血液培養

内科
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  • 血液培養は、菌血症や敗血症を診断するためのゴールドスタンダードです。 通常、健康な人の血液は無菌ですが、感染症により細菌が血液内に侵入すると、全身に菌が回り、多臓器不全やショック状態(敗血症性ショック)を引き起こし、致死的となる可能性があります。 血液培養検査の主な目的は以下の2点です。
    • 起因菌の同定: 原因となっている細菌や真菌の種類を特定する
    • 薬剤感受性の決定: その菌にどの抗菌薬が効くかを調べ、最適な治療薬を選択する
  • 自施設においても、病棟間や医師間、医療スタッフ間によってもやり方が異なり、「正しいやり方は何なのか」改めて調べなおしまとめました。

血液培養を行うタイミング

  • 理論上の最適タイミングは「悪寒戦慄の直後」または「発熱の直前」ですが、これを予測するのは困難です。 実際の臨床では、発熱や悪寒を検知した時点で速やかに採取するのが一般的です。過去の研究では、発熱のピークと血液培養の陽性率に明確な関連はないとも報告されています。 最も重要なのは、「抗菌薬を投与する前」に採取することです。抗菌薬投与後では感度が31%から19%に低下するというデータがあります。
  • なお、補足ですが、Shapiroの血液培養実施基準(Shapiro Rule)という、救急外来において菌血症の見逃しを防ぎつつ、不要な血液培養を削減するための予測ルールが存在します。

消毒方法と皮膚の準備

血液培養における最大の課題はコンタミネーションの防止です。適切な消毒により、皮膚常在菌の混入を防ぐ必要があります。

  • 消毒薬の選択:
    0.5-1%クロルヘキシジングルコン酸塩含有アルコール(クロルヘキシジンアルコール)、70%アルコール、10%ポビドンヨードのいずれも使用可能です。適切な手技で行えば、これらの消毒薬の間でコンタミネーションの割合に差はないと報告されています 。
    • クロルヘキシジンアルコール: 即効性と持続性がありますが、コストが高く、2か月未満の新生児には使用できません。
    • ポビドンヨード: 効果発揮まで時間がかかります(乾燥まで待つ必要があります)。
    • アルコール: 即効性はありますが、持続性がありません。
  • 消毒の手順:
    1. 汚れの除去: まず消毒用アルコール綿で採血部位とその周囲を拭き、汚れを落とします。綿に汚れが付着しなくなるまで繰り返します。
    2. 本消毒: 選択した消毒薬で採血部位とその周囲を消毒します。
    3. 乾燥(重要): ポビドンヨードでは2分間、それ以外では30秒待って、消毒薬を乾燥させてから採血します。(消毒薬をつけてすぐに採血する方がいますが、乾燥させて初めて滅菌されるので、しっかり乾燥させます)
    4. ボトルの消毒: ボトルのゴム栓も汚染源となり得ます。プラスチックキャップを外した後、ゴム栓を消毒用アルコール綿で消毒し、乾かしてから血液を注入します。

2. 採血手順(部位・順序・血液量)

  • 採血部位:
    • 原則として静脈から採取します。動脈血でも感度は変わりません。
    • 鼠径部は汚染リスクが高いため避けます
    • また、カテーテル(AラインやCVC)からの採血は原則としてコンタミネーションのリスクがあるため推奨されませんが、CVC挿入時の採血は許容されます(ガイドワイヤーを通したルーメンからの採血は避けます)。
    • 改めて調べ直すと、Aラインからの血液培養は静脈穿刺とコンタミネーション率は変わらなかったとのことです⇢
      • Aラインからの血液培養は静脈穿刺の代替となり得るか?CHEST 2023; Nakayama et al.
      • 結論: 血管確保困難なICU重症患者において、Aライン採血は静脈穿刺の「許容可能な代替手段」である。
      • 根拠(n=590 ICU患者):
        • コンタミネーション率: Aライン 0.3% vs 静脈穿刺 0.7%
        • 結果: 統計学的な非劣性が証明された(感度にも有意差なし)。
      • 注意点: ハブの消毒など、適切な無菌操作の徹底が必須条件である。
    • カテーテル関連血流感染症(CRBSI)を疑う場合は、カテーテルと末梢静脈の両方から採取します。末梢静脈からの採血が困難な場合、異なる2つ以上のカテーテルルーメンから、合計2セット以上の血液培養を提出します。
  • セット数と血液量
    • 成人では1セットあたり20mL(好気ボトル10mL+嫌気ボトル10mL)が基本です。これを異なる部位から2セット(合計40mL)採取することが推奨されます。血液量は感度を左右する最も重要な因子です。
      • ⇢近年、単一部位での採血も提唱されているようです。こちらの記事にまとめました。
    • なお、採血量を20⇢40⇢60mLと増やすごとに、感度はそれぞれ70-73%、82-90%、92-98%と上昇するようです。
  • ボトルの注入順序(非常に重要):
    • 使用する器具によって、好気・嫌気ボトルの注入順序が逆転するため注意が必要です。
      • シリンジ採血の場合: 嫌気ボトル → 好気ボトルの順
        (シリンジ内の空気が最後に好気ボトルに入るようにするため、嫌気ボトルへの空気混入を防ぐ)
      • 翼状針(真空採血)の場合: 好気ボトル → 嫌気ボトルの順
        (チューブ内の空気が最初のボトルに入るため、嫌気ボトルへの空気混入を防ぐ)
      • 十分な量(16 mL)が採れなかった場合: 好気ボトル → 嫌気ボトルの順
        • 好気ボトルに優先的に注入する: 採取した血液が少量(16 mL未満)の場合は、無理に分けず、まず好気ボトルに十分量(最大10 mLまで)を入れます。
        • 理由: 緑膿菌やカンジダ属は好気ボトルでしか発育せず、ブドウ球菌やレンサ球菌などの主要な起因菌も好気ボトルで発育するためです。嫌気ボトルのみに発育する菌(偏性嫌気性菌)が起因菌となる割合は相対的に低いため、好気ボトルを優先します。
  • タイミング
    • 通常は2セットを同時、もしくは1時間以内に採取します。
    • ただし、感染性心内膜炎が疑われる場合は、持続的な菌血症を証明するために、1時間以上(施設によっては30分以上というところもあるようです)間隔を空けて3セット採取することが推奨されています。
    • なお、検体を冷蔵保存してはいけません。感度が下がります(医師国家試験でもたびたび問われています)。速やかに検査室に提出するか、無理であれば常温保存しましょう。

1セットのみの陽性でも起因菌とみなすべきもの

以下の菌は皮膚常在菌ではない、あるいは病原性が高いため、たとえ2セット中1セット(4本中1本)のみの陽性であっても「真の起因菌」とみなし、治療対象とします。

  • グラム陽性球菌:
    • S. aureus(黄色ブドウ球菌)
    • S. pneumoniae(肺炎球菌)
    • S. pyogenes(化膿連鎖球菌)などのβ溶血性レンサ球菌
    • Enterococcus sp.(腸球菌)
    • S. lugdunensis(CNSの一種ですが、黄色ブドウ球菌と同様の強い毒性を持つため、1セット陽性でも起因菌として扱います )
  • グラム陰性桿菌:
    • E. coli(大腸菌)
    • K. pneumoniae(肺炎桿菌)
    • P. aeruginosa(緑膿菌)
    • その他の腸内細菌科細菌
  • その他:
    • Candida sp.(カンジダ属)
    • B. fragilis などの偏性嫌気性菌

    これらの菌が検出された場合は、コンタミネーションと片付けず、感染巣の検索と適切な抗菌薬治療を行う必要があります。

    特に S. aureusS. lugdunensisCandida sp. が検出された場合は、感染性心内膜炎や遠隔転移病変の検索を含めたフォローアップが必要です。

    コンタミネーションかどうかの判断

    血液培養から菌が検出された場合、それが真の起因菌か汚染菌(コンタミネーション)かを判断する必要があります。

    コンタミネーションが疑われる菌(皮膚常在菌):
    以下の菌が検出された場合、特に「複数セット中1セットのみ陽性」であれば、コンタミネーションの可能性が高いと考えられます。

    • コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS):汚染率 82%
    • Corynebacterium sp.:汚染率 88%
    • Bacillus sp.(B. anthracisは除く):汚染率 100%
    • Cutibacterium sp.(旧 Propionibacterium):汚染率 94%
    • Micrococcus sp.:汚染率 100%
    • 判断のポイント:
      • 陽性セット数: CNSなどの皮膚常在菌であっても、複数セットから同一の菌・感受性結果が得られた場合は、真の起因菌(特にCRBSIや人工物感染)である可能性が高くなります。
      • 陽性までの時間: 培養開始から24-48時間以降に陽性となった場合はコンタミネーションの可能性が高くなりますが、発育の遅い菌や嫌気性菌の可能性もあるため、患者背景と合わせて判断します。

    血液培養が陽性になりやすい疾患

    1. 陽性率が非常に高い疾患(高リスク群)

    これらの疾患が疑われる場合は、必ず血液培養(2セット以上)を実施する必要があります。

    • 敗血症・敗血症性ショック
    • 感染性心内膜炎(IE):持続的な菌血症を起こす代表格です。Shapiroルールでも「IE疑い」はそれだけで血液培養の絶対適応(大基準)とされています。
    • カテーテル関連血流感染症(CRBSI):中心静脈カテーテルやAラインなどのデバイス留置中の発熱。
    • ペースメーカーや人工血管、シャント感染など。
    • 中枢神経系感染症
      • 細菌性髄膜炎:髄液だけでなく血液培養も必須です。
      • 脳膿瘍、硬膜外膿瘍
      • 化膿性脊椎炎(椎体炎・椎間板炎)
      • 化膿性関節炎
    • 骨・関節感染症
    • その他
      • 発熱性好中球減少症(FN)。

    2. 状況により陽性になる疾患(中リスク群)

    これらの疾患では、重症度が高い場合や、抗菌薬投与前に原発巣(膿や尿など)の培養が採取できない場合に血液培養が推奨されます

    • 重症市中肺炎人工呼吸器関連肺炎(VAP)
      • 軽症の肺炎では陽性率が低いためルーチンでは推奨されませんが、重症例では必須です
    • 複雑性尿路感染症
      • 腎盂腎炎:閉塞起点がある場合や重症例では陽性率が高くなります。
    • 腹腔内感染症
      • 急性胆管炎肝膿瘍
    • 皮膚軟部組織感染症(重症)
      • 免疫不全がある場合の蜂窩織炎や、壊死性軟部組織感染症が疑われる場合

    3. 陽性になりにくい疾患(低リスク群)

    以下の疾患では、合併症(敗血症の徴候など)がない限り、ルーチンでの血液培養は推奨されません(陽性率が低く、偽陽性のデメリットが上回る可能性があるため)。

    • 単純性膀胱炎
    • 軽症の蜂窩織炎
    • 軽症の市中肺炎
    • 術後48時間以内の発熱(合併症の徴候がない場合)

    4. 「陽性になりやすいサイン」

    疾患名が特定できていなくても、以下の臨床徴候がある場合は菌血症のリスクが高いため、血液培養の適応となります。

    • 悪寒戦慄
      • 「厚手の毛布を被っても震えが止まらない」ような強い悪寒がある場合、菌血症の確率は高いと報告されています。Shapiroルールでも重要な予測因子です。
    • qSOFAスコア 2点以上
      • 呼吸数≧22回/分、意識変容、収縮期血圧≦100mmHg のうち2つ以上
    • Shapiroルールに該当する
      • 39.4℃以上の高熱、または38.3〜39.3℃の発熱に加え、嘔吐、低血圧、血小板減少、高齢者(>65歳)などのリスク因子が複数ある場合

    フォローアップ血液培養(Follow-Up Blood Culture: FUBC)

    フォローアップ血液培養が「必須」の微生物

    これらの菌は、血管内や組織への定着力が強く、菌血症が持続したり、心内膜炎などの遠隔病変を作りやすいため、「血液培養が陰性になること」を確認するまで、48〜72時間ごとに再検する必要があります。

    • 黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)
      • 適切な治療を行っても菌血症が持続しやすく、感染性心内膜炎や骨髄炎への進展リスクが高いため、必ず陰性確認を行います。
    • Staphylococcus lugdunensis
      • コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の一種ですが、黄色ブドウ球菌と同様に毒性が強く、心内膜弁を破壊しやすいため、黄色ブドウ球菌と同等の扱い(フォローアップ必須)とします。
    • カンジダ属 (Candida spp.)
      • カテーテル抜去や抗真菌薬開始後も持続しやすいため、陰性確認が必要です。
      • 48時間ごとの再検が推奨されています。
    • 耐性菌(治療効果判定のため必要)
      • MDRP(多剤耐性緑膿菌)
      • MDRA(多剤耐性アシネトバクター)
      • CRE(カルバペネム耐性腸内細菌科細菌)

    ルーチンでのフォローアップ血液培養が「不要」の微生物

    大腸菌(E. coli)や肺炎桿菌(Klebsiella)などの一般的なグラム陰性桿菌は、治療反応性が良く菌血症が持続するリスクが低いため、原則としてフォローアップ血液培養は不要です。

    ただし、以下の「患者側の要因」がある場合は、グラム陰性桿菌であっても例外的にフォローアップ(陰性確認)が必要になります,。

    感染源の制御ができていない(膿瘍ドレナージが不十分など)

    抗菌薬投与後も解熱しない、状態が改善しない

    人工物が入っている(人工弁、人工関節、ペースメーカーなど)

    末期腎不全または透析患者

    免疫抑制状態(臓器移植後など)

    フォローアップ血液培養のまとめ

    検出された菌フォローアップ血液培養
    S. aureus必須 (48-72h毎)
    S. lugdunensis必須 (48-72h毎)
    Candida spp.必須 (48h毎推奨)
    耐性菌 (CRE, MDRP)推奨
    その他の菌 (大腸菌など)原則不要
    ※ただし「人工物あり」「改善なし」「透析患者」などは実施

    なお、黄色ブドウ球菌やカンジダ、および持続菌血症の場合は、血液培養が陰性化した日を治療期間の「1日目(Day 1)」としてカウントします。

    参考文献

    • Who Needs a Blood Culture? A Prospectively Derived and Validated Prediction RuleShapiro, Nathan I. et al.Journal of Emergency Medicine, Volume 35, Issue 3, 255 – 264
    • UpToDate 菌血症の検出:血液培養およびその他の診断検査(2026/02/06閲覧)
    • 抗菌薬BOOK&MAP 血液培養の項
    • Nakayama I, Izawa J, Gibo K, Murakami S, Akiyama T, Kotani Y, Katsurai R, Kishihara Y, Tsuchida T, Takakura S, Takayama Y, Narita M, Shiiki S. Contamination of Blood Cultures From Arterial Catheters and Peripheral Venipuncture in Critically Ill Patients: A Prospective Multicenter Diagnostic Study. Chest. 2023 Jul;164(1):90-100. doi: 10.1016/j.chest.2023.01.030. Epub 2023 Jan 30. PMID: 36731787.

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