甲状腺ホルモン生成の機序
- FT4(および大元となるT4)の生成機序
- 血中を循環するT4の100%は甲状腺で直接産生されます。
- 甲状腺の濾胞内で、酵素の働きによりヨウ素がサイログロブリンの特定の部分に結合し、それらが組み合わさることでT4が形成されます。
- 完成したT4はリソソームの働きによってサイログロブリンから切り離され、血中へ放出されます。
- FT3(および大元となるT3)の生成機序
- 甲状腺内でT4と同じプロセスで直接生成されるT3は、全体の約20%にすぎません。
- 残りの約80%は、肝臓や腎臓などの甲状腺以外の末梢組織で生成されます。
- 末梢組織に存在する脱ヨード酵素(1型および2型)の働きにより、血中のT4からヨウ素が1つ外される(脱ヨード化される)ことでT3へと変換されます。

FT3の測定精度はFT4に比べ劣る
T4(チロキシン)は甲状腺から直接分泌される主要なホルモンです。一方で、T3(トリヨードチロニン)の大部分(約80%)は、甲状腺以外の組織で酵素の働きによってT4から変換されて生成されるため、さまざまな身体の生理的・病理学的な影響を受けやすいという特徴があります。
検査の観点では、T3はT4に比べて血中の濃度が低く、タンパク質との結合力も弱いため、FT3(遊離T3)の測定は血中の遊離脂肪酸や薬の干渉を受けやすいとされています。
そのため、FT3の測定はFT4の測定に比べて精度や再現性が劣る傾向があります(Van Uytfanghe et al., Thyroid 33(9):1013-1028.2023)。

甲状腺機能のスクリーニングにFT3も計測すべきか
スクリーニングにおいて常にFT3(または総T3)を測定する必要はありません。甲状腺機能低下症が疑われる場合やTSHが高い値を示している場合、T3の値は正常範囲内に保たれることが多いため、T3測定の臨床的な意義は低いとされています。
しかし、TSHが基準値より低く抑えられており、甲状腺機能亢進症が疑われる場合にはT3の測定が有用です。甲状腺機能亢進症では血中のT3がT4よりも先に上昇するためです。
TSH、FT4の日内変動について
論文では、TSHの値を解釈する上で考慮すべき重要な要素として、年齢、性別、妊娠などの状態、服用している薬、人種、ヨウ素の摂取量などを挙げていますが、日内変動や概年リズムについては考慮すべき重要な変数ではないと明記されています(Van Uytfanghe et al., Thyroid 33(9):1013-1028.2023)。
FT4についても日内変動はほぼなく、常の臨床検査において測定時刻の違いを強く気にする必要はないと考えられます。
参考文献
- ハリソン内科学第5版 電子版
- Burch HB. Drug Effects on the Thyroid. N Engl J Med. 2019 Aug 22;381(8):749-761. doi: 10.1056/NEJMra1901214. PMID: 31433922.
- Van Uytfanghe K, Ehrenkranz J, Halsall D, Hoff K, Loh TP, Spencer CA, Köhrle J. Thyroid Stimulating Hormone and Thyroid Hormones (Triiodothyronine and Thyroxine): An American Thyroid Association-Commissioned Review of Current Clinical and Laboratory Status. Thyroid. 2023 Sep;33(9):1013-1028. doi: 10.1089/thy.2023.0169. Epub 2023 Sep 1. PMID: 37655789; PMCID: PMC10517335.


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