低ナトリウム血症は、入院患者さんで最もよく出会う電解質異常です。ところが「Na 128だから、とりあえず生食でいいか」で済ませてしまうことはありませんか?
低Na血症の本質はNa欠乏ではなく、水の問題です。病態を取り違えたまま生理食塩水を流すと、低Na血症がかえって進行してしまうことがあります。逆に補正を急ぎすぎると、今度は浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome:ODS)を起こします。
この記事では、低Na血症の診断アルゴリズム、原因の分け方、治療(3%食塩水の作り方も)、過補正してしまったときの対応、そして進行するかどうかの予測まで、順番に整理していきます。
なお、各疾患の治療法についてはまだ別の記事にしようと思います。
まず大前提:低Na血症=Na欠乏とは限らない
ここを勘違いしていると、この先の話が全部ずれてしまいます。血清Na濃度は「Na量 ÷ 水量」ですから、分子が減っても、分母が増えても下がります。つまり低Na血症には次の3つのパターンがあります。

- ①Na欠乏性:Naが減少。水の欠乏を上回るNa欠乏があり、細胞外液は不足しています。
- ②水過剰性:水が増加。Na量は変わらず、軽度の細胞外液過剰になりますが、浮腫は目立たない。
- ③水・Na過剰性:水もNaも貯留していますが、Na貯留を上回る水貯留があります。浮腫を伴う。
- ④偽性低Na血症:血漿の水分量は正常なのに見かけ上だけ低値になっています。
■治療の原則
低Na血症の治療は、Naを入れるか、水を抜く(制限する)かのどちらかしかありません。どちらを選ぶかは病態で決まります。ただし症候性であれば、この議論より先に3%食塩水を投与します。
低Na血症の鑑別アルゴリズム

診断は3ステップで進める
低Na血症とは、一般に血清Na 130〜135 mEq/L未満を指します。診断の流れは次の3ステップにまとまります。が、まず必要な検査を出しておきましょう。
最初に出しておく検査
低Na血症をみたら、まとめて出しておきたい検査です。あとから「あのときホルモンを測っておけばよかった……」と悔やむことが本当に多いので、初回の採血でまとめて確保しておきましょう。
- 血液:血算、生化学(BUN、Cr、Na、K、Cl、Ca、P、Mg、HCO3、CK、Glu、TP、Alb、Cho、TG)に加えて、内分泌検査(TSH、FT3、FT4、コルチゾール、レニン活性、アルドステロン、ADH、BNP、HbA1c)も提出します。
- 血液ガス:治療後のフォローはVガスで行うことが多いので、必ず最初にも取って比較できるようにしておきます。
- 尿:尿定性、尿蛋白、尿Cr、尿BUN、尿UA、尿電解質(Na、K、Cl、IP)を提出し、蓄尿も行います。
- エコー:心臓とIVCをみて、体液量の評価と心機能のスクリーニングを行います。
- その他:体重を基本的に毎日測定し、尿量を測るために尿道カテーテルを留置します。
ステップ1:血漿浸透圧を計測
まず血漿浸透圧です。ここで大きく3つに分かれます。
- 高張性低Na血症(295 mOsm/kg超):マンニトール、グリセロール、高血糖など、血液中に余分な溶質が多いために、血管内へ水が引き込まれています。
- 等張性(正常浸透圧)低Na血症:偽性低Na血症です。高中性脂肪血症や多発性骨髄腫などのパラプロテイン血症で起こります。治療は不要です。
- 低張性低Na血症(280 mOsm/kg未満):いわゆる「本物」の低Na血症です。ここから先が本題になります。
この最初の分岐を飛ばすと、治療がいらない偽性低Na血症に3%食塩水を投与する、という事故が起こり得ます。怖いですね。非低浸透圧性低Na血症の原因は、図1の「表1」にまとめました。
ステップ2:尿浸透圧を計測(低張性とわかったら)
- 尿浸透圧 100 mOsm/kg以下:尿は十分に薄まっていて、腎臓の水排泄能は保たれています。心因性多飲症、溶質摂取不足、beer potomania(ビールの多飲で溶質摂取が減るもの)などを考えます。個人的な経験ですが、アルコール依存の低ナトリウム血症をみたらbeer potomaniaを疑います。また心因性多飲症ですが、障害者施設入所中の方で、いつも水道の蛇口に口をつけてないと気がすまない(?)という方が意識障害で搬送されてきて驚いた記憶があります。。。。
- 尿浸透圧 100 mOsm/kg超:血漿が薄いのに尿が濃縮されています。水排泄障害、すなわちADHが効いている状態です。次のステップへ進みます。
ステップ3:尿Na濃度を計測
- 尿Na 30 mmol/L以下:腎臓がNaを必死に保持しています。有効動脈血液量が低下しているサインです。ここからさらに身体所見で分けます。
- 細胞外液が増加→心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群を考えます。
- 細胞外液が減少→下痢、サードスペースへの喪失、過去の利尿薬使用を考えます。
- 尿Na 30 mmol/L超:Naが尿へ漏れています。まず利尿薬か腎疾患かどうかを判断します。
- 利尿薬・腎疾患が当てはまるとき:そのまま利尿薬、腎疾患、その他を考えます。
- 当てはまらず、細胞外液が減っているとき:嘔吐、副腎不全、塩分喪失性腎症、CSW(中枢性塩喪失症候群)、そして利尿薬の隠れ飲み(若い痩せ型の女性で注意!!)を考えます。
- 当てはまらず、細胞外液が正常のとき:SIADH、二次性副腎不全(甲状腺機能低下)を考えます。
FEUAも同時に計測
ここで鑑別がぐっと楽になるのが、尿酸の分画排泄率(FEUA)です。Naと尿酸は体内での動きが似ています。脱水であれば尿中へのNaや尿酸の排泄(FENa・FEUA)はどちらも低下し、血清尿酸値は高くなります。反対にSIADHでは、Naも尿酸も排泄が亢進して、血清尿酸値は低くなります。
以下は覚えておくと良いかもしれません。
低Na血症をみたときに、SIADHを疑ういちばん簡単な指標は「血清尿酸値が低いこと」です。採血のついでに必ず見ておきましょう。
さらに大事なのが利尿薬との鑑別です。利尿薬を使っていると、Naの排泄は亢進するのに、尿酸の排泄は低下して血清尿酸値が高くなります。ですから尿Naが高くても、次のように読むことができます。
- FEUA 12%以下:SIADHというより、利尿薬による塩分喪失が主な原因と判断します。
- FEUAが上昇:SIADHを考えます。
- FEUAが著明に上昇:CSWやRSW(腎性塩喪失症候群)を考えます。
尿Naだけでは利尿薬性とSIADHが分けられません。FEUAを足すと鑑別に役立ちます。
原因を機序から理解するのも大事

① Naが足りないパターン
RAA系から副腎、尿細管に至る経路のどこかに異常があります。利尿薬の投与、Addison病、尿細管障害などが当てはまります。
② 水がやや増えた状態(euvolemic hyponatremia)
代表はSIADHです。ADHが過剰になって水がどんどん再吸収され、低Na血症になります。ここで大事なのは、Na排泄はむしろ低下していないという点です。SIADHではADH過剰による水貯留で細胞外液量が正常よりやや増え、二次的にアルドステロンが抑制されてNa利尿ペプチドが促進されるため、尿中Na排泄は増加します。心因性多飲もこのグループに入ります。
ちなみに、肺炎があって低Na血症を伴っていたら、レジオネラを疑うきっかけになります。
③ Naも貯留するけれど、それ以上に水が貯留した状態
心不全では、心拍出量が低下したことを頸動脈洞が感知します。視床下部の浸透圧センサーへシグナルが送られてADHが上昇し、水が貯留します。同時に腎血流が低下してRAA系が活性化し、アルドステロンが上がってNaも貯留します。このとき尿中Na排泄は低下します。
肝硬変では、アルブミンが低下して膠質浸透圧が下がり、腎血流量が低下してRAA系が活性化し、アルドステロンが上がってNaが貯留します。加えて膠質浸透圧の低下そのものがADHを上昇させ(この機序ははっきりしていません)、水が貯留します。腹腔臓器の血管拡張によるシャント効果と低蛋白血症から有効循環血漿量が低下し、なかでもADH分泌の亢進が病態の中心だとされています。
ネフローゼ症候群も同じで、低蛋白血症から循環血漿量が低下し、腎での水・Na再吸収が亢進して、細胞外液量が増えた状態の低Na血症になります。
サイアザイド系利尿薬による低Na血症は頻度が高いです。腎皮質にある遠位尿細管のNaCl共輸送体に作用してNaClの再吸収を阻害するため、Na利尿が行きすぎて脱水と低Na血症を起こします。当然、尿中Na排泄は亢進しています。Caの再吸収を促進してMgの再吸収は抑制するので、高Ca血症や低Mg血症を合併することもあります。
原発性副腎皮質機能低下症(Addison病)では、鉱質コルチコイドの作用が足りないため尿中へNaが失われ、尿中Na排泄は亢進します。高K血症を合併することが多いのも特徴です。
■地味に役立つ話
血清Naが130 mEq/Lを切っていると、ループ利尿薬が効きにくくなります。利尿がどうも思うようにつかないときは、低Na血症を思い出してみてください。
治療:「とりあえずガンガン生食!」ではない!
低Na血症だからといって、生理食塩水をガンガン入れてよいわけではありません。治療は次の3段構えで考えます。
① 重篤な症状がある、10 mEq/L以上のNa低下を伴う急性発症、または難治性
3%食塩水を使用します。厳密なモニターが必要ですので、原則として集中治療室で使用します。
- 投与方法:3%食塩水100〜150 mL(または2 mL/kg)を20分かけて点滴静注します。
- 投与が終わったら直ちにNa濃度を再検し、症状が消失するか、Naが5 mEq/L上がるまで繰り返します(これがまためんどくさい・・・・)。
- 計算上、3%食塩水を1 mL/kg投与するとNaは約1 mEq/L増えると覚えます。
この「1 mL/kgで約1 mEq/L」は暗算で使えます。
ΔNa ≒ 3%食塩水のボーラス投与量(mL)÷ 体重(kg)
たとえば体重50 kgの患者さんに3%食塩水150 mLをボーラス投与したとします。150 ÷ 50 = 3 ですから、Na濃度はおよそ3 mEq/L上がると予測できます。実際にはこの概算より少し小さめの上昇になることが多いのですが、緊急時の見積もりとしては十分に使えます。
なお3%食塩水は500 mLも使う必要はありません。まずは100 mLから始めて再検する、という運用で足りることが多いです。
3%食塩水の作り方
生理食塩水100 mLに、10%塩化ナトリウム30 mLを加えます。これで塩分量3.9 g、Na量66 mEqになります。
生理食塩水のNaClは0.9 g/100 mLですから、そこへ10%塩化ナトリウム30 mL(NaCl 3 g)を加えると、合計約3.9 gが約130 mLに溶けている計算になります。これなら、バイアルを何本も並べなくても、症候性の低Na血症にすぐ対応できるボトルが1本できあがります。
救急外来では、採血と尿生化学を提出した時点で、10%塩化ナトリウム20 mL 1筒をメインに混注しておく、という運用もありだと思います。
② ①に当てはまらないとき
循環血漿量が減っている場合
- 食事がとれないときは、生理食塩水を2 mL/kg/時で投与します。
- 食事がとれるときは、生理食塩水を1 mL/kg/時で投与します。
- これを目安に、心機能や循環血漿量減少の程度をみて調整します。
- 体液量が是正されたら(主に尿量が改善したときです)、減量して中止します。
循環血漿量が減っていない場合
- 希釈尿が十分に出ていれば、生理食塩水による補正は不要です。
- なお尿浸透圧の基準値は50〜1,200 mOsm/kgH2Oです。
- 希釈尿の目安
- 尿浸透圧<血清浸透圧(約285)
- 100 mOsm/kg未満なら最大希釈でADHがほぼ効いていない
- 尿比重1.010未満、最大希釈なら1.005
- 尿中Na+K<血清Na
- 塩分の入った食事をとってもらい、飲水は制限します。輸液での自由水投与は避けます。
- 食事がとれないときは、生理食塩水を1 mL/kg/時で投与します。
実際の進め方としては、とりあえず生理食塩水を開始してみて1〜2時間後に再検し、低Na血症が進むようならSIADHかもしれないと考えて、飲水制限に切り替えます(目標摂取量 800mL/day未満(15~20mL/kg))。
細胞外液量が減っているタイプなら生食でよいのですが、細胞外液量が変わらないタイプ(SIADHなど)では水制限が第一選択になります。
Naの上昇予測にはAdrogué-Madiasの式もありますが、実際には上の概算と頻回の再検を組み合わせて運用することが多いです。
③ 原因となっている病態を治します
- Na補正と並行して、原因の治療を進めます。
- とくに無症候性であれば急いで治療する必要はありませんので、原因検索を十分に行い、それを改善する形でゆっくり調整します。
- 嘔気や疼痛といった生理的なADH分泌も低Na血症を悪化させますので、これらの症状コントロールも大切です。
重症例でいちばん怖いのはここです!
重症の低Na血症で注意すべきなのは、Na補正の最中に急に希釈尿が出始める現象です。ADH過剰分泌が原因だった場合、その原因が是正されるとADH分泌が抑えられ、尿量が増えるのと一緒に尿中Na排泄も抑制されます。これに気づかずNaを補充し続けていると、あっという間に血清Na濃度が跳ね上がってしまいます。
薄い尿が大量に出始めたら過剰補正の危険があります。必ず頭に入れておきましょう。
補正速度とODS
上限の目安
血清Naの上昇は、24時間で8 mEq/L以内に抑えます。ODSのリスクがある場合は6 mEq/Lを上限とします。ナトリウムの補正は、0.5 mEq/L/時を上回る速度では行いません。
3%食塩水を投与している間は、1時間ごとにNa値を確認して補正速度を慎重に評価します。けいれんなどの症状があるときは、最初の6時間で4〜6 mEq/Lの上昇を達成し、それ以降は最初の24時間以内で8 mEq/L以内の上昇にとどめます。
ODSの高リスク群
| 浸透圧性脱髄症候群(ODS)の高リスク群 |
|---|
| 血清Na濃度 105 mEq/L以下 |
| 低K血症を合併している |
| アルコール中毒がある |
| 低栄養がある |
| 高度の肝障害がある |
Am J Med. 2013 Oct;126(10 Suppl 1):S1-42
過剰補正を防ぐために
- 急速なNa補正はODSを起こす危険がありますので、必ず血清Na濃度をモニタリングします。少なくとも2〜4時間ごとに確認します。
- 尿の電解質も同時に測定します。
- 血清Na濃度が尿中Na+K濃度より低いときは、低Na血症は進行する傾向にあります。
- 血清Na濃度が尿中Na+K濃度より高いときは、低Na血症は改善する傾向にあります。
- 薄い尿が大量に出始めたら、過剰補正の恐れがあります。
過補正してしまったら?
過補正してしまった場合は以下の通りです。
ステップ1:補正中止
進行中の積極的な補正(高張食塩水の投与など)を、直ちに中止します。
ステップ2:RE-LOWER(意図的に血清Naを下げる)
血清Naを、意図的に安全な範囲まで下げ直します。
- 自由水(電解質を含まない水)を投与します。5%ブドウ糖液を2〜4 mL/kg/時で点滴します。
- 「ブレーキ」をかけます。デスモプレシン(DDAVP)2 µgを静注または皮下注します。腎臓での水利尿にブレーキがかかり、Naのさらなる上昇を止められます。必要であれば8時間ごとに繰り返すことができます。
- デスモプレシンのこの使い方は、本邦では適応外使用になります。院内のコンセンサスを得たうえで使用してください。
この低Na血症、進行しそう?
病棟でよく見かけるのは、Na 130 mEq/L前後の軽い低Na血症です。わずかなNa低下でも死亡率の上昇に関与しますので、問題として挙げておくべき所見です(Kidney Int 83:700-706, 2013)。とはいえ現実には、すべての低Na血症をその場で治療し始めるわけではありませんよね。
自然に改善する低Na血症かどうかを判断するには、尿中Na+Kを目安にすることができます。
尿中Na+K濃度で進行を予測します
- 尿中Na+K > 血清Na:血中Naに対して濃い尿が出ています(自由水がうまく排泄できていません)。低Na血症は進行しますので、尿中Na+Kより濃い輸液が必要になります。
- 尿中Na+K < 血清Na:血中Naに対して薄い尿が出ています(自由水はしっかり排泄できています)。低Na血症が進行する可能性は低く、自然によくなることも期待できます。
本来なら血清Na+Kと尿中Na+Kを比べるのですが、血清Kの影響は小さいので無視しています。自尿で自由水が十分に排泄できていれば、血清Naをフォローするだけで大丈夫です。もちろん輸液や食事もチェックして、自由水を入れすぎていないかは評価してください。
まとめ
- 低Na血症はNa欠乏ではなく、水の問題です。治療はNaを入れるか、水を抜くかのどちらかです。
- 診断は血漿浸透圧、尿浸透圧、尿Naの3ステップで進めます。ここにFEUAを足すと、利尿薬性とSIADHがはっきり分けられます。
- SIADHを疑ういちばん簡単な指標は、血清尿酸値が低いことです。
- 症候性なら3%食塩水100〜150 mLを20分で投与します。生理食塩水100 mLに10%塩化ナトリウム30 mLを加えて作ります。
- 暗算式は「ΔNa ≒ 投与量(mL)÷ 体重(kg)」です。
- 補正は24時間で8 mEq/L以内に抑えます(ODSリスクがあれば6 mEq/Lです)。薄い尿が大量に出たら過補正のサインです。
- 上げすぎたら、まず中止して、D5WやDDAVPで下げ直します。ただしDDAVPは適応外使用です。
- 進行するかどうかは、尿中Na+Kと血清Naの大小で判断します。
参考文献
- Verbalis JG, et al. Am J Med. 2013;126(10 Suppl 1):S1-42.
- N Engl J Med. 2015 Jan 1;372(1):55-65.
- JAMA. 2022 Jul 19;328(3):280-91.
- Kidney Int. 2013;83:700-706.
- 『誰も教えてくれなかった尿検査のアドバンス活用術』p117
- 『ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第3版』p424
- 『内科レジデントの鉄則』p279


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