フロセミド(商品名:ラシックス)は、心不全や腎不全、肝硬変などによるうっ血や体液過多の解除、また重症患者の輸液管理において非常に重宝されるループ利尿薬です。
院内勉強会で学んだことをメモしました。
1. どういうときにフロセミドを使うのか(適応とタイミング)
- 心不全や体液過多の解除: 全身のうっ血や体液過多(特にWarm & Wetの心不全など)を改善するために使用される。
- 重症患者の輸液管理(De-escalation期): 敗血症などの重症患者では、治療の経過とともに血管外に漏れ出ていた水分が血管内に戻ってくる「De-escalation期」が訪れる。心臓や腎臓の機能が良好であれば自然に利尿がつくが、機能が悪いと自然な利尿がつかないことがある。このような場合に、水分の排出を補助する目的で使用される。
- 利尿のベストなタイミング: エコー検査などで「血行動態的うっ血」が出始めている(血管内に水が戻りだしているサイン)にもかかわらず、尿量が不十分な時が、理論的に利尿薬を使用する良いタイミングとされている。
2. フロセミド投与のコツ
効果的にフロセミドを効かせるためには、以下のポイントを押さえることが重要
- 初期投与量の決定: 腎機能が正常であれば、静注で0.5〜1A(1A=20mg)から開始する。腎機能が悪い場合は、「血清クレアチニン(Cre)値 × A」が初期投与量の目安となる(例:Cre 2.0 mg/dLなら2Aから開始)。
- 倍々投与法で「適切な1回量」を探る: 静注後15〜30分で利尿反応が出始める。投与から1〜2時間後に尿量をチェックし、目標尿量に達していない場合は、漫然と同じ量を追加しても効果はあまり・・。反応が乏しければ前回の投与量を「倍」に増やして再度反応を見る、というプロセスを繰り返し、適切な1回量を探る。
- 最大投与量の目安: 推算糸球体濾過量(eGFR)が20〜50 mL/分程度なら1回80 mg、eGFR 20 mL/分未満の進行した腎不全なら1回200 mgが最大の目安とされている。
- 1日複数回投与と塩分制限: ラシックスという名前は「last six hours(6時間作用が続く)」に由来するように、作用時間が短く(静注で約2時間(!)、内服で約6時間)設定されている。薬が切れている残りの時間で、腎臓は反動でナトリウム(Na)を再吸収しようとする。そのため、決定した1回量を1日2〜3回に分けて複数回投与すること、そしてNaの再吸収を防ぐために塩分制限をしっかり行うことが必須。
3. 目標とする尿量
フロセミドを投与した後、目標とする尿量は状況によってケースバイケースだが、以下を参考に。
- 最低限の目標: 最低でも「50 mL/時以上」の尿量を確保できているかを確認する。
- うっ血や体液過多が目立つ場合: 心不全などでしっかり水分を抜きたいケースでは、「100〜150 mL/時以上」が目標となる。
フロセミド投与後1〜2時間でこれらの目標尿量に到達していない場合は、前述の「倍々投与法」に従って投与量の増量を検討する。
【補足:高ナトリウム血症への配慮】
フロセミドによって排出される尿(反応尿)は、尿中のNa濃度が60〜90 mEq/L程度であり、生理食塩液と自由水が半々に混ざった「1/2生食(half normal saline)」のような組成をしている。つまり、尿として体外に「自由水」が多く排出されるため、使い続けると体内のNa濃度が相対的に高くなり、高ナトリウム血症を引き起こすリスクがある。これを防ぐため、排出された反応尿の半分量の自由水を補う目的で、5%ブドウ糖液などの輸液を併用してバランスをとる戦略も有効。



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