Chryseobacterium indologenesによる医療関連感染の特徴と治療戦略

感染症
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Chryseobacterium indologenesの特徴

■菌学的特徴

  • 好気性、非運動性、非発酵性グラム陰性桿菌
  • オキシダーゼ陽性、カタラーゼ陽性、インドール陽性
  • 黄色色素産生を示すことが多い
  • 環境菌であり、水回り、湿潤環境、医療機器表面から分離される

■疫学

  • ヒト常在菌ではなく、院内環境由来が主体
  • 人工呼吸器、中心静脈カテーテル、尿道カテーテル、透析関連器材などと関連
  • 免疫不全、悪性腫瘍、糖尿病、長期入院、広域抗菌薬使用歴がリスク因子
  • 菌血症、肺炎、カテーテル関連感染、尿路感染、創部感染を起こす

■臨床上の注意点

  • 喀痰や尿からの分離では colonization と感染の区別が必要
  • 血液や無菌部位からの分離は臨床的意義が高い
  • バイオフィルム形成能が示唆され、デバイス抜去が治療成否に影響する

https://microbecanvas.com/Bacteria/gram-negative-rods/obligate-aerobic-3/oxidase-positive-2/colistin-resistant-4/indole-positive-2/chryseobacterium-indologenes.html より引用

抗菌薬の感受性

Huang C. Clinical and Epidemiological Features and Antimicrobial Susceptibility Patterns of Chryseobacterium Species: A Scoping Review. Medicina (Kaunas). 2025 Jun 30;61(7):1197. doi: 10.3390/medicina61071197. PMID: 40731827; PMCID: PMC12300101. を参考にまとめました。

本論文は、近年アジア圏を中心に医療関連感染の起炎菌として分離頻度が増加しているブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、Chryseobacterium属の臨床疫学的特徴および薬剤感受性パターンを解析したスコーピングレビューです。合計16報の研究を対象にプール解析を行っています。

■疫学および臨床的特徴

典型的な日和見感染であり、心血管疾患、糖尿病、悪性腫瘍などの基礎疾患を有する高齢者に好発します。症例の大部分は医療関連感染として発生し、主な分離検体は血液、尿、喀痰です。また、アシネトバクターや緑膿菌などの他菌との複数菌感染を伴う症例もしばしば見受けられます。

微生物学的同定の注意点として、臨床現場で広く普及しているVitek 2などの自動同定機器では、C. gleumC. indologenesと誤同定する頻度が高いことが指摘されています。正確な菌種同定にはMALDI-TOF MSや16S rRNAシークエンスが必須とされています。

■予後と感染マネジメント

本菌感染症の粗死亡率は報告により6.3%から40.7%と幅広く、半数以上の症例で初期の不適切な抗菌薬投与が行われていました。しかし本菌自体の病原性は低く、患者の予後を規定する最大の要因は、抗菌薬の適正使用よりも宿主の免疫状態や基礎疾患の重症度といった宿主要因であると結論づけられています。

また、カテーテル関連血流感染症における留置デバイス抜去の要否については議論がありますが、血行動態の急速な悪化などがない限り、カテーテルを温存したまま適切な抗菌薬投与のみで軽快した報告もあり、必ずしも抜去を要しないとされています。

■薬剤感受性と推奨治療

Chryseobacterium属はクラスA βラクタマーゼおよびクラスBメタロβラクタマーゼを染色体性に産生するため、多くの広域βラクタム系抗菌薬に対して自然耐性を示します

  • 推奨されない抗菌薬: カルバペネム系、第3および第4世代セフェム系、フルオロキノロン系、およびピペラシリン・タゾバクタムに対する感受性率は非常に低く、いずれも治療への使用は推奨されていません。
  • 推奨される抗菌薬: 最も高頻度に分離されるC. indologenesに対するプール解析の結果、ミノサイクリンが83.2%、ST合剤が78.0%と良好な感受性を示しました。
  • Table 3(A): 各研究における感受性率の提示 組み入れられた12件の各研究が個別に報告した抗菌薬感受性率をパーセント表記で一覧にしています。各文献における感受性の傾向を個別に比較・把握する目的に適しています。
  • Table 3(B): 絶対数とプール解析結果の提示 各研究のデータを「感受性を示した分離株数 / 検査を実施した全分離株数」という分数形式で示しています。さらに表の最下段において、全研究の株数を合算した統合値、およびレビュー全体としての最終的な感受性率を算出・提示しています。

要するに、Aは各論文の結果をパーセンテージで一覧にしたものであり、Bは全体の結論となる統合された感受性率を算出するための基礎データ、およびその統合結果を示した表です。

結論として、in vitroの感受性データに基づき、現時点におけるChryseobacterium属感染症の最適な標的治療薬としてミノサイクリンおよびST合剤が推奨されています。また治療にあたっては、抗菌薬の選択だけでなく宿主の基礎疾患を含めた全身管理が極めて重要視されています。

Chryseobacterium indologenesによる中心静脈カテーテル関連血流感染症のケースレポート

Izaguirre-Anariba DE, Sivapalan V. Chryseobacterium indologenes, an Emerging Bacteria: A Case Report and Review of Literature. Cureus. 2020 Jan 21;12(1):e6720. doi: 10.7759/cureus.6720. PMID: 32104641; PMCID: PMC7032597. をご紹介します。

患者背景

  • 52歳男性(セネガル出身)。
  • 既往歴: 高血圧、うつ病、末期腎不全(血液透析歴10ヶ月)。
  • 過去の感染歴: 過去にアシネトバクター・バウマニによる中心静脈カテーテル関連血流感染症で2度の入院歴があり、直近はセフェピムによる治療を受けていました

■入院後経過

患者は末期腎不全に対する血液透析のアクセスとして、本来であれば動静脈瘻(AVF)の造設が望ましい状態でした。しかし、過去に複数回の中心静脈カテーテル関連血流感染症(CLABSI)の既往があったため、菌血症が完全に治癒して状態が安定するまでAVFの造設が延期されていました。直近ではAcinetobacter baumanniiによるCLABSIを発症しており、その治療の過程で、今回の入院の1ヶ月前に当時の長期留置型透析カテーテル(パーマキャス)が抜去されていました。その後、具体的な日時は明記されていませんが新たなパーマキャスが留置されており、今回はその新たなパーマキャス刺入部の瘙痒感や軽度の発赤、悪寒、全身倦怠感を主訴として受診し、入院となりました。

入院後の初期対応として、透析患者向けに用量調整されたメロペネム(500mg/日)による経験的治療が2日間行われました。正確な抜去日時は記されていませんが、このメロペネム投与が行われた初期対応のタイミングで、感染源と疑われたパーマキャスは直ちに抜去されています。

その後、来院時および透析センターで採取された計3セットの血液培養からクリセオバクテリウム・インドロゲネスが検出されました。感受性試験の結果、同菌はカルバペネム系に耐性を示した一方、キノロン系やピペラシリン・タゾバクタムなどに感受性が認められました。当初はレボフロキサシンの投与が検討されましたが、心電図でQT延長が確認されたため禁忌と判断され、ピペラシリン・タゾバクタム(2.25gを8時間ごと)による10日間の標的治療へと変更されました。

この入院期間中、抜去されたパーマキャスに代わり、一時的なシャイリーカテーテルを用いて血液透析が継続されました。適切な抗菌薬治療により臨床経過は改善し、経胸壁心エコー検査でも感染性心内膜炎を疑う疣贅は認められず、退院前に再評価として採取された2セットの血液培養も陰性化しました。

■培養


血液寒天培地上では特徴的な黄橙色のコロニーを形成して発育する一方で、マッコンキー寒天培地上では発育しておりません。

■本症例で検出されたChryseobacterium indologenesの感受性

Table 1は、本症例のパーマキャス(長期留置型透析カテーテル)挿入時の血液培養から分離された「カルバペネム耐性Chryseobacterium indologenes」の薬剤感受性試験(MIC値および判定)の結果をまとめた表です。

本菌は多剤耐性の傾向を示しており、多くの広域スペクトル抗菌薬に対して耐性と判定されています。

  • カルバペネム系: メロペネム(MIC >8)
  • セフェム系・モノバクタム系: セフェピム(MIC >16)、セフトリアキソン(MIC >32)、アズトレオナム(MIC >16)
  • アミノグリコシド系: アミカシン(MIC >32)、ゲンタマイシン(MIC >8)、トブラマイシン(MIC >8)

この結果により、患者が入院時に経験的治療として投与されたメロペネムや、直近の他菌種(Acinetobacter baumannii)によるCLABSI治療から継続して投与されていたセフェピムが、本菌に対しては無効であったことが裏付けられています。

参考文献

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