破傷風

内科
知らなければ疑えない

嫌気性菌である破傷風菌(Clostridium tetani)が産生する神経毒素(テタノスパスミン)によって,全身の骨格筋の強直性けいれんと持続的緊張をきたす重篤な感染性疾患です。
受傷後3日~3週間で発症し、発症した場合の致死率は20~50%とされています。

日本では、現在は年間約100人が破傷風を発病し、このうち5-9人は破傷風が原因で死亡しています。

発症から開口障害出現までを第1期、開口障害から全身強直性けいれん出現までを第2期、全身強直性けいれんが続く時期を第3期、回復期を第4期とよびます。

開口障害の出現から全身けいれん出現までの時間のことをonset timeといいます。onset timeが48時間以内の場合,予後不良といわれています。

先進国でまれなゆえに早期診断が困難で、初期には感冒や顎関節脱臼、脳卒中などと誤診されやすい特徴があります。

原因・疫学

外傷が先行することが多いですが、約30%は先行する外傷歴が明らかではない。そのため、外傷歴がないからといって破傷風を否定しないよう推奨されています。

破傷風によりICUに入室した70症例の後ろ向き研究では,園芸時に受傷した傷がきっかけとなった割合が半数近く(44%)を占めておりました(Mahieu et al. Ann Intensive Care. 2017)。

相模原周辺地域を中心に民家の庭,公道の路肩,大学構内敷地,山麓,および畑などから土壌を採取して C. tetani の分離を行ったところ、全検体(35 検体)に占める C. tetani の検出率は 22.9% であり,それらの菌株のうち 87.5% は破傷風毒素産生能を有していました(羽根田ら, 感染症誌 80:690~693,2006)。

ピアス・刺青・薬物(注射)が感染源となることもあります。

破傷風を疑う症状

わが国では、三種混合ワクチン(DTP)の定期予防接種が開始された1968年以前に生まれた年齢層での発症が大半であり、破傷風を疑う例ではワクチン接種歴を聴取するようにします。

前駆症状は、創傷部周辺の筋肉や、顎・項部のこわばり、寝汗などであり、不定愁訴や、肩凝り、感冒、顎関節脱臼などと誤診されやすい。

ときには原因不明の背部痛や、他疾患に併発した自律神経障害から診断されることもあります。

嚥下困難を初発症状とした症例もあるようです(岡田 知久ら, 日本内科学会雑誌 2015 年 104 巻 7 号 pp.1464-1469)。

5例の破傷風患者の主症状の持続日数をみると、開口障害は 27~41日で平均32日(全例),項部硬直は20~24日で平均22日(5例中4例,後弓反射は1~4日で平均2.5日(5例中2例),全身痙攣は2~7日で平均4.5日(5例中2例),交感神経過緊張状態(SOA)は2~3日で平均2.5日(5例中2例)でした(田部眞治ら J.Jpn.Soc.TMJ15(1):33~36.2003)。

その他、咽頭部の閉塞感や夜間睡眠中の咬舌の報告もあります(中村允也ら 口腔外科学会雑誌 1957年 Vol.3 No.3 pp.151-153)。

検査

破傷風は特異的な検査が存在せず、病歴と身体所見から診断する必要のある疾患です。

CT、MRIは診断に有用ではありません。

創部の細菌培養でC. tetaniが同定されなくても、破傷風は否定できない。したがって、C. tetaniの検出を目的としたルーチンの創部培養は推奨されていません。

治療

破傷風は、初期には呼吸不全や循環不全がなく安定しているようにみえても、集中治療室で治療すべき疾患です。

集中治療により予後が改善するので破傷風の治療に熟練した救命救急センターなどへ搬送するよう推奨されます。搬送にあたっては、気道確保されていることが重要です。

開口障害があり気管挿管が困難にみえても、文献的に破傷風の開口障害が挿管困難になるという報告はなく、非脱分極性筋弛緩薬を通常通り使用することで挿管可能です。

ペニシリンGあるいはメトロニダゾール(アネメトロ)の7~10日間投与が推奨される

抗破傷風ヒト免疫グロブリン(テタノブリン) 筋注(静注製剤もあり)(以下の表1に当てはまる患者に投与)

破傷風から回復しても免疫の獲得はないため、トキソイド(不活化ワクチン)の接種が推奨されます。(以下 表1に当てはまる患者に投与)。

表1

現在のワクチンスケジュール@日本

1967年以前に生まれた人は破傷風予防接種をほぼしていない!→破傷風を起こす可能性の高い創をみたら破傷風トキソイド(ワクチン)と抗破傷風ヒト免疫グロブリン(テタノブリン)は必ず接種します。

1967~1981年に生まれた人は接種していない可能性があります。

1982年以降の日本の予防接種スケジュールでは1歳までに3回接種しているはずです。

破傷風を起こす可能性の低い/高い創とは?

ACS:American College of Surgeons)の創分類(以下 表2)を参考にして対応を決めます。

表2

破傷風予防(抗破傷風ヒト免疫グロブリンやトキソイド)は全員に必要か?

創傷・咬傷に対する抗菌薬処方のみでは、破傷風の発症を予防できません
嫌気環境にしないことが重要であり、創処置(洗浄、異物除去、デブリードマン)が重要である。

上記表1とACS:American College of Surgeons)の創分類(上記表2を参考にして対応を決めます。

接種歴が明らかな小児の外傷に対しては破傷風予防(抗破傷風ヒト免疫グロブリン、DT、DPT、トキソイド)は不要

●処方例
・沈降破傷風トキソイド 1回0.5 mL 筋肉注射
・抗破傷風人免疫グロブリン 1回250IU 静注 もしくは 筋注

参考文献

  • Mahieu R, Reydel T, Maamar A, Tadié JM, Jamet A, Thille AW, Chudeau N, Huntzinger J, Grangé S, Beduneau G, Courte A, Ehrmann S, Lemarié J, Gibot S, Darmon M, Guitton C, Champey J, Schwebel C, Dellamonica J, Wipf T, Meziani F, Du Cheyron D, Kouatchet A, Lerolle N. Admission of tetanus patients to the ICU: a retrospective multicentre study. Ann Intensive Care. 2017 Nov 7;7(1):112. doi: 10.1186/s13613-017-0333-y. PMID: 29116572; PMCID: PMC5676569.
  • 相模原周辺地域における Clostridium tetani の分布調査 羽根田ら, 感染症誌 80:690~693,2006
  • 嚥下困難を初発症状とした破傷風の1例 岡田 知久ら, 日本内科学会雑誌 2015 年 104 巻 7 号 p. 1464-1469
  • 開口障害を主訴に受診した破傷風の5例 田部眞治ら J.Jpn.Soc.TMJ15(1):33~36.2003
  • 破傷風の1例 中村允也ら 口腔外科学会雑誌 1957年 Vol.3 No.3 pp.151-153
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