当直帯で「頭が痛い」と歩いて来られた方を診るとき、頭の片隅でずっと「これ、帰していいのかな」と考えている方は多いと思います。
先日、院内の頭痛レクチャーを聴く機会がありました。二次性頭痛の見逃しを防ぐ話が中心で、明日の外来からそのまま使える問診のコツがたくさんありました。自分の復習も兼ねて、印象に残ったところを書き残しておきます(レクチャーしていただいた先生には掲載を許可いただきました)。
SAHの記事や頸原性頭痛の記事も書いたのでご参照いただければ幸いです。
二次性頭痛はどれくらい紛れ込んでいるのか
二次性頭痛の割合は、救急外来で11.2〜33%、神経内科で18%。プライマリ・ケアでは6%で、その85%は副鼻腔炎なので、それを除くと1%程度です。
つまり、同じ「頭痛」でも、救急外来に来た時点で重篤な疾患の事前確率はかなり上がっています。外来の感覚のまま救急で頭痛を診ると、足をすくわれます。
SNNOOP10 listのうち10項目を救急外来の頭痛患者5,293人で検証した研究では、どれか1つでも当てはまった場合の感度は96.5%、特異度は5.1%でした(Emerg Med J. 2024;41:368-375)。

拾い上げには使えても、これだけで絞り込むことはできません。特に重要だと強調していたのは次の5つでした。
- 神経脱落症状が今ある、または受診前にあった
- 50歳以上で初めての頭痛(50歳以上で初発の片頭痛はない)
- 1週間以内の頭部外傷
- 悪性腫瘍の既往
- 免疫抑制状態
「頭痛で目が覚めた」も要注意です。
■ 頭蓋内圧亢進による頭痛では朝の起床時に強く、日中は軽くなる。
4S:Swelling(頭蓋内圧亢進)SAH、Seizure、SAS
朝の起床時に強く、日中は軽くなる頭痛は、横になることで頭蓋内圧亢進が悪化しているサインかもしれません。
くも膜下出血:「突然でしたか?」ではなく「ピークまで何分?」
「突然の頭痛」は思ったほど役に立たない
突然の頭痛でCTを撮って、実際にSAHだったのは2.7%でした(Eur J Emerg Med 2016)。
メタ解析(Acad Emerg Med 2016)の尤度比をみてみると突然の頭痛の尤度比(LR)がイマイチということがわかります。
| 所見 | 尤度比 |
|---|---|
| 項部硬直 | LR+ 6.59 |
| 頸部痛 | LR+ 4.12 |
| 「突然の頭痛」 | LR+ 1.3(感度58%、特異度50%) |
| 人生最悪の頭痛ではない | LR− 0.36 |
| 発症からピークまで1時間以上 | LR− 0.06 |
一番効くのは「ピークまでの時間」です。1時間以上かけてじわじわ強くなった頭痛なら、SAHの可能性はかなり下がります。逆に、SAHのピークまでの時間は平均6〜9分で、痛みの強さは平均8.7/10でした(BMJ 2011)。「突然でしたか?」と聞くと、患者さんはたいてい「はい」と答えてくれます。聞くべきなのは「痛くなり始めてから、一番痛くなるまで何分くらいでしたか?」の方です。
なお、尤度比は、その所見があると病気の可能性が何倍になるかを表す数字です。
- 1より大きい:病気らしさが上がる(10なら、かなり上がる)
- ちょうど1:何も変わらない(聞いても聞かなくても同じ)
- 1より小さい:病気らしさが下がる(0.1なら、かなり下がる)
「突然の頭痛」のLR 1.3は、ほぼ1なので役に立ちません。「ピークまで1時間以上」のLR 0.06は、病気らしさを約17分の1に縮めるので、強い否定材料になります。
発症時の状況にこだわる
雷鳴頭痛で聞いておきたいことは、次のあたりです。
- 何をしている時に始まったか
- それまでしていた作業を続けられたか
- ピークまで何分か、痛みの強さ
- 首の痛み、項部硬直、嘔吐、意識消失
- 一時的に良くなったか
患者さんの「いつも」「普通」「ずっと」「突然」は、こちらが想像しているものとは違います。「以前にも同じような頭痛はありましたか?」「これくらい痛いのは1か月前にありました」「じゃあ片頭痛ですね」という流れは典型的な落とし穴で、その1か月前の頭痛が警告出血だった可能性があります。片頭痛の既往があってもなくても、SAHの頻度は変わりません。若年でも原因はやはり動脈瘤が多い、という点も改めて確認されました。
SAHは痛みが引くことがある
これは意外と忘れがちだと思います。動脈瘤が破れても、血餅で一時的に止まると痛みが軽くなります。「痛み止めで楽になりました」「今は痛くないです」は、SAHを否定する材料になりません。
- SAHの10〜40%に警告出血がある
- 本破裂の2〜8週前にわずかに出血している
- 見逃すと、その半数が死亡または重度の後遺症に至る(N Engl J Med 2017)
眼の奥の刺すような痛みと頸部の圧痛があり、「痛み止めで楽になった」ことから経過観察となって、結果的にSAHの警告症状を見逃した判例(大阪地裁 平成18年2月10日)もあります。受診時の元気さより、発症した瞬間の痛みを重視します。
CTが陰性になりうる4つの状況
首から上の突然の痛みは、全例頭部CTが基本です。発症6時間以内のCTの感度はほぼ100%ですが、6時間を過ぎると85.7%まで下がります。
SAHなのにCTが陰性になりやすいのは、次の4つです。
- 警告出血(出血量が少ない)
- 発症から6時間以上経っている
- Hb 7 g/dL未満の高度貧血(出血が目立たない)
- 読影の見落とし
6時間以内でも、失神や頸部痛を伴う場合はCTだけで安心しない方がよい、とのことでした。
腰椎穿刺か、MRAか
海外のガイドラインは、CT陰性例に腰椎穿刺を勧めています(AHA/ASA 2023では、6時間以内はCTで除外、6時間以降は腰椎穿刺)。ただ、腰椎穿刺には限界もあります。
- CT陰性例2,248人に腰椎穿刺をして、意味があったのは9人(0.45%)。NNDは250(Acad Emerg Med 2015)
- traumatic tapが10〜30%、腰椎穿刺後頭痛が4〜10%
- キサントクロミーの感度は83%。出血から12時間以上経たないと出てこない
海外ガイドラインは、背景にある医療事情の違いに注意が必要です。人口100万人あたりのCT台数は、日本116台に対して米国43台、英国10台(2020年)。MRIも日本は突出して多く、すぐに撮れます。病歴がSAHらしいのにCTが陰性なら、MRAで動脈瘤を探しにいく方が、日本では現実的な選択肢になる場面がある、という話でした。
MRIは発症早期のSAHそのものの検出はやや苦手で(FLAIRの感度は発症3日以内で82%)、MRAは3mm以上の動脈瘤で感度95%です。「出血を見る」のと「動脈瘤を探す」のは別物、と整理しておくと混乱しません。
痛くないSAH、別の病気に見えるSAH
SAHの3.8〜13%は頭痛を訴えません。嘔気・嘔吐、めまい、強い眠気、「後頭部に何か浮いているような感じ」、首や肩のこり、さらには腰痛として受診することもあります。血液が脊柱管内へ下りて腰痛として出ることがあります(ちなみに私は、過去に『肩こりがする』という主訴に騙されたことがあります。。。)
誤診例として、嘔吐から消化器疾患、心電図変化から心疾患、そして片頭痛や緊張型頭痛と誤られます。誤診例の55%はCTを撮っていませんでした。ちなみに、緊張型頭痛で嘔気は出ません。「肩こりの頭痛で吐いている」は、それだけで立ち止まる理由になります。
心電図にも騙されます。SAHでは50〜100%に心電図異常が出て、巨大陰性T波(cerebral T)、QT延長、たこつぼ様の変化、神経原性肺水腫まで起こります。心肺停止から蘇生した方の心電図が心筋梗塞のように見えても、頭部CTを忘れないようにしたいところです。

(CC BY 4.0:https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ )
動脈解離:後頭部痛とTIAの組み合わせ
椎骨動脈解離
後頭部痛に、TIAを繰り返すエピソードが加わったら、椎骨動脈解離を考えます。解離した内膜にできた血栓が飛んで、TIAや梗塞を繰り返すためです。
- 頭痛から神経症状が出るまで、十数時間〜2週間のタイムラグがある
- 痛みを我慢して、神経症状が出てから受診することが多い
- 90%に脳虚血症状(Wallenberg症候群など)を伴う
Wallenberg症候群は触覚が保たれるので、指やティッシュで触るだけでは異常が分かりません。アルコール綿で冷たさを、綿の角でチクチクした痛覚を確かめると、左右差が見つかります。
首を強くひねる動作、頸部のマッサージ、美容院での洗髪時の後屈、長時間の不自然な姿勢も誘因になります。高い枕で椎骨動脈が引き伸ばされる「Shogun pillow syndrome(殿様枕症候群)」という変わった症候群も存在します(高さ15cm以上の枕)。
内頸動脈解離との違い
| 内頸動脈解離 | 椎骨動脈解離 | |
|---|---|---|
| 痛みの部位 | 前頭部 | 後頭部 |
| 随伴症状 | Horner症候群(約50%)、一過性黒内障 | 回転性めまい、失調 |
| 虚血 | 脳梗塞、網膜梗塞 | 脳梗塞、Wallenberg症候群 |
どちらも片側の頭痛±頸部痛で、若年、外傷、結合織疾患、妊娠・産褥期が背景になります。
大動脈解離が「頭痛」で来ることがある
突然の後頭部痛で受診し、頭部CT・心電図・トロポニンが正常だったため片頭痛と診断された大動脈解離の見逃し例も紹介されました。帰り際に「そういえば胸も痛かった」と言っていたそうです。
患者さんは「痛みが移動した」とは言ってくれません。「首も痛かった」「胸も痛かった」「背中も痛かった」と、別々の痛みとして話します。首の上下、胸の上下に痛みがあったかどうかは、こちらから聞きにいく必要があります。
産褥期の頭痛は「裂ける・詰まる・上がる」で考える
- 動脈が裂ける:脳出血、SAH、動脈解離(大動脈・内頸・椎骨)、冠動脈解離
- 静脈が詰まる:脳静脈洞血栓症、深部静脈血栓症・肺塞栓
- 血圧が上がる:PRES、RCVS、子癇
疾患名を丸暗記するより、妊娠・産褥期の凝固能亢進、循環血液量の増加、血圧の変動という病態から考えると、頭痛だけでなく胸痛や失神にも同じ枠組みが使えます。
脳静脈洞血栓症(CVT)
- 50歳以下の女性に多く、平均39歳
- 背景:妊娠・産褥期、経口避妊薬、癌、頭頸部感染症、脱水、凝固亢進
- 頭痛は90%にあるが、雷鳴頭痛は5%だけ。痙攣40%、局所神経症状20%、頭痛のみも15%
- D-dimer陰性の尤度比は0.03
問診では「横になると痛い」「いきむと痛い」「頭を下げると痛い」といった、頭蓋内圧が上がる姿勢での悪化を聞きます。画像では、動脈の支配域と一致しない出血や、両側性・多発性の微妙な出血を見たら、MRVやCT venographyに進みます。
RCVS:画像ではなく病歴で診断する
片頭痛の既往がある45歳の女性が、数日のうちに雷鳴頭痛を何度も繰り返していて、CTもMRIも正常。片頭痛としてトリプタンを出したくなる状況ですが、レクチャー内での答えは「病歴・病歴・病歴」でした。
RCVSを疑う病歴は次のようなものです。
- 数秒〜数分でピークに達する雷鳴頭痛を、何度も繰り返す
- 入浴、シャワー、洗髪で誘発される
- 性行為、いきみ、運動で悪化する
- 普段より血圧が高い(普段110なのに150台、など)
背景には、SSRI、妊娠・産褥期、片頭痛(30〜40%)があります。トリプタンとSSRIは禁忌で、治療はCa拮抗薬と誘因の除去です。
厄介なのは、最初の画像が正常のことが多い点です。初回のCT・MRIは55%で正常で、あとから81%に異常が出てきます。教科書でおなじみの「string and beads」は発症直後には見えず、10日〜2週間後のMRAで分かることが多いそうです。

いわゆる「string of beads(数珠状)」「sausage-on-a-string」の所見です。出典:Kim SA, et al. J Headache Pain. 2025;26:89. Fig. 1
(CC BY 4.0:https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ )
経過の中では、多発性狭窄(84.0%)、脳梗塞(47.6%)、脳出血(主にSAH、35.1%)も起こります。動脈瘤のないSAHの背景にRCVSが隠れていることもある、というのは覚えておきたいところです。
PRESとの違い
PRES(可逆性後頭葉白質脳症)は、RCVSよりも末梢の血管の攣縮と、血管透過性の異常が主体です。高血圧性脳症、子癇、免疫抑制薬、腎障害が背景になり、頭痛・痙攣・意識障害・視覚異常で来ます。雷鳴頭痛はまれで、MRIのT2・FLAIRで後頭葉中心の浮腫が見えます。
雷鳴頭痛の鑑別は「STAR」
最後に、雷鳴頭痛の鑑別としての語呂です。
- S:SAH(警告出血を含む)
- T:Thrombosis(脳静脈洞血栓症)
- A:Artery dissection(動脈解離)、Apoplexy(下垂体卒中)
- R:RCVS
これに、特発性低髄圧症候群、特発性頭蓋内圧亢進症、第三脳室コロイド嚢胞が加わります。
明日の外来で意識したいこと
レクチャー全体を通して繰り返されていたのは、「病歴は画像に勝る」というメッセージでした。
- 「突然でしたか?」ではなく「ピークまで何分?」と聞く
- 「今は痛くない」「痛み止めで楽になった」でSAHを除外しない
- 発症6時間以降、警告出血、高度貧血ではCTが陰性になりうる
- 後頭部痛+TIAの繰り返しは椎骨動脈解離を考え、温痛覚まで診る
- 首や胸の痛みを「別の痛み」として話されたら、大動脈解離を思い出す
- 妊娠・産褥期の頭痛は「裂ける・詰まる・上がる」
- 雷鳴頭痛を繰り返すなら、画像が正常でもRCVSを考える
参考文献
- Emerg Med J. 2024;41:368-375.(SNOOPYの感度・特異度)
- Eur J Emerg Med. 2016;23:356-362.(突然の頭痛とSAH)
- Acad Emerg Med. 2016;23:963-1003.(SAHの所見の尤度比)
- BMJ. 2011;343:d4277.(SAHのピークまでの時間と痛みの強さ)
- N Engl J Med. 2017;377:257-266.(警告出血)
- Acad Emerg Med. 2015;22:1267-1273.(CT陰性例の腰椎穿刺)
- Lancet. 2017;389:655-666.(雷鳴頭痛)
- Kim SA, et al. J Headache Pain. 2025;26:89(String and beadsの画像)


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