「意識障害」「片麻痺」「構音障害」――救急外来でこうした症状を目の当たりにすれば、まず疑うのは脳卒中。しかし、現場では“それっぽい”けれど実は違う「脳卒中ミミック」が存在します。
本記事では、脳卒中ミミックの具体例と鑑別のポイントを解説します。
ポイント
- 脳卒中ミミックの代表例として「低血糖」 「大動脈解離」 「けいれん発作後」がある。
- 血糖測定、左右の血圧測定、痙攣を示唆する所見(舌咬傷や尿失禁)を見落とさない。
- 脳卒中だと決めつけず、上記疾患の可能性を必ず念頭におく。
脳卒中ミミック その①「低血糖」
- 低血糖は動悸や冷や汗などが有名ですが、重度の意識障害を認めることも多いです。
- 低血糖の2%は脳卒中様症状を示すといわれています。
- 脳卒中にしては血圧が低い、冷や汗を認めている、などがあります。
- 以下にER に受診した有症状の低血糖125イベントの神経症状の内訳を示しています。3%で意識低下を伴わない急性の片麻痺を起こし,当初脳梗塞と考えられていました.

- インスリンやSU薬の使用など、低血糖の危険因子がある場合にはより低血糖の可能性が高まります。
- 必ず頭部CTに行く前に血糖値を測定します。
脳卒中ミミック その②「大動脈解離」
- 大動脈解離もまた脳卒中様症状を示す場合があります。
- 低血糖と同様、血圧が脳卒中にしては高くないこと、血圧の左右差があることなどが特徴です。
- 「脳卒中かな?」と思ったら、必ず四肢を触ること、血圧は左右測ることが重要です。
- 検査は胸部X線で縦隔の拡大や経胸壁心エコー、頸部血管エコーを積極的に施行した方が良いでしょう。
脳卒中ミミック その③「けいれん発作後」
- 症候性てんかんなどによる痙攣後であっても、意識障害や麻痺が出現することがあります。
- 痙攣の目撃があれば鑑別は簡単ですが、目撃者がいない場合もしばしばあります。
- 「痙攣を疑わせる所見」を必ず確認します
- 症状が時間経過とともに改善する
- 舌咬傷や尿失禁がみられる
- 血液ガスで乳酸値の上昇を認める
- 画像と神経学的所見が一致しない
- MRIやMRAを撮影すれば新規脳梗塞との鑑別は可能なことが多いです
- 得られた画像所見と神経学的所見が合わなければ、痙攣を併発ないし、痙攣による症状であると判断できるでしょう。
- CTのみでは超急性期脳梗塞と痙攣後の鑑別は困難なため注意が必要です。
まとめ
- 脳卒中患者をみたら、必ず「低血糖」「大動脈解離」「けいれん発作後」も可能性として考える
- 病歴聴取はもちろんですが、血糖値測定や左右の血圧測定を怠らない
参考文献
以下の文献を参考にさせていただき、まとめました。
- 臨床推論の落とし穴 ミミッカーを探せ!長野広之 著 / 志水太郎 監修
- 救急外来 ただいま診断中! 第2版 坂本 壮 (著)
- Rodriguez-Hernandez A, Babici D, Campbell M, Carranza-Reneteria O, Hammond T. Hypoglycemic hemineglect a stroke mimic. eNeurologicalSci. 2023 Jan 17;30:100444. doi: 10.1016/j.ensci.2023.100444. PMID: 36698773; PMCID: PMC9869408.
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