スタチンで筋痛がでたら即中止?

内分泌・代謝内科

日常診療において、心血管イベントの予防にスタチンは欠かせない薬剤ですが、「筋肉が痛い」「CKが上がった」といった理由で継続に悩むケースは少なくありません。今回は、スタチン関連の筋症状にどのように対応すべきか、そして代替薬の選択肢について、2つの重要な論文をもとに解説します。

■Wood FA, Howard JP, Finegold JA, et al. N-of-1 Trial of a Statin, Placebo, or No Treatment to Assess Side Effects. N Engl J Med. 2020.

■Jeeyavudeen MS, Pappachan JM, Arunagirinathan G. Statin-related Muscle Toxicity: An Evidence-based Review. touchREVIEWS in Endocrinology. 2022

  • スタチン開始後に筋肉痛の訴えがあった場合、まずは「ノセボ効果の可能性」を念頭に置き、安易な中止を避けることが重要
  • CK値を測定し、正常上限の4倍未満であれば継続や減量、親水性スタチン(プラバスタチン(メバロチン®)やロスバスタチン(クレストール®))への変更で対応する。
  • 一方で、CKが4倍以上に上昇した場合は速やかに中止し、エゼチミブやPCSK9阻害薬などの代替薬へ切り替える。

筋痛が生じたがCK上昇がない(または軽度)場合の対応

患者さんから「スタチンを飲み始めてから筋肉が痛む」と訴えられた場合、すぐに「薬が合わない」と判断してしまうのは早計かもしれません。

Woodらによれば、副作用のためにスタチンを自己中断した患者を対象にN-of-1試験を行った結果、スタチン内服時に生じた症状のなんと90%はプラセボ内服時でも同様に誘発される「ノセボ効果(思い込みによる症状)」であることが示されました。つまり、患者さんが感じている痛みの大部分は、薬剤の真の毒性ではない可能性が高いのです。

スタチン内服月(赤)」「プラセボ内服月(青)」「薬なし月(白)」の平均症状スコアをプロットした散布図である。スタチン内服月とプラセボ内服月のスコアがほぼ同じ高さに重なっている一方で、薬なしの月だけが明らかに低いスコアを示しており、患者が訴える症状の大部分が「薬を飲んでいる」という行為自体から生じるノセボ効果であることを視覚的に証明している

実際の対応として、Jeeyavudeenらによれば、CK値が正常上限の4倍未満の軽度な上昇であり、かつ患者さんが痛みを許容できる範囲であれば、スタチンの内服を継続しつつ慎重にCK値をモニタリングすることが安全とされています。 もし痛みが強く患者さんが耐えられない場合は、一度スタチンを中止して症状の消失を待ちます。その後、以下のいずれかの戦略で再開を試みることが推奨されています。

  • 用量を可能な限り減らす
  • 隔日投与にする
  • 親水性のスタチン(プラバスタチンやフルバスタチンなど)へ変更する

Jeeyavudeenらの論文によれば、アトルバスタチンやシンバスタチンなどの脂溶性スタチンは筋組織の細胞膜を通過しやすいため筋症状を起こしやすい傾向がありますが、親水性スタチンは筋細胞への移行が少ないため副作用を軽減できる可能性があります。

CKが明らかに上昇した場合の対応

一方で、血液検査で明確なCK上昇が認められた場合は、より慎重な対応が求められます。

Jeeyavudeenらによれば、CK値が正常上限の4倍を超えた場合、そして筋肉痛の有無に関わらず正常上限の10倍を超える著明な上昇を認めた場合は、直ちにスタチンの投与を中止すべきであると明記されています。このような高度なCK上昇は、特に高用量のスタチン治療を受けている患者で発生しやすいとされています。

スタチン継続が困難な場合の代替薬

スタチンの継続が難しい、あるいは中止せざるを得ないハイリスク患者において、LDLコレステロールの管理をどうするかは大きな課題です。

Jeeyavudeenらの論文によれば、筋肉に影響を与えにくい代替の脂質低下薬として、以下の薬剤を開始することが推奨されています。

  • エゼチミブ
  • ベンペド酸(Bempedoic acid)
  • PCSK9阻害薬(エボロクマブ、アリロクマブなど)
  • インクリシラン(小分子RNA治療薬)

特に実臨床で使いやすいエゼチミブについて、Jeeyavudeenらの論文によれば、スタチンの用量を単純に2倍にしてもLDLコレステロールは6%しか低下せず筋毒性のリスクを高めるだけですが、スタチンにエゼチミブ(10mg)を追加した場合は筋毒性のリスクを増やすことなくさらに17%のLDLコレステロール低下効果が得られると説明されています。

Rule of six(6の法則)」と呼ばれる概念。スタチンの投与量を2倍に増やしてもLDLコレステロールは6%しか低下せず、逆に筋肉毒性のリスクを上昇させてしまう。一方で、スタチンにエゼチミブを追加した場合は、筋肉毒性のリスクを高めることなくLDLコレステロールをさらに17%低下させることができる。

対応まとめ

■ステップ1:CK値による評価(症状の有無は問わない)

まずは血液検査のCK値を確認し、客観的な筋障害の重症度を評価する。この段階では、患者の筋肉痛の有無は問わない

CK値(正常上限[ULN]との比較)状態の評価(SRM分類)推奨される対応
4倍未満著明な筋崩壊なしスタチンの直ちの中止は不要。次の「ステップ2(症状の評価)」へ進む。
4倍以上 10倍未満筋炎直ちにスタチンを中止する。代替薬(エゼチミブなど)へ切り替える。
10倍以上重度筋炎 / 横紋筋融解症直ちにスタチンを中止する。腎機能などの評価を急ぎ、代替薬へ切り替える。

■ステップ2:CK値が「4倍未満」だった場合の、症状に応じた対応

ステップ1で「危険なCK上昇(4倍以上)がない」ことが確認できた場合のみ、患者の自覚症状(ノセボ効果を含む)の強さに応じて対応を決定する。

症状の有無・程度推奨される対応
症状なしスタチンをそのまま継続する。慎重にCK値をモニタリングする。
筋肉痛はあるが、耐えられるスタチンをそのまま継続する。慎重にCK値をモニタリングする。
筋肉痛が強く、耐えられない 一度スタチンを中止し、症状の消失を待つ。消失後、以下のいずれかの方法で再開を試みる。
・可能な限り用量を減らす
・隔日投与にする
・親水性スタチン(プラバスタチン(メバロチン®)やロスバスタチン(クレストール®))、またはフルバスタチン(ローコール®)といった筋肉への副作用が少ないスタチンへ変更する

まとめ

  • スタチン開始後に筋肉痛の訴えがあった場合、まずは「ノセボ効果の可能性」を念頭に置き、安易な中止を避けることが重要
  • CK値を測定し、正常上限の4倍未満であれば継続や減量、親水性スタチン(プラバスタチン(メバロチン®)やロスバスタチン(クレストール®))への変更で対応する。
  • 一方で、CKが4倍以上に上昇した場合は速やかに中止し、エゼチミブやPCSK9阻害薬などの代替薬へ切り替える。

コメント