化膿性肝膿瘍

内科一般
Pyogenic liver abscess
  • 先日、発熱・体動困難で受診した高齢者の肝膿瘍を経験したのでUpToDateを元にまとめました。
  • 肝膿瘍は化膿性(Pyogenic)とアメーバ性(Amebic)に分類され、今回は化膿性についてです。

原因と病態

化膿性肝膿瘍は、主に以下の経路で発生します。

胆道疾患: 胆石症や悪性腫瘍による閉塞など、基礎となる胆道疾患が40〜60%の症例に存在し、胆道感染からの直接波及が重要な経路です,。

門脈経由: 虫垂炎や憩室炎、門脈血流を介して菌が肝臓に到達します。

血行性: 全身循環からの動脈血行性播種や、近接臓器からの直接浸潤も原因となります,。

リスク因子: 糖尿病、肝移植、プロトンポンプ阻害薬の常用、基礎にある肝胆道系または膵疾患などが挙げられます。また、大腸癌との関連も指摘されています,。

原因菌: 多くの場合は多菌性(混合感染)です。腸内グラム陰性桿菌(特にE. coliK. pneumoniae)と嫌気性菌が最も一般的です。特に東アジアでは、K. pneumoniaeが単独感染の重要な原因となっています。

症状と身体所見

典型的な所見は発熱腹痛です。

発熱: 患者の約90%に見られます。ときに熱のみで寝汗,体重減少など不明熱のような亜急性経過をとることもある。

腹部症状: 患者の50〜75%に見られ、通常は右上腹部に局在します。圧痛、筋性防御、ロッキングサイン(rocking sign:腹部を優しく揺らすと生じる痛み)、反跳痛が見られることがあります,。

その他: 悪心、嘔吐、食欲不振、倦怠感などが一般的です。

身体所見: 約半数の患者で肝腫大、右上腹部の圧痛、黄疸が認められますが、右上腹部の所見がないからといって肝膿瘍を否定することはできません

血液検査所見

アルカリホスファターゼ(ALP): 67〜90%の症例で上昇が見られます。

ビリルビンおよびAST: 約半数の症例で上昇が見られます。

その他: 白血球増多、低アルブミン血症、貧血(正球性正色素性)がしばしば認められます。

画像検査

第一選択となる画像検査は超音波検査またはCT検査です。

  • 超音波検査:不整形または円形の低エコー域として描出されることが多いです。境界は比較的明瞭ですが、周囲に浮腫がある場合は境界が不明瞭になることもあります。内部は低エコーまたは無エコーで、膿瘍内容物の液体成分を反映しています。 時に内部に高エコーの点状反射が見られることがあり、これは膿瘍内のガス形成を示唆します。
  • CT検査: 超音波よりも感度がやや高く(約95% vs 85%)、推奨されます。
  • 単純CTでの診断: UpToDateには「CTを行う場合は、理想的には造影を行うべきである(it should ideally be with intravenous contrast)」と記載されています。
  • 典型的な造影CT所見は、中心部が低吸収(hypoattenuation)で境界明瞭な円形病変です。
  • 「辺縁の増強効果(peripheral rim enhancement)」や「周囲の浮腫」は肝膿瘍に比較的特異的な所見とされますが、これらは造影剤を使用しないと評価が困難です。したがって、単純CTのみでは情報が限られる可能性があります。
radiopediaより

微生物学的検査

  • 血液培養
  • 膿瘍穿刺液の培養・グラム染色
  • 血清学的検査: アメーバ性肝膿瘍(Entamoeba histolytica)との鑑別のため、特に肝胆道系疾患の既往がない患者ではアメーバ抗体検査を行うことが推奨されます,。
  • 大腸癌スクリーニング: 肝膿瘍診断後の数ヶ月から数年は大腸癌の発生率が高いというデータがあるため、特に明らかな肝胆道系の原因がない患者には大腸癌のスクリーニング(大腸内視鏡など)が助言されます。

治療方法

治療の基本は「ドレナージ(排膿)」と「抗菌薬投与」の組み合わせです

5cm以下の単発膿瘍: 経皮的穿刺吸引(needle aspiration)またはカテーテル留置のいずれも許容されますが、カテーテル留置が好まれます。吸引のみの場合、再吸引が必要になることがあります,。

5cmを超える単発膿瘍: 経皮的カテーテルドレナージが推奨されます。穿刺吸引単独よりも成功率が高く、回復までの期間が短縮されます,。

外科的ドレナージ: 経皮的ドレナージが不成功の場合、膿の内容物が粘調でドレナージ困難な場合、あるいは外科的処置が必要な基礎疾患がある場合に適応となります。

抗菌薬療法

医療関連感染の疑いがない場合や亜急性,慢性経過,軽症例

□ABPC/SBT 3gを6時間ごと

あるいは

□CTRX 2gを24時間ごと+MNZ 500mg を8時間ごと

医療関連感染の疑いが濃厚で耐性菌リスクがある,またはショックなど重篤な場合

□ PIPC/TAZ4.5gを6時間ごと

あるいは

□CFPM2gを8時間ごと+MNZ500mgを8時間ごと

または

□MEPM1gを8時間ごと

□CTLZ/TAZ1.5gを8時間ごと+MNZ500mgを8時間ごと

(※医療関連感染とは、病院環境下にいる患者や医療行為を受けている患者が、原疾患とは別に新た感染を受けて発病する場合を指します。)

βラクタムアレルギーの場合

□ LVFX 500 mg を 24 時間ごと+MNZ 500 mg を 8 時間ごと

参考文献

  • UpToDate:「Pyogenic liver abscess」(2026/01/22閲覧)
  • 感染症プラチナマニュアル Ver.8 2024-2025

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