症や波及を示すサイン】

  • 開口障害(口が十分に開けられない、縦隔炎の前段階である側咽頭隙への炎症波及のサイン)がある。
  • 重度の片側性の咽頭痛や、口蓋垂の左右への偏位、咽頭壁や軟口蓋・口腔底の膨隆がみられる(扁桃周囲膿瘍などを疑う)。
  • 頸部の痛みや腫脹、捻髪音(皮下気腫)、項部硬直を伴う。
  • 咽頭への穿通性外傷(魚の骨が刺さるなど)の先行エピソードがある。

【全身状態に関するサイン】

  • 不穏状態や、全身状態が著しく不良(Toxic appearance:敗血症に至っている場合など)である。
  • 悪寒戦慄を伴う発熱がある。

単なる咽頭痛や咽頭炎だけで呼吸困難が出現することは通常少ないため、これらのサイン(特に呼吸困難、流涎、異常な体位など)が1つでも認められる場合は、気道閉塞や敗血症などの緊急事態を強く疑う必要があります。

このようなケースでは、無理に舌圧子で観察しようとすると窒息を誘発する恐れもあるため、緊急の気道確保(外科的気道確保を含む)の準備や、耳鼻咽喉科への紹介を考慮します。

参考文献

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