ノルアドレナリンの使い方

循環器

敗血症性ショックにおけるノルアドレナリンの使い方について、院内勉強会での内容をまとめました。個人的なメモですのであしからず・・。

1. 血圧の目標は「MAP ≧ 65 mmHg」

ノルアドレナリンを使用する最大の目的は、臓器への血流を維持することである。そのための最低限の指標として、「平均動脈圧≧ 65 mmHg」を目標とし、これを死守する。 逆に、状態が改善して薬の減量を検討する目安としては、目標値に10%程度の余裕をもたせた「MAP 70 mmHg」を超えて安定している状態が推奨される。

2. 末梢ルートからの投与は「条件付き」で可能

かつては「ノルアドレナリンを使うなら中心静脈カテーテル(CVC)が必須」とされていた。しかし現在では、血圧の担保を急ぐために末梢静脈ルートからの投与開始が許容されている。 ただし、血管外漏出による組織壊死のリスクがあるため、以下のルールを厳守する必要がある。

  • 太さと場所: 22G以上のルートを前腕で確保する
  • 観察: 投与中は4時間ごとに輸液漏れがないかチェックする
  • 限界: 最大投与速度は0.2γまで、期間は最大48時間までとする(これらを超える場合はCVCへ切り替える)

3. 投与量計算(γ計算)を楽にするには3Aを生食47mLに希釈

ノルアドレナリンの投与量は「γ(ガンマ=1μg/kg/分)」で表されるため、計算が煩雑になりやすい。そこでおすすめなのが、多くの施設で採用されている「3A溶き」という希釈方法である。

  • 3A溶き: ノルアドレナリン3A(3mL) + 生理食塩水 47mL = 合計 50mL この希釈法を使うと、「患者の体重 ÷ 10 (mL/時) = 0.1γ」というシンプルな法則が成り立つ。例えば、体重60kgの患者なら「60÷10=6 mL/時」に設定するだけで、暗算で簡単に0.1γの投与が開始できる。 他にも、水分負荷を減らしたい場合の「5A溶き(5A+生食45mL)」や、少量準備の「1A生食20溶き」などもあるが、まずは自施設のプロトコルを要確認。

4. 投与量の調整は「上げる時は迅速に、下げる時は慎重に」

ノルアドレナリンの半減期は数分程度と短いが、投与量の調整(漸増・漸減)にはメリハリをつけることが重要である。

  • 漸増: ショック状態は緊急事態であるため、悠長に待たず、5分単位程度で迅速に増量し、目標血圧まで素早く引き上げる。
  • 漸減: 安全域を考慮し、30〜60分ほどの間隔を空けながら、0.02〜0.03γずつ慎重に下げていく。

5. 「0.2γの壁」を意識する

ノルアドレナリンに絶対的な適正値はないが、臨床現場では「0.2γ」が一つの大きな目安として扱われている。 投与量が0.2γに到達した場合、漫然と増量するのではなく、CVCへのルート切り替えや、バソプレシン(抗利尿ホルモン)、ステロイドといった他の薬剤の併用を検討するタイミングとなる。MAP ≧ 65 mmHgを死守しつつ、なるべく0.2γ未満に収まるように管理していくのが理想的である。

コメント