急性胆管炎は、消化器内科や外科だけでなく、救急外来や一般内科でも遭遇する頻度の高い疾患です。しかし、似た名前の「胆嚢炎」とは病態や重症度が大きく異なります。胆管炎は「敗血症の原因No.1」とも言われるほど容易に重症化し、迅速な対応(ドレナージなど)が遅れると致死的な転帰をたどる可能性があります。
病態と原因
病態生理: 「閉塞」と「感染」のダブルパンチ
胆管炎の本質は、胆汁の流れが滞る「胆道閉塞」と、そこに細菌が増殖する「感染」がセットになった状態です。胆管内圧が上昇すると、細菌やエンドトキシンが肝静脈へ逆流(胆管静脈逆流)し、容易に敗血症から多臓器不全へと進行します。
胆嚢炎よりも緊急性が高く、高齢者に多く見られます。
原因: 最も多いのは総胆管結石です。
その他、悪性腫瘍(膵頭部癌、胆管癌など)による閉塞や、良性疾患(十二指腸憩室炎など)も原因となります。

症状・身体所見

典型的な症状: Charcotの3徴
急性胆管炎の古典的かつ有名なサインです。ただし、すべてが揃うのは50〜75%程度であることに注意が必要です。
1. 発熱(悪寒戦栗を伴うことが多い)
2. 腹痛(右季肋部痛や心窩部痛。右季肋部の圧痛(叩打痛)を認めますが、胆嚢炎と異なり腹膜刺激症状(反跳痛など)は目立たないことが多いのが特徴です)
3. 黄疸
Reynoldsの5徴
Charcotの3徴に加え、以下の2つが出現した場合は急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC)と呼ばれるショック状態であり、極めて緊急性が高い状態です,。
4. ショック(血圧低下)
5. 意識障害
検査所見
炎症反応と胆道系酵素の上昇が特徴です。
ちなみに、血液検査で感染臓器を推定できるのは胆管炎のみです。血液検査で肺炎や尿路感染症は疑えません。

• 胆道系酵素: ALP、γ-GTP、直接ビリルビンの上昇を認めます。
•A ST/ALT: 急性期には「跳ね上がる」ように急上昇することがありますが、閉塞が解除されれば速やかに低下します。
• 炎症反応: 白血球増多、CRP上昇。重症例では血小板低下(DICの兆候)に注意が必要です。
• 血液培養: 抗菌薬投与前に必ず2セット採取します。陽性率は50%程度とされます。

画像所見
・「胆管の拡張」と「閉塞の原因(結石など)」を確認します。
• 画像診断の第一歩は 「総胆管径の拡張」 を確認することです。
• ただし、CTや超音波で結石が直接見えなくても(感度60%台)、臨床的に疑わしい場合は MRCP(感度87%) や EUS(感度97%) を追加して精査する必要があります
1. 胆管拡張(間接所見)
総胆管結石症では、結石による閉塞のために上流の胆管が拡張することが最も基本的な所見です。
総胆管の7-11ルール(Seven-Eleven Rule)
このルールは、総胆管径の「正常範囲」と「病的拡張(閉塞疑い)」を区別するための簡便なカットオフ値を示したものです。
- 7 mm以下: 正常
- 通常、健常成人の総胆管径は6〜7mm以下とされます。これ以下であれば胆道系に問題はないと判断します。
- 11 mm以上: 病的拡張
- 胆管閉塞(総胆管結石、腫瘍など)を強く疑う所見です。精査(CT、MRCP、EUSなど)が推奨されます。
• 例外と注意点:
◦ 高齢者・胆嚢摘出後: 胆嚢を摘出した患者では、生理的に軽度の胆管拡張を認めることが多く、非特異的な所見となることがあります。胆嚢摘出後の総胆管径は平均9.5mm(標準偏差を含めると12.1mm程度まで)という報告もあります。
◦ 拡張しないケース: 急性胆管炎を発症していても、約18%の症例では総胆管拡張を伴わないという報告があり、拡張がないからといって否定はできません。
◦ 疾患による径の違い: 総胆管結石による拡張(平均11.0mm程度)は、膵癌などによる悪性閉塞(平均14.0mm程度)と比較すると、拡張の程度がやや軽い傾向があります。

2. 結石の描出
各検査方法によって、結石を見つけられる確率(感度)や特徴が異なります。
① 腹部超音波検査(US)
侵襲がなく最初に手軽に行える検査ですが、総胆管結石の描出能は高くありません。
• 感度: 62% (54-70%) と比較的低めです。
• 特徴: 腸管ガスや肥満の影響を受けやすく、総胆管の末端(出口付近)にある結石は描出困難なことが多いです。特異度は93%と高いため、「石が見えれば確定」に近いですが、「見えないから否定」はできません。
② 単純CT検査
スクリーニングとして広く用いられますが、万能ではありません。
• 感度: 60-88% です。
• 特徴: 石灰化を含む結石は白くはっきり写りますが、純粋なコレステロール結石や一部の色素結石はX線を透過するため、CTでは写らないことがあります。超音波と単純CTだけでは感度が不十分な場合があるため注意が必要です。
・造影CT⇢周囲の臓器の造影効果により総胆管結石が見えづらくなることがあるため、単純CTも必ず確認する。
③ MRCP
超音波やCTで診断が困難な場合に推奨される、非常に有用な検査です。
• 感度: 87% (80-93%) と高い感度を誇ります。
• 特徴: 胆汁(水)を白く強調して撮影するため、胆管の形態と内部の結石(黒く抜ける欠損像)を明瞭に描出できます。必要に応じて積極的に行うべき検査です。
④ 超音波内視鏡(EUS)
胃や十二指腸の中から至近距離で胆管を観察する精密検査です。
• 感度: 97% (91-99%) と最も高い感度があります。
• 特徴: 体外式の超音波やCT/MRIでも見つからない微小な結石の発見に優れています。

診断
国際的な診断基準であるTG18(Tokyo Guidelines 2018)が広く用いられています。

1. 全身の炎症所見: 発熱(38℃以上)または悪寒戦栗、血液検査での炎症反応(WBC, CRP上昇)。
2. 胆汁うっ滞所見: 黄疸、肝機能・胆道系酵素の異常。
3. 画像所見: 胆管拡張、または原因(結石・ステント閉塞など)の描出。
• 疑い: 1項目 + (2項目 または 3項目)
• 確診: 1, 2, 3 のすべての項目を満たす
急性胆管炎の鑑別疾患

重症度判定

治療
急性胆管炎の治療の3本柱は①蘇生(輸液など)、②抗菌薬投与、③胆道ドレナージです。
1. 初期対応・薬物療法
• 絶食・輸液: 敗血症性ショックに準じて十分な細胞外液を投与します。
• 抗菌薬: 診断がついた時点で速やかに投与します。腸内細菌(大腸菌、Klebsiellaなど)および嫌気性菌をカバーする必要があります。
◦ 第一選択例: アンピシリン・スルバクタム(ABPC/SBT 3g 6時間毎)
◦ 重症・耐性菌リスク: ピペラシリン・タゾバクタム(PIPC/TAZ 4.5g 6時間毎)などが推奨されます。
2. 胆道ドレナージ
閉塞した胆管の圧力を下げることが最も重要です。重症度に応じて緊急度を判断します。
• 内視鏡的胆道ドレナージ(ERCP):
◦ 第一選択の治療法です。ENBD(経鼻的)やERBD(ステント留置)を行います。
◦ 重症例では、24時間以内の緊急ドレナージが必須です,。
• 経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD):
◦ 内視鏡的治療が困難な場合や不成功の場合に選択されます。
3. 原因治療
急性期を脱した後、結石除去(内視鏡的または外科的)や、腫瘍に対する治療を行います。
Q&A
Q1: 「胆嚢炎」と「胆管炎」、名前は似ていますが何が決定的に違うのですか?
A: 最大の違いは『場所』と『菌の回りやすさ』です。胆嚢炎は胆嚢という『袋』の炎症で、基本的には局所の病気です。一方、胆管炎は肝臓の中に樹枝状に広がる『管』の閉塞と感染です。胆管と肝臓の血管は非常に近いため、細菌が容易に血流に乗って全身に回り、あっという間に敗血症になります。だから、胆管炎の方が圧倒的に緊急度が高いと覚えておきましょう。
Q2: 腹部CTを撮りましたが、総胆管に結石が見当たりません。胆管炎は否定できますか?
A: いいえ、否定できません。CTは万能に見えますが、実は純粋なコレステロール結石や一部の色素結石はCTに写らない(X線透過性)のです。CTで石が見えなくても、胆管が拡張していて、血液検査で胆道系酵素が上がっていれば、結石による胆管炎を強く疑う必要があります。超音波やMRI(MRCP)で確認しましょう。
Q3: 抗菌薬を開始しましたが、いつまで様子を見てよいのでしょうか?ドレナージのタイミングに迷います。
A: 原則として、重症例(ショックや意識障害がある場合)は待たずに緊急ドレナージが必要です。中等症以下でも、抗菌薬投与にもかかわらず24時間以内に症状やデータ(発熱、腹痛、肝機能)の改善が見られない場合は、速やかにドレナージを検討すべきです。『抗菌薬で粘る』のは危険な賭けになることが多いと思われます。
まとめ
• 胆管炎は「敗血症予備軍」:胆嚢炎よりも緊急性が高く、致死的なショックに至る可能性があるため、迅速な判断が必要です。
• 悪寒戦栗は菌血症のサイン:発熱・腹痛に伴う悪寒を見たら胆管炎を疑いただちに血液培養を採取します。
• CTで石が見えなくても否定しない:CTに写らない結石は多数存在します。胆管拡張と血液データを重視しましょう。
• ドレナージが救命の鍵:抗菌薬だけでなく、ドレナージタイミングを逃さないことが重要です。
• 専門医へ早めのコールを:ERCPが必要になる可能性が高いため、診断がついた時点(あるいは強く疑った時点)で消化器内科へコンサルトしましょう。



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