胆石疝痛でST上昇をきたす報告はちらほら存在する
寺澤秀一先生と林寛之先生の「当直御法度 第7版」を読んでいると、ACS様心電図所見を呈する疾患群の中に「胆石疝痛」と記載がありました。「こんなことあるのか・・・?」と思い文献にあたってみました。稀ではありますが、症例報告がちらほらあり、ひとつご紹介します。
Uehara H, Oe Y, Yoshimura T, Gunji T, Okuyama M. Acute Cholecystitis Caused by Campylobacter jejuni Mimicking Acute Coronary Syndrome. Cureus. 2024 Feb5;16(2):e53608. doi: 10.7759/cureus.53608. PMID: 38449942; PMCID: PMC10917125.
急性冠症候群(ACS)と酷似した症状を示した、カンピロバクターによる極めて珍しい急性胆嚢炎の症例報告です。胸痛と心電図の異常を認めた85歳の男性患者に対し、当初は心疾患を疑って緊急検査が行われましたが、最終的に原因は心臓ではなく、細菌感染による胆道疾患であることが判明しました。著者らは、腹部の炎症が迷走神経反射や微小循環の乱れを引き起こし、心臓に異常がない場合でも心電図の変化を招く可能性を指摘しています。

Figure 2:今回の来院時(受診時)に記録された心電図です。以前の心電図には見られなかった、V2〜V3誘導における新たなST上昇が確認されています。

胆嚢炎の治療開始→ST上昇も消失
- 敗血症が疑われたため、血液培養検査を行った後、まずセフトリアキソン(抗菌薬)の投与が開始されました。
- 入院から1週間後の血液培養検査でCampylobacter jejuni(カンピロバクター・ジェジュニ)が検出されたため、セフトリアキソンの投与は中止されました。その後、アジスロマイシンを3日間、およびピペラシリン・タゾバクタムの静脈内投与を1週間実施しました。
- この抗菌薬治療によって発熱や胸部・腹部の不快感といった症状は治まり、状態が改善したため、急性期における胆嚢摘出術や胆嚢ドレナージといった外科的な処置は行われませんでした。

なぜ胆石疝痛でST上昇をきたす?
Yu S, Lv H, Liu M. Sequential Electrocardiography Changes. JAMA Intern Med. 2026 Feb 1;186(2):264-265. doi: 10.1001/jamainternmed.2025.6138. PMID: 41428289. より。
胆道疾患によるST上昇の機序は、内臓心臓反射による自律神経調節異常と考えられているようです。胆嚢と心臓は胸髄神経支配(胆嚢:T4-T9、心臓:T2-T8)が重複しており、この共通神経支配により胆嚢の不快感が心臓痛として誤認されることがあります。副交感神経緊張の亢進により冠動脈攣縮や再分極異常が誘発され、虚血を模倣するとのことです。
参考文献
- Uehara H, Oe Y, Yoshimura T, Gunji T, Okuyama M. Acute Cholecystitis Caused by Campylobacter jejuni Mimicking Acute Coronary Syndrome. Cureus. 2024 Feb5;16(2):e53608. doi: 10.7759/cureus.53608. PMID: 38449942; PMCID: PMC10917125.
- Yu S, Lv H, Liu M. Sequential Electrocardiography Changes. JAMA Intern Med. 2026 Feb 1;186(2):264-265. doi: 10.1001/jamainternmed.2025.6138. PMID: 41428289.


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