「血管内カテーテル関連感染症の診断と治療に関する実践的臨床ガイドライン : 米国感染症学会による 2009年改訂版」より、まとめました。
CRBSIの定義
IDSA2009年ガイドラインにおける「カテーテル関連血流感染症(CRBSI)」の定義は、以下の「大前提となる条件」を満たした上で、3つの「微生物学的な確定基準」のうち少なくとも1つを満たす状態とされています。
【大前提となる条件(すべて満たす)】
- 血管内デバイス(カテーテル)が留置されている患者であること。
- 末梢静脈から採取した1セット以上の血液培養が陽性(菌血症または真菌血症)であること。
- 感染の臨床症状(発熱、悪寒、血圧低下など)を認めること。
- カテーテル以外に、その他の明らかな血流感染源が存在しないこと。
【確定のための微生物学的基準(以下のうち1つを満たす)】
- カテーテル先端培養との一致: 末梢血液培養と同じ微生物(同種)が、カテーテル断片の半定量培養(ロールプレート法)で「15 CFU以上」、あるいは定量培養(超音波処理など)で「100(10^2) CFU以上」認められる。
- 菌量の比較(定量血液培養): カテーテルからの逆血と末梢静脈の同時定量血液培養において、カテーテル由来の菌量が末梢血由来の「3倍以上(3:1以上)」である。
- 陽性化の時間差(DTP:Differential time to positivity): カテーテルハブから得た血液培養が、同時に採取した同量の末梢血培養に比べて「少なくとも2時間以上早く」陽性化する。
CRBSIで多いのはCNSと黄色ブドウ球菌
カテーテル関連血流感染症(CRBSI)で検出されることが多い原因微生物は、留置されているカテーテルの種類や患者の年齢によって傾向が異なります。ガイドラインに記載されている検出頻度が高い菌は以下の通りです。
■経皮的に留置され、カフのない一般的なカテーテルの場合(短期留置型CVCなど)
- コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)
- 黄色ブドウ球菌
- カンジダ属
- 腸内グラム陰性桿菌
■外科的に留置したカテーテルや末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)の場合 」
- コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)
- 腸内グラム陰性桿菌
- 黄色ブドウ球菌
- 緑膿菌
3. 小児および新生児の場合
- 小児のCRBSI: 最多はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌で全症例の34%を占め、次いで黄色ブドウ球菌(25%)が続きます。短腸症候群の小児に限ると、グラム陰性桿菌によるCRBSIがより多くなります。
- 新生児のCRBSI: 同様にコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が最多で51%を占め、これにカンジダ属、腸球菌、グラム陰性桿菌が続きます。
いずれのケースにおいても、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が最も頻度の高い原因菌となっています。経験的治療を開始する際は、このCNSのほとんどがメチシリン耐性であることを考慮してバンコマイシンなどの抗菌薬を選択することが重要となります。
CRBSIを疑ったらまず何をする?
CRBSIを疑ったら、必ず末梢血とカテーテルから血液培養をそれぞれ1セット採取し、培養陽性までの時間を確認する。そしてEmpiricalに抗菌薬治療を開始する(CNSや黄色ブドウ球菌が多いのでまずはバンコマイシンが第1選択です)。

培養結果と診断の組み合わせ表
| 末梢血 | カテ血(逆血) | カテ先培養 | 【重要】診断を分ける追加条件 | 診断結果 |
|---|---|---|---|---|
| 陽性 | 未採取 or 陽性 | 陽性 | カテ先の菌量が有意である (15 CFUより多いなど) | CRBSI |
| 陽性 | 陽性 | 未提出(温存) | カテ血の菌量が末梢の3倍以上、または2時間以上早く陽性化 | CRBSI |
| 陽性 | 陽性 | 未提出(温存) | 上記の「3倍以上」や「2時間以上」の条件を満たさない | 菌血症 |
| 陽性 | 未採取 or 陽性 | 陰性 | カテ先の菌量が有意ではない(15 CFU未満など) | 菌血症 |
| 陰性 | 未採取 or 陽性 | 陽性 | 末梢血に菌が回っていない | 定着 |
| 陰性 | 陽性 | 未提出(温存) | 末梢血に菌が回っていない | 汚染or定着 |
※注:全てのパターンにおいて、「それぞれの検体から『同じ菌』が検出されていること」が前提となります。
カテーテル先端(カテ先)培養の提出・検査方法
1. 大原則(提出のタイミングと避けるべき手法)
- ルーチン提出の禁止: カテ先培養はCRBSIを疑ってカテーテルを抜去した際のみ行い、ルーチンでの培養提出は推奨されません。
- 定性培養の禁止: 菌の有無のみを見る「定性培養(液体培地にそのままポチャっと入れる等)」は推奨されていません。
2. 提出する長さと推奨される培養手法(カットオフ値)
抜去したカテーテル先端の5cm を切り取って微生物検査室へ提出します。検査室では以下のいずれかの手法で評価されます。
- 半定量培養(ロールプレート法): 短期留置型カテーテルにおいて、ルーチンの臨床微生物検査として推奨される手法です。寒天培地上でカテ先を転がしてカテーテル外表面の菌を培養し、15 CFU(コロニー形成単位)より多い場合に陽性(カテーテルへの菌定着)と判定します。
- 定量液体培養(超音波処理法など): 液体中で超音波をかけ、カテーテル内腔の菌も剥離させて培養する手法です。100 CFU より多い場合に陽性と判定します。
3. デバイス別・状況別の提出の注意点
抗菌薬・消毒薬コーティングカテーテル: 培養時にカテ先から溶け出した抗菌成分によって菌の発育が抑えられ「偽陰性」になるのを防ぐため、特異的な阻害剤(不活化剤)を培地に入れるよう検査室と連携する必要があります。
一般的なCVC: (皮下トンネルを作成している場合でも)皮下留置部分ではなく、カテーテル先端を培養に提出します。
肺動脈カテーテル: 感染を疑って抜去する場合、カテーテル本体ではなくイントロデューサーの先端を培養に提出します。
CVポート(完全埋込デバイス): カテーテル先端の培養に加えて、ポートのリザーバー内容物も定性培養に提出します。
CRBSIの治療
1. 経験的治療の選択
血液培養(カテーテルと末梢静脈から各1セット)を採取した後、速やかに開始します。施設のアンチバイオグラムや患者の重症度、リスク因子を考慮して選択します。
- グラム陽性菌カバー: MRSAの頻度が高い施設ではバンコマイシンを推奨します。バンコマイシンのMICが2μg/mLを超えるMRSAが多い施設では、ダプトマイシンなどの代替薬を検討します。なお、リネゾリドは経験的治療(CRBSI確定前の疑い例)には使用すべきではありません。
- グラム陰性桿菌カバー: 第4世代セファロスポリン、カルバペネム、β-ラクタマーゼ阻害剤配合薬などを重症度等に応じて選択します。好中球減少、重症敗血症、多剤耐性菌の保菌者、鼠径部カテーテル留置の重症例では、感受性が判明しde-escalationできるまで、異なる2クラスの抗菌薬による併用療法を行うべきです。
- カンジダカバー: 中心静脈栄養(TPN)、広域抗菌薬の長期使用、血液悪性腫瘍、移植後、鼠径部カテーテル、複数部位のカンジダ保菌などのリスクを持つ敗血症患者には、経験的にエキノキャンディン系薬の投与を開始します。
2. カテーテルの抜去と温存の適応
原因菌およびカテーテルの種類によって抜去の要否を判断します。
- 抜去すべき病原体: 黄色ブドウ球菌、緑膿菌、真菌、抗酸菌の場合は、カテーテルの種類(短期・長期)を問わず、原則として抜去すべきです。短期留置型の場合は、これに加えて腸球菌やグラム陰性桿菌でも抜去が推奨されます。
- 抜去すべき臨床状況: 重症敗血症、化膿性血栓性静脈炎、感染性心内膜炎、あるいは適切な抗菌薬を開始しても72時間以上血流感染(血液培養陽性)が持続する場合は、いかなる菌であっても抜去すべきです。
- 温存が可能なケース: 代替血管の確保が困難な透析患者や短腸症候群などの非複雑性CRBSIにおいて、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)や一部のグラム陰性桿菌など(上記「抜去すべき病原体」以外)が検出された場合は、カテーテルを温存し、全身抗菌薬投与と抗菌薬ロック療法を併用して治療を試みることが可能です。
3. 治療期間の原則と起炎菌別アプローチ

抗菌薬の治療期間は、「血液培養が陰性化した最初の日」を治療開始1日目としてカウントします。治療終了後のルーチンの血液培養再検はエビデンスが不十分とされています。
■非複雑性(心内膜炎、血栓性静脈炎などの合併がない)の場合の治療期間の目安は以下の通りです。
- 黄色ブドウ球菌: 原則としてカテーテルを抜去し、4〜6週間の全身投与を行います。ただし、糖尿病や免疫不全がない、人工デバイス留置がない、抜去済み、治療開始72時間以内に解熱・菌血症消失、経食道心エコー(TEE)で心内膜炎否定などの厳格な条件を全て満たす場合に限り、最低14日間への短縮が考慮されます。
- →黄色ブドウ球菌に関する記事もご参照ください
- コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS): 抜去した場合は5〜7日間、カテーテルを温存して抗菌薬ロック療法を併用する場合は10〜14日間の投与とします(CNSのみ、抜去せず抗菌薬+抗菌薬ロック両方を検討してよいです)。
- 腸球菌・グラム陰性桿菌: 抜去・温存(ロック療法併用)いずれの場合も、7〜14日間の投与が推奨されます。
- カンジダ属: 抜去し、最初の血液培養陰性化から14日間の抗真菌薬投与(1stはミカファンギン)を行います。抜去後に臨床症状が改善した場合でも、全例で抗真菌薬の投与が必要です。そして眼科受診を全例行います(カンジダ眼内炎除外のため)。
- →カンジダ腎盂腎炎に関する記事もご参照ください。
4. 抗菌薬ロック療法(ALT)
カテーテル挿入部やトンネル感染のない長期留置型カテーテルを温存する目的に適応となります。ロック療法単独での治療は推奨されず、必ず全身抗菌薬投与と組み合わせて7〜14日間行います。バンコマイシンを用いる場合、最低でもMICの1000倍(例: 5mg/mL)の濃度とし、一般的に再注入までの時間は48時間を超えないようにします。
5. 複雑性感染症・治療抵抗例への対応
適切な抗菌薬投与とカテーテル抜去を行っても、72時間以上菌血症や発熱が遷延する患者では、感染性心内膜炎や化膿性血栓性静脈炎などを疑う必要があります。これらの合併症が判明した場合、少なくとも4〜6週間(成人の骨髄炎では6〜8週間)の治療が必要です。なお、CRBSI患者に対するウロキナーゼ等の静注血栓溶解薬の補助療法は推奨されていません。
カテーテル抜去後、具体的に何日経過したら新しいカテーテルを挿入してよいか
明確な日数の基準は定められていません。
その代わり、新しいカテーテルを安全に再留置するための指標として、「追加で採取した血液培養が陰性化したことを確認した後」に行うことが推奨されています。
ガイドラインには、以下のケースにおいて具体的な記載があります。
- 黄色ブドウ球菌によるCRBSIの場合: カテーテルを抜去した後、追加で採取した血液培養が「陰性」であることを確認できれば、新しいカテーテルの留置を行うことが可能です。
- 透析用カテーテルの場合: CRBSIによって透析カテーテルを抜去した場合も同様に、血液培養が「陰性化」すれば、長期留置型透析カテーテルを新たに留置することができます。
つまり、カレンダー上の「日数」で判断するのではなく、抜去後に抗菌薬治療を行いながら血液培養を再検し、培養陰性という「客観的な証拠」が得られたタイミングが、別の部位へ新しいカテーテルを安全に挿入できる目安となります。
カテーテル抜去後「すぐに次のルートが必要な状況」に対して、どうする?
別の部位への「一時的なカテーテル」の挿入
長期留置型のカテーテル(透析用カテーテルなど)を感染によって抜去した場合、血液培養が陰性化して「新しい長期留置型カテーテル」を安全に入れ直せるまでの間の「つなぎ」として、別の部位に一時的なカテーテル(非トンネル型の短期留置型カテーテル)を挿入してルートを確保することが推奨されています。
他の部位にルートが全く確保できない場合の「ガイドワイヤー交換」(最終手段)
患者さんの状態によっては、血管が細かったり使い果たされていたりして「他の部位からのカテーテル留置が不可能」な場合や、「出血の危険性が高い」場合など、どうしても別の場所にルートを確保できないことがあります。 そのような場合の例外的な最終手段として、今入っている感染カテーテルを抜く際にガイドワイヤーを残し、同じ場所を使って新しいカテーテルに入れ替えることが考慮されます。
■ガイドワイヤー交換時の工夫
ただし、同じ場所に入れ替えることは新しいカテーテルへの細菌汚染リスクが高いため、このような状況でカテーテルを交換する際には、少しでも再感染を防ぐために「管腔内が抗菌処理された抗菌薬含浸カテーテル」の使用を考慮するよう推奨されています。
(抗菌薬や消毒薬がコーティング(含浸)されたカテーテルの具体的な種類として、クロルヘキシジン および 銀サルファジアジン、ミノサイクリン および リファンピンがあるようですが、管理人は行ったことはありません。。。)
まとめると、基本は「別の場所に一時的なルートを作る」ことで対応し、それが物理的に不可能な場合に限って「抗菌カテーテル等を用いて同じ場所でガイドワイヤー交換をしてしのぐ」というのが、ガイドラインにおけるルート確保の考え方となります。
参考文献
- 血管内カテーテル関連感染症の診断と治療に関する実践的臨床ガイドライン : 米国感染症学会による 2009年改訂版


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