本記事では、たまに出くわすけれど、いつも診断に悩ませられる「NOMI」をメインに記載しました。
NOMIは特異的な症状がなく、しかも致死率も高い、個人的に非常に非常に嫌いな疾患です。造影CTでも所見が得られないこともしばしば。知らなければ疑えない疾患の上位にくるのがNOMIだと考えています。
なんとかして早期発見できないか、自戒の意味も込めてまとめました。
急性腸間膜虚血をきたす病態は4つ
急性腸管膜虚血とは、腸管に血液を送る血管(主に上腸間膜動脈)の血流が阻害されることで、腸管が虚血状態に陥る疾患です。頻度は緊急で手術になる症例の0.1~0.2%程度と稀ですが、致死率は50~80%と非常に高いという特徴があります。数時間で不可逆的な損傷を起こすこともあるため、迅速な診断と介入が求められる「時間との戦い」となる病態です。
■原因となる主な病態
- 塞栓による上腸間膜動脈(SMA)閉塞:心房細動などの塞栓素因がある患者に起こり、突然発症の腹部所見を伴わない重度の腹痛をきたします。
- 血栓によるSMA閉塞:動脈硬化の素因があり、ベースに慢性腸間膜虚血(食後の腹痛など)を抱える患者において、“acute-on-chronic”に腸間膜虚血が発生します。
- 門脈や上腸間膜静脈(SMV)の血栓症:静脈血栓症の素因、腹腔内感染、肝硬変や肝細胞癌などの素因がある患者で静脈に血栓ができ、還流障害により生じます。経過は突然のものから慢性経過までさまざまです。
- 非閉塞性腸管虚血(NOMI):心不全、透析、血管収縮薬の使用、脱水や低血圧などのリスク状態で、腸間膜の低灌流と血管収縮が起きて発症します。初期症状は軽度の悪心や腹痛、膨満感、せん妄など非特異的であることが少なくありません。NOMIを症状だけで診断するのは極めて困難です。
■診断と対応における重要なポイント
- 迷わず造影CT検査:腸間膜虚血を疑った場合は、鑑別や病態把握のためにできるかぎり早く造影CT検査を行うべきです。診断や管理ミスによる害は造影剤による害をはるかに上回るため、腎機能障害やメトホルミン内服を理由に造影CTをためらうべきではありません。
- NOMIに対する血管造影:NOMIは造影CTで異常が見つからないこともあり(約1/4が異常なしとする報告もあります)、造影CTで判別がつかなくてもNOMIの可能性があれば、速やかに血管造影を行うことが推奨されています。
- 血液検査による除外:乳酸やD-dimerの測定は除外診断に有用ですが、特異度が低く他の疾患でも上昇しうるため、患者の基礎疾患や臨床経過に応じて適切に使用することが重要です。

非閉塞性腸管虚血(NOMI;Non-occlusive Mesenteric Ischemia)
本記事では、個人的に最もやっかいな疾患と考えている、NOMIについて解説します。
NOMIを示唆する所見はない
NOMI(非閉塞性腸管虚血)の特徴は、「特異的なものがない(または非常にわかりにくい)」という点です。
原因となる状態(ショック、心不全、透析、脱水、低血圧など)や、疾患の進行度合い(軽症から重症まで)によって現れるサインは大きく異なります。
1. 初期症状・軽症例でみられる所見
- 身体所見に合わない腹痛: NOMIで最も多い症状は腹痛です。身体所見に比べて、患者が訴える痛みが不釣り合いに強い、持続的な腹痛が特徴とされることがあります。しかし、血管が完全に詰まる塞栓症と比べると、痛みの始まりがはっきりしなかったり、痛む場所が一致しなかったりします。また、患者の20〜30%は腹痛を訴えない(!!!)という報告もあります。
- その他の非特異的症状: 腹痛以外の初期症状としては、軽度の悪心、腹部膨満感などがあります。
- バイタルサイン・全身状態: 血圧の低下、発熱などがみられることがあります。また、腹部症状を伴わずに、せん妄や意識障害、原因不明の多臓器不全として現れることもあります。
2. 腸管壊死が進行した段階でみられる所見
- 腹部の膨満
- 腹膜刺激症状: 圧痛、反跳痛、筋性防御といった、持続的な腹膜所見が現れます。
【診断上の大きな落とし穴】 NOMIは、ICUに入室しているような重症患者、人工呼吸器管理や鎮静下にある患者、あるいはすでに意識障害やその他の深刻な基礎疾患を抱えている「もともと状態の悪い患者」に発生しやすいという特徴があります。このような患者は自ら腹痛などの症状を訴えることができず、臨床所見からの評価・診断自体が極めて困難になります。
そのため、上記のようなリスクを持つ患者が状態悪化をきたした場合には、腹痛や明確な身体所見がなくてもNOMIを疑い、速やかに造影CTなどの画像検査を行うことが重要とされています
NOMIの造影CT所見
Pérez-García C, de Miguel Campos E, Fernández Gonzalo A, Malfaz C, Martín Pinacho JJ, Fernández Álvarez C, Herranz Pérez R. Non-occlusive mesenteric ischaemia: CT findings, clinical outcomes and assessment of the diameter of the superior mesenteric artery. Br J Radiol. 2018 Jan;91(1081):20170492. doi: 10.1259/bjr.20170492. Epub 2017 Oct 27. より。
106例のNOMI(非閉塞性腸管虚血)患者を対象とした上記研究データによると、造影CT(血管造影相および門脈相)でみられる主な異常所見とその割合は以下の通りです。
【腸管および腸管壁の所見】
- 腸管壁の肥厚: NOMIにおいて最も頻度が高いCT所見であり、77%(82例)に見られます。
- 腸管壁の造影不良・欠損: 53%(56例)に認められます。腸管壊死と密接に関連する重要なサインです。
- 腸管の拡張: 51%(54例)に認められます。
- 腸管気腫症(壁内ガス): 39%(41例)に認められます。粘膜の壊死によって壁内にガスが漏れ出ている状態を反映しています。
- 粘膜の過剰造影: 約24%(25例)に認められます。
【血管・その他の腹部所見】
- 上腸間膜動脈(SMA)分枝の狭窄: 血管造影相において、主要なSMA分枝の起始部の不整や壁内血管の造影不良といった血管の攣縮(狭窄)サインが70%(74例)に認められます。また、過去のCT画像がある場合、SMAの最大径が有意に縮小している(平均1.93mmの減少)ことも早期診断に有用な所見です。
- 腹水: 約27%(29例)に認められます。
- 門脈内ガス: 22%(23例)に認められます。腸管気腫症のガスが腸間膜静脈から門脈系へと進行したことを示します。
- 気腹症(消化管穿孔による遊離ガス): 9%(10例)に認められます。壁の造影不良や腸管気腫症、門脈内ガスと同様に、腸管壊死と強く関連します。
【実質臓器の梗塞】 NOMIの鑑別において、他臓器の梗塞所見を伴うことは特異度の高い徴候となります。
- 脾梗塞: 23%(24例)
- 肝梗塞: 約16%(17例)
- 腎梗塞: 約12%(13例) ※稀に気腫性胆嚢炎(約1%)を合併することもあります。
【虚血の影響を受けやすい部位】
- 小腸: 全体の76%(81例)に虚血所見が見られ、そのうち回腸が最も多く47%(50例)、次いで空腸が29%(31例)です。
- 大腸: 左半結腸が54%(57例)、右半結腸が37%(39例)に虚血が見られます。胃の粘膜虚血が見られるケースもわずかに存在します(5例)。

NOMIの読影手順

1. 腸管壁の厚さを観察する(肥厚や菲薄化)
- 腸管壁は浮腫性の肥厚を示すことが多いですが、壊死が進行すると紙のように菲薄化している場合もあります。
2. 腸管壁の状態を観察する(壁内ガス・造影効果の欠如)
- 腸管壊死を示唆する重要な所見として、造影効果の欠如(壁の造影不良)や腸管壁内ガス(腸管気腫症)がないかを確認します。また、単純CTで壁が高吸収(壁内血腫)を示していないかも確認します。
3. 周囲の変化に注目する(血管内ガス・脂肪織の吸収値上昇)
- 腸管壊死を示唆するさらに重篤なサインとして、腸間膜静脈内や門脈内のガスがないかを探します。また、周囲の腸間膜脂肪織の吸収値が上昇していないかにも注目します。
4. 上腸間膜動脈・静脈の径に注目する(血管の狭小化)
- 血管自体の閉塞がなくても、血管の攣縮によるSMA(上腸間膜動脈)の狭小化(径の縮小)や、smaller SMV sign(上腸間膜静脈が動脈よりも細くなるサイン)が認められることがあり、診断の決め手になることがあります。ただし、これらのサインの頻度は必ずしも高くなく、非特異的であることにも留意が必要です。
■smaller SMV signはなぜ生じるのか
SMA領域の循環血液量が低下すると、そこから戻ってくる静脈血(SMVの還流量)も減少します。このとき、壁の薄い静脈(SMV)は血流低下によって潰れて断面積が小さくなりますが、壁の厚い動脈(SMA)は潰れにくいため、このような径の逆転が生じます。つまり、この所見はSMA領域の循環血液量が減少していることを示す徴候として知られています。
この所見は、NOMI(非閉塞性腸管虚血)の読影において注目すべきポイントの一つですが、SMA塞栓症や広範な絞扼性イレウスなどでも認められることがあるため、NOMIに特異的な所見ではありません。
また、実際にNOMIの症例においてこのサインが認められる頻度は低いと考えられています

【読影時の重要な注意点】
- 造影CTの限界と血管造影の考慮: 腸間膜虚血を疑った場合は直ちに造影CTを行うべきですが、NOMIは約1/4の症例で造影CTで異常が見つからないという報告もあります。そのため、造影CTで明らかな所見がなくてもNOMIが強く疑われる場合は、速やかに血管造影検査を行うことが推奨されます。
- 他臓器の梗塞の確認: 腸管だけでなく、脾臓、肝臓、腎臓などの実質臓器に梗塞(造影不良域)を伴っていないか確認することも、NOMIを疑う上で非常に有用なサインとなります。
NOMIの治療
私自身、保存療法での経験しかありませんが、参考文献的には保存療法以外にも治療法はあるようです。
■初期段階の内科的・保存的治療(腸管壊死がない場合)
腸管壁の虚血が部分的にとどまっている初期段階では、基本的には手術の適応とはならず、以下のような内科的治療が選択されます。
- 血行動態の改善と脱水補正: 全身の血流低下が原因であるため、まずは輸液による脱水の補正を行い、血行動態を安定させることが治療の第一目標となります。その際、腸管の虚血をさらに悪化させる恐れがあるため、全身性の血管収縮薬の使用は可能な限り最小限に抑える必要があります。
- 血管拡張薬などの投与: 腸間膜血管の強い収縮(攣縮)を解除するために、パパベリン塩酸塩などの血管拡張薬・鎮痙薬のカテーテルを用いた動脈内注入や、プロスタグランジンE1などの血管拡張薬、タンパク分解酵素阻害薬(プロテアーゼインヒビター)の投与が行われます。これにより、死亡率の低下や手術の回避、腸管切除範囲の縮小などが期待できます。
- 原疾患の治療: ショックや心不全など、NOMIを引き起こしている根本的な原因に対する治療も重要です。
■外科的治療
一方で、すでに腸管壊死が生じている、あるいは強く疑われる場合には、速やかな開腹手術(試験開腹および壊死した腸管の切除)が第一選択となります。具体的には、以下のいずれかに該当する場合に手術が検討されます。
- 腹膜刺激症状(腹部の圧痛、反跳痛など)や腹水が出現している場合。
- CT検査で腸管壁の壊死を示唆する明らかな所見(壁の造影不良、気腫症、門脈内ガスなど)が認められる場合。
- 乳酸アシドーシスなど、腸管壊死を示す血清マーカーの上昇や悪化が続く場合。
- 集中的な内科的治療を行っても、12〜24時間以内に臨床的な改善が見られない場合。
NOMIは状態が急変する可能性があるため、保存的治療を選択した場合であっても、定期的な腹部診察などによる極めて厳重なモニタリングが必須とされています
参考文献
- Pérez-García C, de Miguel Campos E, Fernández Gonzalo A, Malfaz C, Martín Pinacho JJ, Fernández Álvarez C, Herranz Pérez R. Non-occlusive mesenteric ischaemia: CT findings, clinical outcomes and assessment of the diameter of the superior mesenteric artery. Br J Radiol. 2018 Jan;91(1081):20170492. doi: 10.1259/bjr.20170492. Epub 2017 Oct 27. PMID: 28972809; PMCID: PMC5966212.
- 「非閉塞性腸管虚血(NOMI)の画像診断 – 壁内気腫のCT診断を中心として–」豊口裕樹ら,画像診断 Vol.43 No.12 2023.
- 「当院における上腸間膜動脈閉塞症4例の検討」宇治誠人ら,Japanese Journal of Acute Care Surgery 2013; 3: 50~54
- Clair DG, Beach JM. Mesenteric Ischemia. N Engl J Med. 2016 Mar 10;374(10):959-68. doi: 10.1056/NEJMra1503884. PMID: 26962730.


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